第9回
真・物理選別学が掌握する範囲 ①
~リサイクルにおける対象~
リサイクルにおける対象
本コラムの狙いは、旧来の選鉱学が積み残していったブラックボックスの存在を認識し、その解明の糸口を示し、物理選別技術の飛躍的な高度化に繋げることである。これにより都市鉱山開発を促し、資源循環・資源安定供給を実現することを目指している。そして、本コラムが目指す理想研究は、壮大なエントロピーの縮小を、出発からゴールまで網羅的に対応することにある。
一方、リサイクルの対象となる物は極めて幅広いが、歴史的に見れば、元々、公衆衛生の向上、埋立処分場の延命など、廃棄物の適正処理を目指したものである(図1.3.1「廃棄物適正処理ループ」)。廃棄物処理としてのリサイクルは、ごみの減容化が主たる目的で、リサイクルされた物はカスケード利用で良く、その用途を問うものではない。本コラムで述べる物理選別技術は、様々な用途に応用できるものと考えるが、基本的には、図1.3.1の「廃製品資源循環ループ」の構築を実現することを想定している。これは、従来、ほぼすべてが廃棄物適正処理ループで処理されていたが、このうち資源循環に適する物は、なるべく廃製品資源循環ループに移行させることを意味する。つまり、循環利用価値のない廃棄物は、廃製品資源循環ループへの移行を目指しておらず、本誌の主たる選別対象としては想定していない。
図1.3.1 従来の「廃棄物適正処理ループ」と新たな「廃製品資源循環ループ」
図1.3.2に示すように、古くはすべて廃棄物として一緒くたに処理していたために、ごく限られた物しか資源循環(=水平リサイクル)できていなかった。各種リサイクル法の制定により、一部、廃製品別に回収されるようになっても、水平リサイクルはそれほど進んでいない。それには、資源ポテンシャルの高い廃製品を別途、高度に物理選別処理することが必要である。従来の廃棄物処理ループからも資源回収はされており、これをして都市鉱山と呼ぶ向きもあったため、これと区別するため、廃製品資源循環ループから得られる水平リサイクル可能な再生原料を、筆者は2012年に「戦略的都市鉱山」と名付けた。
図1.3.2 廃製品を対象とした資源循環(水平リサイクル)の促進