脳を理解し BESOM モデルを拡張するために必要な知識の 良質な情報源を、独断で選んで紹介します。 ( 2014-06-04 更新)
(2013-02-07: 内容が一部古くなっています。 また、少し敷居を上げ過ぎた感があるので、もう少し絞り込んで整理し直したいと思っています。)
★★★・・・ 必読。脳を理解しようとする人は必ず目を通すべきだと思います。
★・・・ おすすめ。大変役に立ちます。
* こちらもご覧ください。
「脳を理解するための情報源メモ」更新予定メモ
パターン認識、 自己組織化マップ、 ベイジアンネット、 独立成分分析、 主成分分析、 強化学習、 特徴選択、 正則化、 フレーム、 Deep Learning
甘利 俊一 (編集), 外山 敬介 (編集)
出版社: 朝倉書店 (2000/04)
ISBN-13: 978-4254101560
すばらしいです。神経科学から機械学習まで幅広い分野を網羅していて、 たいていのことが載っています。 日本中の神経科学者・情報処理技術研究者がこの事典の全ページに目を通せば、 脳の機能はすぐにでも解明されることでしょう。
「脳と計算論」「脳の高次機能」「脳とニューラルネット」「脳の計算機構」 「脳の情報表現」「脳と意識」
森山和道氏による、神経科学、認知科学、ロボットなどを含む分野の国内有名研究者へのインタビュー。
「脳にしかできない」と一般に思われている概念獲得、直感的判断、合目的的行動 といった機能は、 実は機械学習分野における要素技術としてすでに実現されています。 そして、それらを実際に脳が行っていると思われる証拠が見つかってきています。 脳はこれらの要素技術を適切に組み合わせた情報処理装置であると私は考えています。
Christopher M. Bishop著“Pattern Recognition and Machine Learning”の日本語版「パターン認識と機械学習 - ベイズ理論による統計的予測」のサポートページ。 通称「PRML」または「ビショップ本」。必携。
・ パターン認識と機械学習 上 - ベイズ理論による統計的予測
C. M. ビショップ (著), 元田 浩 (翻訳), 栗田 多喜夫 (翻訳), 樋口 知之 (翻訳), 松本 裕治 (翻訳), 村田 昇 (翻訳)
出版社: シュプリンガー・ジャパン株式会社 (2007/12/10)
ISBN-13: 978-4431100133
・ パターン認識と機械学習 下 - ベイズ理論による統計的予測
C. M. ビショップ (著), 元田 浩 (翻訳), 栗田 多喜夫 (翻訳), 樋口 知之 (翻訳), 松本 裕治 (翻訳), 村田 昇 (翻訳)
出版社: シュプリンガー・ジャパン株式会社 (2008/7/11)
ISBN-13: 978-4431100317
この本は難しいけど、少なくとも第1章だけは早いうちに読んでおくべきです。 重要な概念が一通り載っています。 本の説明だけで用語のイメージがわかない場合は、根気強くネットで検索して、いろいろな解説や具体例を読むようにすると よいと思います。
他に脳と関係が深いのは第5章(ニューラルネット)、第8章(ベイジアンネット)、第9章(EMアルゴリズム)、 第11章(ギブスサンプリング)、第13章(HMM)あたり。
機械学習に関連したエントリが毎日追加されているので、毎日チェックすれば 少しづつ機械学習に詳しくなれるかもしれません。 研究者、 書籍、 アルゴリズム などのページも必見。
S.J.Russell (著), P.Norvig (著), 古川康一 (翻訳)
出版社: 共立出版; 第2版 (2008/7/10)
ISBN-13: 978-4320122154
人工知能の大変詳しい教科書。 ベイジアンネットも載っています。
人工知能学会 (著)
出版社: 共立出版 (2005/12)
ISBN-13: 978-4320121072
土屋 俊 (編集), 中島 秀之 (編集), 中川 裕志 (編集), 橋田 浩一 (編集), 松原 仁 (編集), 大澤 幸生 (編集), 高間 康史 (編集)
出版社: 共立出版; 第2版 (2003/3/18)
ISBN-13: 978-4320120631
事典というよりエッセイ集ですが、それはそれで面白いです。
古川先生の人工知能関連の講義資料。
石井 健一郎 (著), 前田 英作 (著), 上田 修功 (著), 村瀬 洋 (著)
出版社: オーム社 ; ISBN: 4274131491 ; (1998/08)
