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ユークリッド空間をつなぐ

$S$の点$p$は接空間$T_p$を考えることにより, 接ベクトルの方向に微小距離 $d\boldsymbol{\xi}$だけはまっすぐ動くことができた. ここではそれをもっと延長していこう.

新しく動いた点 $\boldsymbol{\xi}(\tilde{p}) = \boldsymbol{\xi}(p)+d\boldsymbol{\xi}$では,新たな接空間 $T_{\tilde{p}}$で考える必要がある. その新しい空間で,最初に動いた $d\boldsymbol{\xi}$と「同じ向き」のベクトル $d\boldsymbol{\xi}'$を 定めてやれば,さらにそこから微小に $d\boldsymbol{\xi}'$だけ動かして やることができる. この操作を積み重ねていけば,点をまっすぐ長い距離動かせるようになる.

より一般に, 点$p$ $d\boldsymbol{\varepsilon}=(d\varepsilon^1,\ldots,d\varepsilon^n)$だけ 微小変化させて点$\tilde{p}$に移したとき, $T_p$のベクトル $d\boldsymbol{\xi}$ $T_{\tilde{p}}$に移った先のベクトル を $\Pi_{d\boldsymbol{\varepsilon}}[d\boldsymbol{\xi}]$と書き,これを平行移動 という(図3). これは $d\boldsymbol{\varepsilon}$が微小ならば線形変換であらわすことができる. 具体的には,まず$T_p$の基底 $\boldsymbol{e}_j$の平行移動を

$\displaystyle \Pi_{d\boldsymbol{\varepsilon}}[\boldsymbol{e}_j] = \tilde{\boldsymbol{e}}_j - \sum_{i,k} d\varepsilon^i \Gamma_{ij}^k \tilde{\boldsymbol{e}}_k$ (6)

と書こう(ただし $\tilde{\boldsymbol{e}}_j$ $T_{\tilde{p}}$ の基底). この式の $\Gamma_{ij}^k$接続(係数)という. 直感的には,接ベクトルは移動量に比例して接続係数の分だけ方向を 変える. 一般の接ベクトル $d\boldsymbol{\xi}=\sum_{j=1}^n a_j \boldsymbol{e}_j$は, $\sum_{j=1}^n a_j \Pi_{d\boldsymbol{\xi}}[\boldsymbol{e}_j]$に移ることになる.

図 3: 接続は接空間同士のつながり方を決める
\includegraphics{connection.eps}

点のまっすぐな移動は, $d\boldsymbol{\xi}'=\Pi_{d\boldsymbol{\xi}}[d\boldsymbol{\xi}]$ によって接ベクトルをそれ自身の方向に平行移動させる操作を連続的に繰り返せばよい. こうして得られた軌跡はまっすぐな線を定義するが, これはたまたま取った座標系 $\boldsymbol{\xi}$で見たときに直線になっているとは 限らないので,測地線という別の名前が ついている.



Shotaro Akaho 平成19年6月13日