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本章のまとめ

複雑な形の確率分布の位置・尺度(・回転)パラメータの ECM アルゴリズムに 基づく推定法を提案した. 一般に, 独立でないパラメータをもつ混合分布で は EM アルゴリズムの各ステップが複雑になるが,限定された形の正規混合分 布を用いることと,ECM アルゴリズムの採用によって,2 次方程式を解く問題 に帰着され,閉じた形のアルゴリズムが導かれた.

EM アルゴリズムを基礎としているため,比較的高速で安定した解が得られる という特徴をもつ一方で,局所最適解への収束,複数モデルのあてはめにおい て個数が決まっている必要があることなどの問題点も持っており,適用に際し てはこれらの点に注意する必要がある.

応用面では,物体認識を想定した実験を行ったが,はじめにも述べたように 分布の位置や尺度パラメータの推定は一般的な問題であり,物体認識以外の 用途も今後探索していく必要がある. 物体認識についても,手書き文字認識や 3D 物体認識では,位置や尺度,回転 以外の変形を想定する必要がある. 本論文ではそれを統計的なゆらぎとして扱うことによって無視することによって 安定なアルゴリズムを得ることができた. 一方陽にそれらのゆらぎを損失関数に入れたアルゴリズムも提案されている が[70],勾配法を用いているので,安定性では本論文での手法に 劣ると考えられる.

また,本論文では説明しなかったが, 観測領域が限られていて観測できないデータがある場合でも, 観測領域が軸に平行な矩形であれば,はみ出している部分の データを欠測値とした EM アルゴリズムを閉じた形で適用することができることが 著者によって示されている[1,2].



Shotaro Akaho 平成15年7月22日