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階層ベイズモデルとの関係

分布のパラメータを確率変量とみなして,その(事前)分布を考える ことによって,確率分布の分布というメタな階層構造を作ることができる. そのようにしてできる統計モデルを階層ベイズモデルと呼び, ロバストな推定を行ったり,複雑な対象に適合させるために用いられ, グラフィカルモデルとの関連から盛んに研究されている [74].

さて,混合分布で,要素分布のパラメータは固定し, 重み確率 $p_1,\ldots,p_K$ に着目してみよう. ベイズ的には,要素分布を規定する確率変量 $k$ に対する事前分布が $p(k) = p_k$ であるという階層ベイズモデル,

\begin{displaymath}
p(x, k) = p(x\mid k)\, p(k),
\end{displaymath} (2.10)

として解釈できる. そのため,$p_k$ は(クラス $k$ の)事前確率と呼ばれることがある.

このような解釈に立つと,混合分布はクラスラベルと確率変量の 2 ノードの 間に 1 本の有向アークがあるベイジアンネットワークの最も単純な場合とみなす ことができる(ただしクラスラベルは観測されないノードである). これにより,混合分布はベイジアンネットワークの性質を調べるた めの基本モデルとしての役割を果たすと考えられる.

よりベイズ的な考え方を進めると,要素分布のパラメータも変数とみて その事前分布をモデル化するという,より複雑な階層ベイズモデルを作ることが できる[71]が,本論文ではそれについては扱わない.



Shotaro Akaho 平成15年7月22日