Yuya SATO Microbial Ecology

産総研国立研究開発法人 産業技術総合研究所
環境創生研究部門 環境機能活用研究グループ

Aboutわたしの研究について

多様な微生物が作る
複雑なコミュニティとその影響力

自分だけでは進めることができない反応も、他の微生物と協力すると進む

地球上のあらゆる環境には微生物が棲んでいて、数千種以上が混在する複雑な微生物コミュニティを作っています。そして、そのコミュニティにいる微生物の種類や働きは、その自然環境の性質に大きな影響を与えます。例えばある環境では植物がよく育ち、ある環境では汚染物質が速やかに分解されます。こういった微生物コミュニティの能力を理解してコントロールすること、そしてそれを社会に役立てることを大きな目標にしています。

しかし、数千種以上で構成された複雑な微生物コミュニティを理解することはとても難しいです。例えば廃水処理も微生物が担っていますが、同じ条件で処理をしていても、急に性能が下がったり、逆に上がったりすることがあります。見た目では何が起きているかはわからないので、わたしたちは、メタゲノム解析やメタトランスクリプトーム解析と呼ばれる手法を用い、そこにどのような微生物がどれだけいて何をしているかを一網打尽に調べています。その結果として、鍵となる微生物や重要な反応を見つけて、環境浄化の性能向上に役立てています。

個人的には特に、微生物同士、もしくは微生物と他の動植物の関係に強い興味を持っています。微生物は自分だけでは進めることができない反応も、他の微生物と協力することで進行させることがあり、その協力関係が環境浄化の鍵になっていることもあります。また、例えば昆虫に共生する微生物が、昆虫と協力しながら農薬を分解することなども見つけました。このような、生き物同士の思わぬ協力関係にご興味のある方がいらっしゃれば、研究でご一緒できたら嬉しいです。

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Research研究紹介

  1. 微生物のちからで廃棄物を有価物に 微生物のちからで廃棄物を有価物に 微生物は100年以上廃水処理に使われてきました。廃水処理の方法も様々に進化して、現在では廃水からエネルギーを作ったり、有用物質に変換する微生物技術があります。しかしその装置には数千種以上の微生物が混在していて、誰が何をしているのかわかりません。私たちはその中から、システムの性能を左右するさまざまな鍵微生物たちを見つけています。
    Key publication
    Sato et al., Water Res, 2021
    Sato et al., J Hazar Mater, 2022
    プレス発表
    2021年3月30日
    2021年9月9日
    2021年10月19日
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  2. 種間相互作用と生態系 種間相互作用と生態系 自然環境には数千種の微生物が混在して「微生物コミュニティ」を作っています。例えば落ち葉や虫の死骸も、環境汚染の原因となる化学物質も、コミュニティの微生物たちが手分けして分解してくれています。このような微生物同士のやりとりや関わり合いを種間相互作用といい、それによって微生物コミュニティや周囲の生態系は大きな影響を受けます。
    ときに微生物は、他の微生物と協力することで、自分だけでは不可能な化学反応を進めることもあり、そのような興味深い関係を見つけるのは研究の楽しさでもあります。
    Key publication
    Sato et al., Commun Biol, 2019
    プレス発表
    2019年5月13日
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  3. 微生物と動植物 微生物と動植物 我々人間を含む動植物の体内にもたくさんの微生物が棲んでいます。近年はヒト腸内細菌などが有名ですが、微生物はすみかとする動植物に対して栄養を供給するなど、健康によい働きをしてくれるものも多くいます。一方で、病気を引き起こす微生物もいます。私たちは、特に昆虫や植物を対象に、そこに棲む微生物がどのような働きをして、動植物にどのような影響を与えているのかを調べています。これまでに、昆虫と共生細菌が協力して農薬を分解するというおもしろい現象などを見出しています。
    Key publication
    Sato et al., Nat Commun, 2021
    プレス発表
    2021年11月10日
    詳しく見る