非軸対称形状のスピニング加工

 スピニング加工では,成形型と素材を回転させながら成形加工を行うため,一般には回転軸に直交する断面が円形の,軸対称形状しか成形できない.一方,スピニング加工で作られているタンク底板やホッパー,自動車排気管,照明器具などについて,楕円形,多角形,偏心など非軸対称形状品のニーズも多い.これらが成形できるようになれば,スピニング加工の用途はさらに広がるだろう.

 これまでに偏心・傾斜軸形状,楕円断面などの製品の成形方法が考案されているが,それぞれ特殊なメカニズムをもつ専用の加工装置を必要とする.また製品の表面に凹凸の模様を付ける程度であれば,人力のへら絞りでも可能だが,断面が円形から大きく外れた形状は,やはりなかなか難しいようである.

 力制御によるスピニング加工を応用して非軸対称製品の成形を試みた.非軸対称形状の成形型を用い,ローラの押し付け力を制御して,素材を適切な力で型に押し付ける.成形型の形状に倣ってローラを前後に動かすことにより,素材を型に密着させ,目標とする非軸対称形状の製品を成形する.

 本手法によれば,特殊な専用メカニズムを用いなくても非軸対称形状の成形を行うことができ,成形型の交換のみで様々な形状に対応可能である.また実物の成形型を形状の基準としているため,膨大な3次元形状データを制御に使うことなく,成形が可能であるという利点がある.

 2種類の非軸対称形状の成形型を用意して,成形実験を行った.成形型1は半角45°の円錐台の側面4カ所をワイヤ放電加工により切断し,平面としたものである.また成形型2は半角30°の円錐を10°傾けて頂部と底部を切断した形で,傾斜軸かつ偏心である.上図に成形型1を用いた加工の様子を示す.また下図に成形型と成形された製品の写真を示す.どちらの成形型についても,成形品は型に密着して良好な精度で成形することができた.

加工実験ビデオ:  成形型1(2.61MB)  成形型2(4.17MB)

技術資料

◎当方では,本加工法の潜在的ニーズを掘り起こし,加工法をさらに改善して装置を実用化するために,実際の非軸対称形状部品のテスト成形を行っております.「こういう部品をスピニング加工で作ってみたい」というご要望がございましたら,ご遠慮なくお知らせ下さい.


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