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【 粒子製造プロセスの構造制御性の現状; ナノから100ミクロンまで。気相や液相法について。無機材料から有機材料(高分子や製剤)まで 】

『ご質問』 無機材料の分野で,気相法や液相法ベースで粒子を製造するプロセスでの構造制御性っていうのは, どないな現状なんでしょうか? 有機材料,特に高分子ではナノから数ミクロンレベ ルの範囲でかなり広範囲に構造制御ができるのは知ってるのですが,無機材料ではど うなんでしょうか?

1.現状

  1. 材質に関わらず、方法論は同じであると考えてよく、 サイズで分けて言うならば、個々の領域で得意なことを、 ケースバイケースで個別対応している状況なのは何も変わっていない?
  2. (フィンランドで有機材料、特に高分子や製剤に関わってきた経験から) 逆ミセル法のナノスフィア(数〜10数nm)、 長臨界や噴霧乾燥法のドライパウダー吸入薬(サブ〜10数ミクロン)、 ワースター法など流動層の徐放性カプセル(ミクロン〜100ミクロン)、 などを勉強させて頂き、ネタは無いかと飢えたハイエナのように 重箱の隅を突付いた小人の印象です。

2.無機材料の例

セラミックス領域で比較例を挙げてみます; 

  1. 【数〜10数nm】 逆ミセル法の白眉はカーボンナノチューブでしょう。 Moなどの触媒を、できればオングストロームまで微細化するのが、 単一壁を得るポイントで、 (SWCNT;SingleWallCarbonNanotubuってヤツです) ヘキサンなどの可燃性液体中に逆ミセルで微細分散させたナノ粒子を 高温場へ超高速に噴霧するのがトピックになってます。 この方法の有名人は、Rice大のSmalley教授です;http://www.ruf.rice.edu/~smalleyg/ 参考文献(弊所では企業から大量生産化で受託中です); http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_07/vol01_7_p17.pdf
  2. 【サブ〜10数ミクロン】 所謂Aerosol Decomposition法(超臨界/噴霧乾燥/噴霧熱分解)の話題は 表面小突起の形成(微視的表面粗さの制御)や、 内部多孔(中空)化でしょうか。 液相法のセンスで、アルコキシド法等で溶液中で構造形成をさせ、 溶媒の蒸発と液滴中の析出現象の制御で可能性を拓いたものとして注目します。日本ではシリカの標準粒子化を志向した奥山先生(広島大学)の最近のナノプロジェクトの一連の成果が興味深いと思います。高尾は中空粒子の半導体材料の低誘電率化への応用を検討しています。 フィンランド滞在中、スウェーデン表面化学研究所の 材料/コーティング部門Prof.Lennart Bergstroemを訪問・講演しました。 Dr.Peter Alberiusを中心に「液滴中の析出現象(上記)」を利用した メソポーラスシリカの製造と、半導体材料の低誘電率化を検討中である ことを知り、国を超えた着眼点の一致を喜ぶとともに、協力か、競争を 強く意識しました。「理想とするモデルフィラー」の実現、 向こうが先か、それとも...。http://www.surfchem.kth.se
  3. 【サブミクロン〜100ミクロン】 これは高尾の現テーマである「球状化プロセス」で述べたいと思います。 粒子の製造と評価のプロセス技術の歴史的な開発の流れの中で、 粒子球状化プロセスを考察すると、大きく3つの変換点があったのではと思います(下記)。液体状〜高温状態下の不定形状態を、急激に気体中に置くことで、 球形化させ、そのまま冷却して球状にするというシンプルなものです。 参考文献;粉体工業技術協会、造粒ハンドブック、オーム社(H3)、および「粒子球状化プロセスのご紹介」。
    1. アトマイズ法(金属主体。水、ガス、プラズマアトマイズ。)
    2. 火炎溶融法(化学炎法も含む。酸化物。特に球状シリカフィラ―のデフォルトプロセス。)
    3. 非酸化物(窒化物など);検討中。

3.無機材料と有機材料との比較

次のような見方があるようです;

  1. 無機材料系の粒子設計プロセスは,有機材料に比べると,設計の自由度が高い
  2. 系に投入できるエネルギーがケタ違いに大きい。例えば,医薬品で火炎溶融法を適用したら,ススになるか跡形も無くなるか。従って, 加工プロセスは必然的にエネルギー的にはマイルドな条件で実施可能なものにならざるを得ない
  3. 医薬品に限ると,生理活性成分の機能を絶対に損なわずに粒子加工プロセスを構築しなければならない。自ずと使える添加剤や製造プロセスが限定されてしまう(特に,最近は,ペプチドやたんぱく質,遺伝子などデリケートな物性を持つものが増え,殊更この辺りが障壁になってくる)
  4. 医薬品含有粒子はシングルナノにはできない(上述たんぱくなどの高分子性医薬品は、それ自体がシングルナノのサイズを有しているので)。医薬品製剤で小さいものといえば,ミセル(反応場として利用するのではなく,それ自体を)をキャリアーに利用したものぐらいか。最近は高分子ミセル(50nmくらい)をDrug carrierとして利用している研究も増えている

門外漢で、たかが1年弱ていど薬剤研究にかかわったくらいで、専門家になにも言えるはずがないのです。それを限った上で(またこんなことは言わずとも先刻ご承知とわかった上で)、独自の視点提供が貴重という立場で、2.にだけ、プロセス屋の看板をしょって敢えて反論を試みてみましょうか...; 

すなわち(少なくとも)粒子モルフォロジーの製造(制御)技術と評価技術の現状(および必要条件)と、 次の課題(案)ならびに、未来の目標と得られる成果予想に限れば、条件はそんなに変わらないんじゃないかなぁ、というのが高尾の言いたいことです。ケースバイケースの設計が重要となるのは同じで(きれいごと、に聞こえるでしょうか...)。