非常に一般性の高い枠組みのもとで、実用的なパターン認識技術の根本原理を 解説する、けっこう読み応えのある本です。 「パターン認識は純粋な工学的技術であって脳の情報処理とは無関係ではないか」と 思いつつこの本を読み始めましたが、大きな間違いでした。 本書で定式化されている問題から根本的にはずれたパターン認識手法は、 想像することすら難しいです。
例えば「損失関数」が陰にせよ陽にせよ与えられないパターン認識装置など、 あり得ようはずがありません。 脳の場合、TE野と大脳基底核のループによる強化学習によって 損失関数を学習しているのではないか、と思います。
SOMは、脳の機能の1つである概念獲得を行うことができる、 教師なし学習アルゴリズムです。 SOMが自己組織化するものと似たコラム構造と呼ばれる構造が、 大脳皮質の複数の場所から見つかっています。
T. コホネン (著), Teuvo Kohonen (原著), 徳高 平蔵 (著), 堀尾 恵一 (著), 大北 正昭 (著), 大薮 又茂 (著), 藤村 喜久郎 (著)
出版社: シュプリンガーフェアラーク東京; 改訂版 (2005/06)
ISBN-13: 978-4431711544
SOMの提唱者コホネンによる本。
p.128 の図はユークリッド座標から関節座標への変換テーブルを教師なしで 学習する一次運動野のモデルと解釈できて、興味深いです。 (本文にはそう書いてないですが。)
p.189 には、大脳皮質において、ある種の化学物質の拡散によって 近傍学習が実現されているかもしれないというアイデアが述べられています。 (物質の候補として NO が挙げられていますが、アセチルコリンも あり得ると思います。)
ベイジアンネットは、脳の機能の1つである直感や連想記憶と 似た働きをします。 ベイジアンネットを使うと、 外界の状態の一部に関する曖昧な情報が与えられたとき、 過去の経験に基づいて、外界の観測されていない状態について推定することができます。 大脳皮質には領野間に双方向の結合があり、 ベイジアンネットと構造がとてもよく似ています。
日本語の文献では、 ビショップ本(下)第8章「グラフィカルモデル」に、 ベイジアンネットの定義などがしっかり書かれています。
状態の推定を効率的に行う方法の1つに 確率伝播アルゴリズム(信念伝搬アルゴリズム, Belief propagation algorithm)が あります。 確率伝播アルゴリズムは、「人工知能学事典」 p.738 などに載っています。
脳とベイジアンネットに関する情報をまとめたページを作りました。 下記の説明資料などが置いてあります。
「脳とベイジアンネットFAQ」 「ベイジアンネットとは」 「確率伝播アルゴリズムとは」 「belief revision アルゴリズムとは」
ベイジアンネットの大変分かりやすい解説。
Judea Pearl (著) 出版社: Morgan Kaufmann Pub ; ISBN: 1558604790 ; (1997/05/31)
ベイジアンネットの教科書。
英語ですが分かりやすく重要事項を広くカバーする解説。
英語ですが重要事項を広くカバーするスライド。
David Heckerman March 1995
ベイジアンネットの学習のチュートリアル。パラメタ学習、構造学習など。 基本事項が詳しく書いてあって、一度は読んでおくとよさそう。
ICAは、脳と同じように、感覚器の入力信号だけから 外の世界が持っている構造を教師なしで構築する働きをします。 脳の一次視覚野がICAを行っているらしい証拠が見つかっています。
アーポ ビバリネン (著), エルキ オヤ (著), ユハ カルーネン (著), Aapo Hyv¨arinen (原著), Erkki Oja (原著), Juha Karhunen (原著), 根本 幾 (翻訳), 川勝 真喜 (翻訳)
出版社: 東京電機大学出版局 (2005/02)
ISBN-13: 978-4501538606
すばらしく分かりやすく整理された教科書です。 数式を飛ばして読んでも、ICAの様々な側面が深く理解できます。
p.431 にはICAとスパース符号化 (スパースコーディング、Sparse coding)の関係が述べられています。
大脳皮質の情報表現がPCAで次元圧縮したものと近いことを示す 文献等が紹介されています。 (PCAではなくICAで 情報圧縮しても同じような結果になるのかも?)
