さて,グラフィカルモデルでは,局所的な関係が全体に影響を及ぼすため, ある確率変数に関する期待値を取るだけでも,確率変数全体に対する和を 計算しなければならず指数的に大きな計算量が必要となることが ある18.
そこで用いられるのが,平均場近似(あるいは変分ベイズ法)と呼ばれる近似法である [20]. ここではその中でも,最も単純なナイーブ平均場近似についてその 幾何的な意味を説明する.
一般に,
という確率分布が与えられたとき,
各確率変数が独立ならば,変数ごとの計算にばらすことができるので都合がよい.
そこで,独立な確率分布全体の空間
を取り,もとの分布
を
に
射影する.
の要素
はその周辺確率分布の積
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そこで,-平坦な部分空間と
-射影という美しい組み合わせはあきらめて,
-射影を取るというのがナイーブ平均場近似の考え方である.
-射影なので,射影の一意性などは保証されないが,少ない計算量で
最適化ができる. 変分ベイズ法ではある初期解からスタートし,1ステップで
一つの変数だけに着目して射影する(交互最適化)ことによって局所最適解に
収束させることが多い(図9).
グラフィカルモデルを用いた現実的な問題(特に最近は符号化への応用が 盛んである)では,ナイーブ平均場近似では近似が荒すぎるので, より複雑な近似手法が開発され,それらに関しても幾何的な理解が 進みつつある[16,17,19] 19.