本質マグマか? - Myk2000g -
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14日午後の火山灰 |
Myk2000g
と
1940年
山頂スコリアとの比較
- 斜長石組成 -
宮城磯治 地質調査所 2000.07.27
★はじめに★
背景:
現在の理解では、2000年に三宅島で起った一連の噴火は「水蒸気爆発(マグマ無
し)」とされています。水蒸気爆発の場合の噴出物は、高温の地下水が何らかの
要因で周囲の岩石を壊し吹き飛ばされたもなので、マグマに由来する物質(火山
ガラスなど)は含まれません。
その後地質調査所の調査により、この活動によって放出された火山灰には、
新鮮な火山ガラス「Myk2000g」が多量に含まれていることが、既に明らかになっ
ています(この存在は予知連00.07.21に報告済、命名は7月24日)。
特に7月14日のMyk2000gは、かなり明瞭な、水蒸気爆発特有の発泡形態を持って
います。
もしMyk2000gが本質スコリアであれば、これら一連の噴火は「マグマ水蒸気爆発
(マグマあり)」と訂正されなければなりません。また、ガラス部分の含水量を局
所分析することにより破砕時の圧力(マグマ水蒸気爆発のおきた深さ)が推定でき
る可能性があります(#1; #2)。
マグマ水蒸気爆発の深さに関する情報は、三宅で現在起きている現象を理解する
うえで、きっと役に立つと思います。
問題点と解決方法:
しかしながら、火山灰に含まれる新鮮な火山ガラスがいつも本質物質とは限りません。
有珠山の2000年噴火においてUs-2000gを本質物質と断定したときと同様、
Myk2000gが過去の噴出物の破片である可能性を否定できない限り、これを新
しいマグマだと結論することはできません。
Myk2000gが新しいマグマであることを認定するには、Myk2000gの鉱物化学組成や
発泡形態等々を過去の噴出物と比較し、過去のどの噴出物とも異なることを示せ
ばよいことになります。
※理想的には*すべて*の噴出物と比較すべきですが、それは不可能です。
そこでこのページでは、
Myk2000g(-1, -2)と過去の噴出物とで化学組成(斜長石)の比較を行います。
★結論★
Myk2000gの微斑晶斜長石の化学組成と、1940年の山頂スコリア中の斜長石斑晶リ
ムの化学組成(宮坂・中川 1998のFig5-1eより)を比較したところ、Myk2000gが
1940年スコリアの破片であることを支持しない結果が得られた。
よってMyk2000g(-1, -2)が今回の本質物質である可能性が一層高まりました。
が、Myk2000gが1940以前、あるいは山体内に存在する未知のスコリアの破片であ
る可能性は依然として否定することはできません。
★試料・分析内容★
1. Myk2000g-1, Myk2000g-2
7月8日から15日にかけて川辺@地調氏が三宅島で採取した試料(8日と14日の火山
灰)を星住@地調氏が水洗篩分け(0.25-0.149mm区間)したものを、宮城@地調が
片面研磨ました。
Myk2000g(-1, -2)の石基ガラス部分には10μm程度の斜長石微斑晶が晶出してい
ます。これらの中心部の化学組成をEPMA(電子線プローブマイクロアナライ
ザ)を用いて分析しました。
2.文献データ
Myk2000gは山頂から噴出しています。もしMyk2000gが過去の噴出物の破片である
ならば、それも山頂から噴出(そして付近に堆積)したものと考えてよいでしょう。
また、Myk2000gは新鮮なので、最近の噴出物から順に疑うのが妥当でしょう。
最近山頂からスコリアを出した噴火は1940年、その前は1763年です。2000年噴火
では、1940年の噴火で堆積したスコリア丘の中、あるいはそのすぐ近くから噴出
したと推定されているので、1940年のスコリア破片が2000年の火山灰に混じる可
能性は高そうです。1940年の噴出物については(宮坂・中川 1998)による詳しい
研究がなされています。
そこでこのページでは、Myk2000gとの比較対象として、1940年の山頂スコリア中
の斜長石斑晶リムの化学組成(宮坂・中川 1998のFig5-1eより)を比較します。
※斜長石微斑晶とほぼ同時に晶出した部分は斑晶のリム(縁)と考えられるので、。
これを比較します。
★結果★
Myk2000g-1は、分布が狭いという点で1940年のものとは区別できそうです。
Myk2000g-2は、分布の中心が異なる点で1940年のものとは区別できそうです。
今後分析数を増やせば、区別できることをより明確に主張できるだろう。
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安間(宮坂)・中川 (1998)のFig5-1eより作成したヒストグラム。
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1940年山頂スコリアとMyk2000g-1(初日、7月8日)との比較
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1940年山頂スコリアとMyk2000g-2(7月14日)との比較
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Isoji MIYAGI