強化学習は、脳の機能の1つである、欲求と選好から生じる合目的的な 行動を再現することができる機械学習アルゴリズムです。 いくつかの証拠から大脳基底核が強化学習の機構の一部であることが 確実になってきています。
Richard S.Sutton (著), Andrew G.Barto (著), 三上 貞芳 (著), 皆川 雅章 (著)
出版社: 森北出版 (2000/12)
ISBN-13: 978-4627826618
分かりやすいと評判の定番教科書。 英語のHTML版もあります。
RL FAQ(強化学習FAQ)の日本語訳。
特徴選択は、脳が処理するような高次元の入力ベクト ルに対して、機械学習アルゴリズムの性能を劣化させな いために不可欠な技術です。脳の選択的注意という機 能は、明らか特徴選択と同じ効果があると思います。
多くの機械学習アルゴリズムは、入力ベクトルの次元(例えばセンサーの数)が大きくなると、 様々な理由から事実上動作しなくなります。 この現象を機械学習研究者は「次元の呪い」 (Curse of dimensionality) と呼びます。 次元の呪いを避ける方法としては、特徴選択の他に、 次元圧縮、事前知識の作り込み(階層化等)などがあります。 私は、脳もこれらの方法を組み合わせることで 次元の呪いを回避しているのだと思います。
クラスタリングの解説。クラスタリングにおける次元の呪いの回避方法も解説されています。
「良質かつ厳選されたデータ集合」を用いることでデータマイニングを 成功させようという実践的解説。 次元の呪いを回避するための特徴選択についても解説しています。 (個人的には図2の特徴数とクラスの関係が目から鱗でした。) この著者による データマイニングの宝箱 のページも勉強になります。
正則化は、脳が持つような、学習していない事象にも 対処可能な能力(汎化能力)を高めるために、機械学習 において一般的に行われる手法です。 不良設定問題(ill-posed problem)になるような 逆問題 (Inverse problem)を 解くためにも用いられます。
私は、脳が持つ「観測と予測の不一致の検 出」という機能が、正則化に関係すると考えています。 また、自閉症 (Autism) の子どもは般化(心理学用語ではこの字を使うようです)が困難である、という事実にも注目しています。
フレーム表現は、 Minsky が提唱した、 人工知能における知識表現 方法の一つです。 「知識表現 フレーム」で検索すればフレームの分かりやすい具体例がいろいろ見つかると思います。
Marvin Minsky
MIT-AI Laboratory Memo 306, June, 1974.
Deep Learning は、従来よりも多くの層を持ったニューラルネットを用いる技術です。画像認識、音声認識などの分野で、 いろいろなベンチマークで従来技術を超える性能を出しており、 注目を集めています。 Deep Learning のネットワークの基本構造や性能を上げる技法の一部は大脳皮質のモデルに起源を持ちます。
BESOM(ビーソム)ブログ deep learning 日本語チュートリアル資料など
Deep learning 用語集
大脳皮質と deep learning の類似点と相違点
中島 義明 (編集), 子安 増生 (編集), 繁桝 算男 (編集), 箱田 裕司 (編集), 安藤 清志 (編集), 坂野 雄二 (編集), 立花 政夫 (編集)
有斐閣 ; ISBN: 4641002592 ; (1999/01)
神経科学の用語も結構カバーしています。
日本認知科学会 (編集)
出版社: 共立出版 (2002/07)
ISBN-13: 978-4320094451
CD-ROM 版の「デジタル認知科学辞典」(ISBN-13: 978-4320121058) もあるので、パソコンに入れておくよいかもしれません。
下條 信輔 (著)
出版社: 新曜社; 新装版 (2006/6/6)
