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利尻火山 Rishiri Volcano

利尻火山の噴出中心と噴出率

利尻火山には多数の噴出中心が認められます(図1).これら噴出中心は,火口地形を保存する末期以外は,火山体の復元や噴出物の分布を元に推定しています.図1に示すように噴出中心は,山頂を中心に北西-南東の方向に卓越しています.これら卓越方向は火山体内部に露出する岩脈の卓越方向(図2)と調和的です.つまり利尻火山の場合,マグマは北西ー南東方向に通路をつくり易かったと考えることができるでしょう.



図1 利尻火山の噴出中心の位置


図2 利尻火山の岩脈の分布(Ishizuka, 2000)

 利尻火山では時間と共に噴出中心距離が変化します(図1).すなわち初期では,少なくとも9つの噴出中心はその間17kmの距離をもちます.最盛期になって噴出中心間の距離は狭くなり(6km以下),この時期は中心噴火が卓越します.末期活動では,再び複数の噴出中心が活動し,その噴出中心間の距離は15kmと拡大します.


図2 利尻火山の噴出量の時間変化 (石塚・中川, 1999)

 図2は利尻火山の積算噴出量の時間変化を表しています.利尻火山の場合,浸食によって観察できる部分は,総噴出量の約4分の3です.残りの4分の1(約10km3)は埋没され観察することができません.しかし山麓の溶岩ドーム(0.13 Ma)や,北海道北部まで飛来したテフラの年代(Kc-Hb,クッシャロ羽幌テフラ,100-130ka)を考えると,少なくとも13万年前には活動を開始していたと考えられます.それぞれの活動期で年代値の誤差を考慮して噴出率を見積もると,初期が0.1km3/ky以上,最盛期になって噴出率は増加し0.4km3/ky以上,そして末期になって再び0.09km3/kyと減少しています.


図3 利尻火山の噴出中心間の距離と噴出率の関係

 利尻火山では噴出率と噴出中心間の距離に相関があるようです(図3).すなわち,利尻火山の場合,噴出率が低い時期(初期と末期)は,噴出中心間の距離が広く,噴出率が高い最盛期に,噴出中心間の距離が狭くなっています.この原因として,噴出率が低い場合には,広域応力場で生ずる割れ目(利尻火山の場合北西-南東方向)を使ってマグマは受動的に上昇経路をつくらなければならないのに対して,噴出率が高い場合,能動的にマグマの通路をつくることができると解釈できるでしょう.