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平坦な空間

接続係数は,微小な距離にある接空間の間の「ずれ」を表している. もし,ある座標系 $\boldsymbol{\xi}$を取ったとき,その$\alpha $-接続の 接続係数が全部 0 だったらそのずれも当然 0 である. このような座標系は存在するとは限らないが, もし存在するなら,$\alpha $-(アファイン)座標系といい, その空間は $\alpha $-平坦であるという.

$\alpha $-平坦な空間では,測地線は$\alpha $-座標系での直線として表される ($\alpha $-測地線). これは感覚的にはユークリッド空間にかなり近いまっすぐな構造を もつ空間である(計量が場所によって違うのでユークリッド空間 とは異なるが). ほかにも $\alpha $-平坦な空間はいろいろと便利な性質があり,工学的に有用な 多くの応用例では$\alpha $-平坦な空間の場合を考える.

例 4   指数分布族と呼ばれる

$\displaystyle f(x;\boldsymbol{\theta})=\exp\left(\sum_{i=1}^n \theta^i F_i(x)-\psi(\boldsymbol{\theta}) +C(x)\right)$ (8)

という形の分布族は $\boldsymbol{\theta}$をアファイン座標系として$1$-平坦である. この分布族は統計の情報幾何において中心的役割を果たすもので, $1$-接続,$1$-平坦などのことを特に$e$-接続,$e$-平坦などと呼ぶ (e:exponential). なお,正規分布は指数分布族の形をしており,$F_1(x)=x$, $F_2(x)=x^2$ とおくと,その$e$-座標系は $\theta^1=\mu/\sigma^2, \theta^2=-1/(2\sigma^2)$ となる.

例 5   確率分布$F_i(x)$の線形和で定義される混合分布族

$\displaystyle f(x;\boldsymbol{\theta})=\sum_{i=1}^n \theta^i F_i(x)+ (1-\sum_{i=1}^n\theta^i) F_0(x)$ (9)

$\boldsymbol{\theta}$をアファイン座標系として$-1$-平坦である. 従って,$-1$接続,$-1$-平坦のことを特に$m$-接続,$m$-平坦と呼ぶ (m:mixture).

例 6   より一般的に $\alpha\ne1$をパラメータとして

$\displaystyle f(x;\boldsymbol{\theta}) \propto (\sum_{i=1}^n \theta^i F_i(x))^{2/(1-\alpha)}$ (10)

という形の分布族($\alpha $-分布族)を考える. これは $\alpha \ne -1$を除いて一般に$\alpha $-平坦ではない8. このように,一般に確率分布で考えている限りは $\alpha=\pm1$の 場合だけが特別なので,応用上もほとんどが$\pm1$-接続 つまり$e$-接続 か$m$-接続を扱う.



Shotaro Akaho 平成19年6月13日