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『ご質問』 無機材料の分野で,気相法や液相法ベースで粒子を製造するプロセスでの構造制御性っていうのは, どないな現状なんでしょうか? 有機材料,特に高分子ではナノから数ミクロンレベ ルの範囲でかなり広範囲に構造制御ができるのは知ってるのですが,無機材料ではど うなんでしょうか?
セラミックス領域で比較例を挙げてみます;
次のような見方があるようです;
門外漢で、たかが1年弱ていど薬剤研究にかかわったくらいで、専門家になにも言えるはずがないのです。それを限った上で(またこんなことは言わずとも先刻ご承知とわかった上で)、独自の視点提供が貴重という立場で、2.にだけ、プロセス屋の看板をしょって敢えて反論を試みてみましょうか...;
すなわち(少なくとも)粒子モルフォロジーの製造(制御)技術と評価技術の現状(および必要条件)と、 次の課題(案)ならびに、未来の目標と得られる成果予想に限れば、条件はそんなに変わらないんじゃないかなぁ、というのが高尾の言いたいことです。ケースバイケースの設計が重要となるのは同じで(きれいごと、に聞こえるでしょうか...)。
温度に限れば、なるほど無機材料は上は1万度(熱プラズマ)から、下は零下(超臨界)まで、幅広く、有機材料は(下限はいざ知らず)上限がせいぜい100〜200度と限定されるので、その点はご指摘どおりです。
でも(言うまでもなく)それは材質と、目標とする材料特性(例えば粒子モルフォロジー特性)とのトレードオフであり、無機材料もそれで選んでいるのは同じですよね。例えばシリカには種々の結晶構造(多形)がありますが、常温大気圧下は低温型石英が安定で、高温域でトリディマイトとクリストバライトが安定相で生成し、高圧域でコーサイト、スティショバイトが生成するが、天然では微量で、工業的には前記3多形が重要です。そして(たぶん)“たまたま”融点が、火炎の1000(完全燃焼域)〜2000度(内炎=還元燃焼炎と中性炎の狭間)だったことと、連続生産性に着目して、火炎溶融プロセスが採用されているのだろうと思います。純粋にプロセス的には1万度(熱プラズマ)が可能なのですが、「粉に限れば、それで何を作ればよいのか」回答が(現時点では)不十分だから、この温度(プロセス)は溶射法としての位置付けがなされているのだろうな、と思われます(この点については、若干アイデアを持っていますが)。
また温度(プロセス)が限定されるからこそ「洗練」される側面もあるのでしょうね。例えばインシュリン世界一のイーラルリリー社がリサーチベンチャーに1億ドル/年しはらった中空粒子製法です。エアロゾルデコンポジッション法(または噴霧乾燥法)の乾燥-析出-結晶化過程の「精密」制御で、殻を破らずにうまく多孔化しました。言うまでも無く発生させた液滴にも粒子径分布があり、溶媒量に違いがあって、外熱方式では均一な乾燥-析出-結晶化過程の制御がさぞ難しかったことだろうに、です。
熱伝導の視点からは、シリカは(結晶性シリカでも)数Wm-1K-1で、セラミックスの中でも低い部類に入ります。だからこの材料は、むしろ「粒子モルフォロジー特性の精密性」の高さや、製法や製品の豊富さを生かした幾何学的アプローチを優先した選択と位置付けられると思います。単に熱伝導の視点からは、窒化アルミニウムや炭化ケイ素などの高熱伝導性材料が望ましいが、非酸化物材料は非球状粒子である場合が多く、(特に、フィラーとして多く求められる平均粒子径が数〜数10ミクロンレベルで)粒子モルフォロジー特性が低かった。アルミナや酸化亜鉛などは、そのトレードオフの選択と位置付けることが可能ではないでしょうか。...そして、有機材料は、いわば窒化アルミニウムや炭化ケイ素に相当するのではないかと。
材質が限定されるが故の、あっと驚く特異点というのもあるような気がします。シリカフィラーのような。高尾が今めざしている、窒化アルミニウムのような。むしろ、それをみつけるという、「きれいごとのパワー」を推奨する見方をめざしたい、そう考える高尾です。
不遜を懼れず仮に、上記2.無機材料の1.【数〜10数nm】と2.【サブ〜10数ミクロン】を若者の手業(てわざ)と言うとすると、 3.【サブミクロン〜100ミクロン】はお爺さんの知恵と言いますか、制御とコスト(生産性)のバランス、 「新技術」は簡単なら「ま、使ってみよか」と思って貰える ということを追求した、洗練された詫び寂びの境地を感じます。
自分が「門前小僧の小手先の手業」状態だから余計に惹かれるのかもしれませんが、http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_11/vol01_11_p28_29.pdf という制御(手業)を追及した仕事で文科省の注目発明を頂いたのですが 、コスト(生産性)を度外視したため、今のところ使ってはもらえていない。 これは、けっこうさみしい。 半導体分野で「ハロゲン」「Na」と言った瞬間に、 一気に「引かれる」ことと同じ印象をうけます。
科学も大事です。技術の可能性追求も。何が欲しいかなんでしょうが、 高尾は、理念も大事にしつつも実行と言いますか(動きつつ考え、途中でも発表する)、己の置かれた状況(産総研)や、めぐり合えたヒトとリンクしながら、 マシなものをめざしたいと思います。
具体的には、
<作戦>この2つを独自の着眼点として、広範な粒子に関する製法や評価法の中でも、特に『モルフォロジー(特に球形)の制御と評価』の新技術を獲得することをめざします。次に、これを道具として用いて機能性材料で「代名詞」となるものを獲得する。膨大な種類が存在する「粉体特性が強く反映する材料系(粒子系材料)」の中でも特に、第1に半導体封止材料の誘電率と放熱性、第2に熱伝導性フィラー、第3に耐熱・耐食性材料と光学系材料(その他、吸入製剤など)に貢献する『アイデアと成果の提供』をめざしています。