ISBN-13: 978-4788510005
専門書ではありませんが、赤ちゃんの能力、 すなわち人間が生得的に持っている能力についてのイメージがよくつかめます。 近々赤ちゃんが生まれる予定の方はぜひこれを読んでから 観察に望まれるとよいと思います。
「脳の中の脳」といわれる前頭前野の機能は、今日では「遂行機能」として 理解されています。 遂行機能についてはいろいろな表現で説明されていますが、 いくつか眺めてみれば、決して計算機上で再現できない機能ではないことが よく分かると思います。
前頭葉機能障害のページで損傷部位と症状の関係が とても簡潔にまとめられています。
ERPは脳波の一種です。 大脳皮質6層構造、選択的注意、正則化の機構と関係が深そうなので 現在勉強中。
入戸野先生による ERPの解説。 Figure 2 によると、陰性電位は浅い層への興奮性入力か深い層への抑制性入力、 陽性電位は浅い層への抑制性入力か深い層への興奮性入力、ということでしょうか。
代表的な成分の解説など。 CNV, P1-N1-P2, NA, Nd, N2b, P300(P3b), P3a, MMN, N400 。
目次はここ。 エラー関連陰性電位(error-related negativity, ERN)について詳しい。
アフォーダンスの簡潔な解説。
佐々木 正人 (著)
出版社: 岩波書店 (1994/05)
ISBN-13: 978-4000065122
ギブソンのアフォーダンスについての分かりやすい解説。 3章後半あたりからようやく面白くなってきます。 (私はこの本で述べられている「知覚と行為のカップリング」とは 運動前野が学習する状態行動対のことだろうと思っています。)
選択的注意については、認知科学の分野で長く研究されています。 脳科学大事典 p.414 等をご覧ください。
私は、注意は機械学習の分野で言う特徴選択に相当すると考えています。
脳の情報処理機構に関して確定的なことはほとんど分かっていないと 言われていますが、確定的でなくてよければ膨大なことが分かっています。 重要な情報を適切に取捨選択すれば、脳の全体像を把握することは 決して難しくはありません。
神経科学入門的な解説記事から専門的な論文紹介まであり、 とても読み応えがあります。
V.S. ラマチャンドラン (著), サンドラ ブレイクスリー (著), V.S. Ramachandran (原著), Sandra Blakeslee (原著), 山下 篤子 (翻訳)
出版社: 角川書店 (1999/08)
ISBN-13: 978-4047913202
こちらの書評が 詳しいです。
アントニオ・R. ダマシオ (著), Antonio R. Damasio (原著), 田中 三彦 (翻訳)
出版社: 講談社 (2000/01)
ISBN-13: 978-4062100410
前頭前・腹内側部(BA11, 12 ?)の損傷が引き起こす症状について詳しい。 pp.297--298 の損傷患者の様子が、 フレーム問題 (Frame problem) にはまったロボットととても似ていて興味深いです。
「妻を帽子とまちがえた男」「火星の人類学者」など。
丹治 順
出版社: 共立出版 (1999/11)
ASIN: 432005394X
運動細胞、一次運動野、運動前野、補足運動野、小脳、大脳基底核、帯状皮質運動野、前頭前野を含む、 運動に関係するありとあらゆる領域を完全に網羅し、それぞれの領域の機能を損傷した場合の症例などと共に 詳しく分かりやすく解説する、一般の人向けの本。
下記「脳と視覚」と合わせれば脳の全貌がほぼ把握できます。
福田 淳 (著), 佐藤 宏道 (著)
出版社: 共立出版 (2002/02)
ISBN-13: 978-4320053915
視覚に関する知見を広く詳しくまとめた本。上記「脳と運動」と同じシリーズですが、かなり専門的です。
#近々第5版の日本語訳が出るようです!
