脳機能超音波イメージング
最新の超音波イメージング技術では、平面波送信に基づき一秒間に数千枚程度の非常に高いフ
レームレートによる画像取得が可能であり、さらに平面波によるコンパウンド走査と受信後の合成により高いSNRと解像度も実
現されつつあります。高速イメージング技術は、通常のBモードイメージングだけでなくドプライメージングにも展開さ
れ、高いフレームレートで血流情報を取得することが可能になってきています。このような高時空間分解能の血流画像計測を用い、神経-
血管カップリングを利用した神経活動評価である脳機能超音波イメージングが行われています。 近年、MRIを用いた脳機能ネットワーク研究によって発達障害を超早期に発見できることが報告されています。しかし、小さ な子供のMRI検査は容易ではありません。そこで、私たちは、安全で簡便な検査法である超音波に着目し、超音波による脳機能 ネットワーク検査法の開発を行っています。 右図:脳血流量変化の統計解析により得られた聴覚伝導路の脳機能マップ(空間分解能0.1 mm) 参考論文 Hikishima K, Tsurugizawa T, Kasahara K, Hayashi R, Takagi R, Yoshinaka K, Nitta N. Functional ultrasound reveals effects of MRI acoustic noise on brain function. Neuroimage. 2023 Nov 1;281:120382. Hikishima K, Tsurugizawa T, Kasahara K, Takagi R, Yoshinaka K, Nitta N. Brain-wide mapping of resting-state networks in mice using high-frame rate functional ultrasound. Neuroimage. 2023 Oct 1;279:120297. |
脳MRIの研究
MRIは計測や画像解析法の開発により、形態
だ
けでなく機能や代謝情報など様々な生体情報を捉えることが可能となり、画像診断医学における重要な役割を担っています。私たち
は、新たな脳画像検査法実現に向け、計測法(シーケンスプログラム)や解析プログラムの開発、前臨床における有用性の検証、
臨床研究を行っています。
左図:健常者の髄鞘MRI画像、右図:マーモセットの黒質線条体神経構造(赤色)
多 発性硬化症により生じる脳や脊髄の病巣は、MRIを用いて診断されます。従来のMRI検査は、症状の悪化における髄鞘の脱落 を捉えられますが、治まる際の髄鞘の回復を捉えることは容易ではありません。私たちは、髄鞘が水分子の拡散現象を強く制限し ていることに着目し、この強い制限拡散を計測・解析することで髄鞘を特異的に捉えるMRI検査を開発しています。本研究開発 により、多発性硬化症の早期診断や病状の正確な評価や、髄鞘が脱落する様々な 神経・精神疾患の画像診断への応用が可能と考えられます。 参考論文 Fujiyoshi K*, Hikishima K*, Nakahara J*, Tsuji O, Hata J, Konomi T, Nagai T, Shibata S, Kaneko S, Iwanami A, Momoshima S, Takahashi S, Jinzaki M, Suzuki N, Toyama Y, Nakamura M, Okano H. Application of q-Space Diffusion MRI for the Visualization of White Matter. J Neurosci. 2016 Mar 2;36(9):2796-808. (* equally contribution) Hikishima K, Ando K, Yano R, Kawai K, Komaki Y, Inoue T, Itoh T, Yamada M, Momoshima S, Okano HJ, Okano H. Parkinson Disease: Diffusion MR Imaging to Detect Nigrostriatal Pathway Loss in a Marmoset Model Treated with 1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine. Radiology. 2015 May;275(2):430-7. 右図:顕微鏡的MRIによるマーモセットの発達脳の時空間的解析 発達中の劇的な脳構造変化を追跡するためには、MRIのような非侵襲的な計測法が必要です。また、その解剖学的特徴を三次 元 的詳細に捉えるには、各発達ステージの脳サイズに対し十分な解像度による評価が重要となります。そこで、私たちは前臨床研究 において胎生期や生後の脳発達を経時的に評価するためのMRIや、数十マイクロメートルの等方性ボクセルサイズで計測可能な 顕微鏡的MRI、脳発達を追跡するための画像解析法の開発に取組んでいます。 参考論文 Seki F, Hikishima K, Komaki Y, Hata J, Uematsu A, Okahara N, Yamamoto M, Shinohara H, Sasaki E, Okano H. Developmental trajectories of macroanatomical structures in common marmoset brain. Neuroscience. 2017 Nov 19;364:143-156. Sawada K*, Hikishima K*, Murayama AY, Okano HJ, Sasaki E, Okano H. Fetal sulcation and gyrification in common marmosets (Callithrix jacchus) obtained by ex vivo magnetic resonance imaging. Neuroscience. 2014 Jan 17;257:158-74.(* equally contribution) Hikishima K, Sawada K, Murayama AY, Komaki Y, Kawai K, Sato N, Inoue T, Itoh T, Momoshima S, Iriki A, Okano HJ, Sasaki E, Okano H. Atlas of the developing brain of the marmoset monkey constructed using magnetic resonance histology. Neuroscience. 2013 Jan 29;230:102-13. 図:各種実験小動物の標準脳テンプレート
MRIを用いた先進的な脳画像解析法(functional MRI, voxel based morphometryなど)の開発にはそれらの画像統計解析基盤である標準脳テンプレートが必要となります。私たちは、前臨床で得られた知見や開発した技術の臨床利用を 加速するため、臨床で用いられているような標準脳テンプレートを各種実験小動物において世界に先駆けて作成し、公開していま す(公開データ)。これま で、私たちの研究では上図の標準脳テンプレートを用いることで、 神経変性疾患モデルの病態、学習における脳の可塑性変化、脳機能を正確に評価することが 可能となりました。 参考論文 Hikishima K, Komaki Y, Seki F, Ohnishi Y, Okano HJ, Okano H. In vivo microscopic voxel-based morphometry with a brain template to characterize strain-specific structures in the mouse brain. Sci Rep. 2017 Mar 7;7(1):85. Yamazaki Y*, Hikishima K*, Saiki M, Inada M, Sasaki E, Lemon RN, Price CJ, Okano H, Iriki A. Neural changes in the primate brain correlated with the evolution of complex motor skills. Sci Rep. 2016 Aug 8;6:31084.(* equally contribution) Hikishima K, Ando K, Komaki Y, Kawai K, Yano R, Inoue T, Itoh T, Yamada M, Momoshima S, Okano HJ, Okano H. Voxel-based morphometry of the marmoset brain: In vivo detection of volume loss in the substantia nigra of the MPTP-treated Parkinson's disease model. Neuroscience. 2015 Aug 6;300:585-92. Hikishima K, Quallo MM, Komaki Y, Yamada M, Kawai K, Momoshima S, Okano HJ, Sasaki E, Tamaoki N, Lemon RN, Iriki A, Okano H. Population-averaged standard template brain atlas for the common marmoset (Callithrix jacchus). Neuroimage. 2011 Feb 14;54(4):2741-9. |