複雑な対象も,部分に分割すれば易しい問題に帰着できるという考え方は,分 割統治として工学の広い分野で受け入れられている計算原理である. 混合分布の 場合,比較的単純な要素分布の重ね合わせによって複雑な分布を作ることでモ ジュール構造をもつ. 混合分布では,要素分布 が一般にオーバーラッ プしているので,柔軟な分割統治をしているとみなすことができる.
人工知能やニューロコンピューティングなどの分野で混合分布がモジュール構 造をもつモデルとしてとらえられるようになったのは比較的最近で,Jordan ら[41,43]が階層的エキスパートネットワークを 提案してからである[22,79].
データ解析においても,柔らかなクラスタリングとして混合分布による方法が 広まっており,ファジークラスタリングとしても知られている [25]. また,判別分析で一部データのクラスラベルが欠損してい る場合も混合分布として定式化されることが多い. これらの応用では,モジュー ルは分類クラスとしての意味をもっている.