#カンデル神経科学|MEDSi メディカル・サイエンス・インターナショナル
神経科学の標準的教科書。通称「カンデル」。 あちこちで輪講されているため、検索すれば日本語の 輪講資料が見つかるかもしれません。
なお、この分厚い本をいきなり最初から読もうとするのは無謀なのでやめた方がよいです。 図が非常に優れているので、図だけはすべて目を通して 何が書いてあるか理解しておくとよいかもしれません。 (第5版になって図がさりげなくパワーアップしてます。)
Principles of Neural Science 5th ed. [ハードカバー]
Eric R. Kandel (著)
出版社: McGraw-Hill Companies; 5版 (2012/10/26)
ISBN-13: 978-0071390118
有田先生による、 各種神経系の解剖学的特徴、機能的意義等の詳しい総説。 書籍になってます。 比較的マイナーないろいろな神経核の解剖学的な特徴だけでなく、 機能に関しても様々な知見を統合したシステム論的な見方の解釈をずばっと 書いてくれるので、(それを文字通り信じてはいけないですが)読みやすいです。
脳内物質のシステム神経生理学―精神精気のニューロサイエンス
有田 秀穂 (著)
出版社: 中外医学社 (2006/10)
ISBN-13: 978-4498128200
pooneil さんのブログ。
viking さんのブログ。
Shuzo さんのブログ。 確率推論とニューロン 、 オシレーション特集、 まとめてスパースコーディング、 感覚野の層と機能。
私が脳を理解しようとする際に最も頼りにしているのは神経解剖学的知見です。 解剖学的事実は、 脳の情報処理機構を推測する上で非常に強いヒントを与えてくれます。 (電気生理学や脳機能イメージングで得られている知見は、 実験条件の問題、統計処理の問題、 実験結果の解釈の問題等により、 すべてが100%信用できるものではないと思っています。)
株式会社京都科学製の脳の模型。 込み入った大脳基底核、海馬、視床あたりも分解して立体構造を知ることができます。 大脳皮質にはブロードマンの領野の番号が、視床には特殊核の略称が、 他の様々な場所にも私の知らない略称が書き込まれています。 脳の勉強を始めたころは毎日30分以上は眺めてました。 高いですが、脳を研究する研究室にはぜひ置いておいて欲しい一品。 (オンラインカタログのページから "11029-000" で検索してください。)
難しい解剖学用語もひくことができるオンライン辞書。とても助かります。
原島 広至 (著), 河合 良訓 (著)
出版社: エヌ・ティー・エス (2005/04)
ISBN-13: 978-4860430757
脳の主要な組織の名称と役割を語源や3Dの絵とともに解説する、解剖学英単語集。 解剖学用語は英語も日本語も読み方すら分からないことが多いですが、 この本は両方にふりがな振ってあり、とても助かります。
解剖学でとてもよく出てくる superior, inferior, anterior, posterior, ventral, dorsal, rostal, caudal などの用語の意味の説明。
寺島俊雄 (著)
出版社: 金芳堂 (2011/12/5)
ISBN-13: 978-4765315067
神戸大学の寺島先生による神経解剖学の詳しい資料。 かつてネットで無料公開されていた神戸大学の講義資料が書籍化されたようです。 理工系の人にもわかりやすいらしいです。
Malcolm B. Carpenter (著), Jerome Sutin (著), 近藤 尚武 (翻訳), 千葉 胤道 (翻訳)
出版社: 西村書店; 第8版 (1995/04)
ISBN-13: 978-4890132362
詳しい神経解剖学の本。
非常に重要な「5つの大脳皮質−基底核ループ」の絵が図2に引用されています。 ちなみに、この絵の引用元は、2000回以上も引用されている とても有名なこの論文です。
ALEXANDER GE, DELONG MR, STRICK PL
PARALLEL ORGANIZATION OF FUNCTIONALLY SEGREGATED CIRCUITS LINKING BASAL GANGLIA AND CORTEX
ANNUAL REVIEW OF NEUROSCIENCE 9: 357-381 1986
池谷先生による 専門家向けの海馬の解説。 (英語の発音を敢えてカタカナで表してみようのページもありがたいです。)
ネオコグニトロンは脳の視覚野の解剖学的特徴を参考に作られた パターン認識を行う神経回路モデルです。
原論文よりも、「脳とニューラルネット」 pp.75--92 または 「脳科学大事典」 pp.851--859 の解説の方が、分かりやすくておすすめです。
PATON は、脳の機能の1つである、シンボル処理とパターン処理を統合した 推論を実現する神経回路モデルです。 その実現には、脳の特徴的な振る舞いの1つである選択的注意がかぎとなります。 PATON は、シンボル処理のみに基づく人工知能技術が直面している シンボルグラウンディング問題 (Symbol grounding problem)を解決していると思います。
