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6.6 HRPスーパーコクピット

Hondaによる世界初の実用的二足歩行ロボット P2の発表に大きな衝撃を受けた官庁、大学や国立研究機関の研究者が、人間 型ロボット(Humanoid)の実用化を目指す国家プロジェクト・HRP(Humanoid Robotics Project)を1998年に立ち上げた。 P3をベースとする人間型ロボットを標準として、 自律機能並びに操縦技術の高度化を目指すプロジェクトである [30]。 図10に東京大学、松下電工(株)、川崎重工(株)の開発したコクピットの操縦の様子を 示す [79][28]。

\includegraphics*[height=4.5cm]{hrpc.eps}
図10: HRPスーパーコクピット

この操縦システムの大きな特徴は、(1)没入型立体ディスプレイ、(2)本格的な 力フィードバック可能なマスターアーム、(3)浮動椅子、(4)音声入力や3次元 マウスによる下半身への運動指示等である。 脚部へのマスター装置は無く、「勇者ライディーン」方式で操縦されるのであるが、 ほとんど前述のガンバスターのコクピットであり、そのイメージの 類似性には笑みを漏らさずを得ない。 無茶な開発スケジュールのために、かなりの問題点は残っているらしいが、 一見し て「燃える」装置に仕上がっている。

[*]4.3 ディスプレイで述べたように、 没入型ディスプレイの問題点の一つは、操縦者の身体やマスター装置によって、 映像が隠れてしまい、ロボットによる作業が困難になってしまうことである。 HRPスーパーコクピットでは、近接して作業を行う場合の ためのHMDを併用している。スクリーンの跳ね上げ機構を持つHMDにより、没入型ディ スプレイとHMDの切り替えは容易に行うことが可能である。

[*]4.4 下半身への運動指令の生成法 で述べたように、下半身への運動指令の生成にはかなりの困難がある。HRPスーパーコクピットでは、「移動と作業時にバランス を取ることはロボットに任せる。」という方策を採用している。 すなわち、 操縦者は、ロボットの下半身の状態を反映するように動く浮 動椅子に座っており、ロボットの下半身の状況に応じて、 適切な上半身運動を生成し、作業を達成する。 操縦者は乗馬して作業を行っているような状態にある。 デモンストレーションでは、ぬいぐるみの箱からの持ち出しや フォークリフト操作等に成功しているが、 どれくらい多様な作業が可能かどうかの検証は今後の課題である。

現時点における本コクピットの問題点として、力フィードバックを組 み込んだ作業シミュレータを備えていないため、 コクピットを動作させるためには、スレーブ・ロボットを動かすための大人数のスタッフと時間が必要なことがあげられる。早急なシミュレータの開発が望まれる。

Eimei Oyama 2001-11-10