1.過去500 年の歴史記録に残っている三宅島の噴火は主として
山腹割れ目からの溶岩の噴出とその一部が海岸付近の地下水と接触した
小規模なマグマ水蒸気爆発である。
しかし地質学的にさらに三宅島の噴火の歴史をさかのぼると、
500年まえから約3000年前までは山腹と山頂から両方から噴火した時代があり、
約3000年前に火山豆石を含む火山灰などの降下とともに
カルデラを形成している(地質調査所1984 、
火山噴火予知連絡会会報第29 号,1-3)。
2.今回の噴火は、
山頂でマグマ水蒸気爆発をし大量の火山豆石を含む火山灰を降下しており、
山頂が陥没している点でも、
上述のすくなくとも過去500年の記録に残る噴火とは別の事態が生じている
と考えるべきである。
特に29日に発生した火砕流については末端で低温であったとはいえ、
発生時点ではこれより高温であったと考えられ、
数十度をこえれば致命的であることに加え、
亜硫酸ガスを含むことを考慮すれば、
巻き込まれたら逃げるすべがない点で防災上重視すべきことである。
3.マグマ起源の大量の亜硫酸ガスの発生と、 放出物中に約40 %含まれる今回のマグマと推定される物質の存在は、 大量のマグマが山頂直下に存在し、 今回の噴火に直接寄与していることを示している。
4.三宅島で過去にこのような噴火をしているのは 約3000年前のカルデラ形成に伴う噴火の際である。 比較的に良く似た火山である伊豆大島においても 5−6世紀のカルデラ形成に伴う噴火では 大量の火山豆石を含む火山灰降下とともに 山体破壊を伴う火砕流が流下している。 現時点では、 このような規模の噴火が生ずる確率について言及できるだけの判断材料が 不足しているが、これまでの噴火の推移を考慮すれば、 起こる可能性も否定せずに迅速に対処すべき状況にあると考えられる。