PATON の詳細は「脳科学大事典」 pp.544--551 をご覧ください。
銅谷先生の講義資料。 数理科学の連載「計算神経科学への招待」の草稿があり必読です。
「大脳皮質が教師なし学習、小脳が教師あり学習、大脳基底核が強化学習を 行っている」という整理は大変分かりやすいです。 神経修飾物質であるドーパミン、 セロトニン、 ノルアドレナリン、 アセチルコリンが、 それぞれ機械学習アルゴリズムの変数である TD誤差δ、報酬割引率γ、逆温度β、学習率αに対応するという 仮説も大変分かりやすいですが、 セロトニンとノルアドレナリンについては、まだまだ検証が必要ではないかと思います。
川人 光男 (著)
出版社: 産業図書 (1996/03)
ISBN-13: 978-4782815144
計算論的神経科学の入門書。 運動制御の話に多くのページが割かれています。 小脳の「フィードバック誤差学習モデル」など。
浅川先生による、ニューラルネットワークの講義資料。 パーセプトロン、エルマンネット、 ホップフィールドネットワーク、Linsker のモデル、SOMを含む 古典的モデルの詳しい解説。
Michael A. Arbib (Editor)
Publisher: The MIT Press; 2 Sub edition (November 15, 2002)
ISBN-13: 978-0262011976
ニューロンレベルからシステムレベルに到るまで、脳に関する有名なモデルを 数多く載せています。 これを眺めれば逆に脳の理解がいかに進んでいないかを知ることができます。
「意識」や「知能」のように捉えにくい曖昧な概念についての理解を深めたいと思う人は、 システム工学やソフトウェア工学における 要求分析 (Requirements analysis)の技法(ユースケースなど) の修行を積むと役に立つかもしれません。 例えば知能とは何かについて考えたいならば、 「知能を持つ機械を作って欲しい」という仮想的な顧客の要求分析を(妥協することなしに)行えば、 知能についてとても理解が深まると思います。
茂木健一郎氏による 日本経済新聞の連載記事。 意識に関連した神経科学の話題を幅広くカバーしています。
クリストフ・コッホ (著), 土谷 尚嗣 (著), 金井 良太 (著)
出版社: 岩波書店 (2006/06)
ISBN-13: 978-4000050531
クリストフ・コッホ (著), 土谷 尚嗣 (著), 金井 良太 (著)
出版社: 岩波書店 (2006/06)
ISBN-13: 978-4000050548
訳者の1人土谷さんのページにて、 1章、20章、フランシス・クリックの序文、著者前書き、訳者前書きが サンプルとして pdf で読めます。
刑法学の近代学派(19世紀末)はすでに人間の自由意志を否定しているようです。刑法学者おそるべし。 「被告を有罪にしても犯罪抑止にはつながらないなら無罪、 つながるなら有罪」という判断基準ならば、確かに自由意志という 概念は必要としませんね。
Shuzo さんによる、 自由意志に関するニューヨーク・タイムズの記事についての解説。
私見ですが、大脳皮質は下記の情報処理技術を用いていないと思っています。
大脳皮質がバックプロパゲーション(誤差逆伝播法, Backpropagation)をやっている という証拠は見つかっていません。 教師信号をどうやって与えるか、という問題もあります。
BESOM モデルはホップフィールド・ネットワークと似たところがありますが、 教師なし学習により階層的に情報を圧縮しているところが本質的に違います。
指数オーダの時間をかけてゆっくり温度をさげて 厳密解を求める、ということを脳がやっているとは思えません。 (ではCD法は?)
オンラインで行うのが難しそうです。スパース化によって汎化能力を上げる、 ということは脳もやっていると思います。
神経回路による実現が難しそうです。
分かりやすいパーティクルフィルタの解説。
神経回路による実現が難しそうです。(いや、ギブスサンプリングは簡単に実現できそうですね。)
国内の学会の全国大会に出れば、その分野の研究者の価値観、方法論、 現在ホットな話題が何かがだいたい分かります。 学生さんの発表は前半でその分野の常識を分かりやすく説明してくれるので、 とても助かります。 大御所の先生は質疑応答でするどいコメントをするので、とても勉強になります。 ポスターセッションでは多くの方にいろいろ教えていただきました。 大変感謝しております。
現在私の活動にもっとも近い国内学会。
以前と違って脳や人間のような知能に対しても本格的に取り組みつつあります。
全国大会の予稿集も論文誌もすべて pdf で無償でアクセスできます。
すばらしい。
脳の回路レベルでの振る舞いを対象とする学会。
学会誌の電子ジャーナル版ができました。非常に分かりやすい解説記事が毎号載っており、重要です。
とても大きな大会が開かれます。 The Society for Neuroscience(SfN, 北米神経科 学会)はもっとすごいらしいですが。
毎年3月の玉川大での開催には大勢の研究者が参加します。
機械学習に関する理論を扱う研究会。
心理学、人工知能、脳神経科学も含んだ学際的領域を対象とする学会。
強化学習や知能の創発といった話題もいちおう対象のようです。