next up previous
次へ: 本章のまとめ 上へ: 確率分布の位置, 尺度, 回転パラメータの学習法 戻る: 実験結果

考察

提案手法は EM アルゴリズムに基づく手法であるため,実験においても初期解 によっては(最適ではない)局所解に収束することがあった.定性的には,Type I よりも Type II の方が,局所解に収束しやすく,複数モデルのあてはめの 場合には,初期解とデータ点との重なりが少ない程,また,構成するモデルの 数が増える程,真の解に収束する比率が下がる傾向にある.また,実画像に おいては 2 個の異なる物体モデルをあてはめたが,初期値として,それぞれ の対象に誤った物体モデルを置いてしまうと,その間違った方に収束してしま う傾向がある(これは一面では欠損値や隠れに対する強さをも示すものである). それらの問題に比べればノイズなどに対する影響は,比較的少なかった.

さて,本論文で提案したアルゴリズムの計算量は,EM アルゴリズムの 1 ステッ プあたり$O(d N K)$ で与えられる(単独モデルをあてはめる場合).条件付き 確率の計算が計算時間の主要な部分を占めている.より精度の高い推定を行な おうとすれば特徴点の数 $N$ を大きくする必要があり,複雑なモデルを精度 良くあてはめようとすると $K$ が大きくなる.しかしながら,初期解ではも ともとあてはめの精度はよくないのだから,EM アルゴリズムの初期のステッ プではサンプルを間引いたり,モデルを少ない正規分布でおおまかに近似し, 近似精度がよくなってきてからモデルを詳細化することによって全体の計算量 を減らすことができる.また,モデルを複雑にする程局所解の数も増えると考 えられるから,その観点からもそうした段階的詳細化は意味がある.

また,実験結果は,多くの場合,最初の数ステップでかなり収束し,最適解の 近くでは非常に遅くなるという傾向を示している. これは,EM アルゴリズム は一次収束のアルゴリズムであるが,二次収束アルゴリズムの近似にもなって いるという事実に合致するものである.最適解の近くでの収束性を改善させる ためには,ある程度収束した時点で二次収束のアルゴリズムを併用することも 考えられる.



Shotaro Akaho 平成15年7月22日