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大木研究室
第7回

カオスを秩序化する ②

 

~物理選別技術に求められるもの~

物理選別技術に求められるもの

レアメタル高騰期には、様々な研究分野で、理想的なリサイクル技術が論じられた。中には、製品の製造工程と完全に逆をたどることが、最も理想的なリサイクル技術とする考えまで現れた。既述したように、既存の選鉱学は、プロセスの理論的合理性(不合理性)を演算によって証明することができないため、理論でその適否を示すことはできないが、これは明らかに間違いである。技術的には可能かもしれないが、リサイクル業者が実施する工業プロセスとして不適であることは、証明するまでもない。

図1.2.2に示すように、資源あるいはそこから精製された原料の多くは、海外から輸入される。この原料から付加価値が付けられた特定機能を有する材料が作られる。さらに、それから機能部品が作られ、最終的には、様々な情報価値が付与された「製品」として生産される。

図1.2.2  物理選別は廃製品から原料価値を回収するプロセス

例えば、携帯端末であれば、その製品価値は10万円で流通することもあるであろう。消費者が認めたその価値の大部分は「製品機能」に対するものである。つまり、製品寿命を全うし、あるいは故障し、携帯端末として全く機能しなくなれば、消費者にとってその製品は無価値となる。そのときの捨て方によって、廃製品の持つ初期エントロピー(資源ポテンシャル)が異なるが、例えば、小型家電として捨てられたなら、種々雑多な廃製品と混在し、携帯端末が持つ金属濃度が薄められるため、この時点(状態)での廃製品としての価値も限りなく無価値に近い。その後、リサイクル工場で、携帯端末やデジタルカメラなどの高品位品だけを選別したり、電池を取り出し、破砕後にプリント基板だけを選別するなど、物理選別工程を経ることで原料としての価値が蘇る。しかし、あくまで回収できるのは携帯端末が持つ「原料価値」であり、さらに、一般的にはその8割~9割程度を回収するに留まるので、1台当たりにすれば、その価値は50円~100円程度となる。すなわち、製品製造においては10万円の価値を生み出すための工程を組むことができるが、リサイクル工場ではそのおよそ1/1000の原料価値(金属価値)しか回収できず、製造工程の逆工程をたどって再生原料を得る考えはコスト的に到底見合わない。製品製造メーカ自身が事業思想に基づいて、採算度外視でこの逆工程選別によるリサイクルに取り組むならば、合理性はともかくもその姿勢は讃えるべきである。しかし、独立採算のリサイクル業者が、100円の原料価値を商業的に回収するには、仕入れ、輸送、選別などのコストを100円未満で実施する必要があり、物理選別工程にかけられるコストはその数分の一で収めなければならないということになる。

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