温度に限れば、なるほど無機材料は上は1万度(熱プラズマ)から、下は零下(超臨界)まで、幅広く、有機材料は(下限はいざ知らず)上限がせいぜい100〜200度と限定されるので、その点はご指摘どおりです。

でも(言うまでもなく)それは材質と、目標とする材料特性(例えば粒子モルフォロジー特性)とのトレードオフであり、無機材料もそれで選んでいるのは同じですよね。例えばシリカには種々の結晶構造(多形)がありますが、常温大気圧下は低温型石英が安定で、高温域でトリディマイトとクリストバライトが安定相で生成し、高圧域でコーサイト、スティショバイトが生成するが、天然では微量で、工業的には前記3多形が重要です。そして(たぶん)“たまたま”融点が、火炎の1000(完全燃焼域)〜2000度(内炎=還元燃焼炎と中性炎の狭間)だったことと、連続生産性に着目して、火炎溶融プロセスが採用されているのだろうと思います。純粋にプロセス的には1万度(熱プラズマ)が可能なのですが、「粉に限れば、それで何を作ればよいのか」回答が(現時点では)不十分だから、この温度(プロセス)は溶射法としての位置付けがなされているのだろうな、と思われます(この点については、若干アイデアを持っていますが)。

また温度(プロセス)が限定されるからこそ「洗練」される側面もあるのでしょうね。例えばインシュリン世界一のイーラルリリー社がリサーチベンチャーに1億ドル/年しはらった中空粒子製法です。エアロゾルデコンポジッション法(または噴霧乾燥法)の乾燥-析出-結晶化過程の「精密」制御で、殻を破らずにうまく多孔化しました。言うまでも無く発生させた液滴にも粒子径分布があり、溶媒量に違いがあって、外熱方式では均一な乾燥-析出-結晶化過程の制御がさぞ難しかったことだろうに、です。

熱伝導の視点からは、シリカは(結晶性シリカでも)数Wm-1K-1で、セラミックスの中でも低い部類に入ります。だからこの材料は、むしろ「粒子モルフォロジー特性の精密性」の高さや、製法や製品の豊富さを生かした幾何学的アプローチを優先した選択と位置付けられると思います。単に熱伝導の視点からは、窒化アルミニウムや炭化ケイ素などの高熱伝導性材料が望ましいが、非酸化物材料は非球状粒子である場合が多く、(特に、フィラーとして多く求められる平均粒子径が数〜数10ミクロンレベルで)粒子モルフォロジー特性が低かった。アルミナや酸化亜鉛などは、そのトレードオフの選択と位置付けることが可能ではないでしょうか。...そして、有機材料は、いわば窒化アルミニウムや炭化ケイ素に相当するのではないかと。

材質が限定されるが故の、あっと驚く特異点というのもあるような気がします。シリカフィラーのような。高尾が今めざしている窒化アルミニウムのような。むしろ、それをみつけるという、「きれいごとのパワー」を推奨する見方をめざしたい、そう考える高尾です。

4.高尾のアプローチ

不遜を懼れず仮に、上記2.無機材料の1.【数〜10数nm】と2.【サブ〜10数ミクロン】を若者の手業(てわざ)と言うとすると、 3.【サブミクロン〜100ミクロン】はお爺さんの知恵と言いますか、制御とコスト(生産性)のバランス、 「新技術」は簡単なら「ま、使ってみよか」と思って貰える ということを追求した、洗練された詫び寂びの境地を感じます。

自分が「門前小僧の小手先の手業」状態だから余計に惹かれるのかもしれませんが、http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_11/vol01_11_p28_29.pdf という制御(手業)を追及した仕事で文科省の注目発明を頂いたのですが 、コスト(生産性)を度外視したため、今のところ使ってはもらえていない。 これは、けっこうさみしい。 半導体分野で「ハロゲン」「Na」と言った瞬間に、 一気に「引かれる」ことと同じ印象をうけます。

科学も大事です。技術の可能性追求も。何が欲しいかなんでしょうが、 高尾は、理念も大事にしつつも実行と言いますか(動きつつ考え、途中でも発表する)、己の置かれた状況(産総研)や、めぐり合えたヒトとリンクしながら、 マシなものをめざしたいと思います。

具体的には、 

  1. 【粒子球状化プロセス】連続式(非バッチ式)製法による球状粒子の新製法を開発し、製造過程の解明とともに、フィラー等への応用を検討する。
  2. 【モルフォロジー評価】粒子の形とサイズの新指標を提案し、新評価法を開発して、粒子径分布をより詳細に抽出し、フィラーの詰め方のソフトウェア化などを図る。

<作戦>この2つを独自の着眼点として、広範な粒子に関する製法や評価法の中でも、特に『モルフォロジー(特に球形)の制御と評価』の新技術を獲得することをめざします。次に、これを道具として用いて機能性材料で「代名詞」となるものを獲得する。膨大な種類が存在する「粉体特性が強く反映する材料系(粒子系材料)」の中でも特に、第1に半導体封止材料の誘電率と放熱性、第2に熱伝導性フィラー、第3に耐熱・耐食性材料と光学系材料(その他、吸入製剤など)に貢献する『アイデアと成果の提供』をめざしています。

調査は、特許庁(米国・欧州含む)の検索、TACCのInspec、JICSTやSTN、J.Am.Ceram.Soc.検索Siteで、「酸窒化アルミ」「粉」「フィラー」「シリカ」「封止材」「噴霧」「アルミニウム」「火炎」等など...(及び各々の英語単語)のワードで行いました。
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