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2.2
ジャンボーグA

小学館の小学生向けの雑誌である小学2年生の1970年9月号にて、円谷プロ原 作、内山まもる画による漫画「ジャンボーグA」の連載が開始された。本作品 において、操縦者の動作をトレースするように人間型ロボットを動かす操 縦方式が提案・例解されている。 文献[31]によれば、「ジャンボーグA」の最初の企画書「空想特撮シ リーズ ジャンボーグA」は1969年に書かれており、操縦方式も考案されてい たとのことである。

人間型ロボット・ジャンボーグAの操縦方式の基本的なアイデアがはじめて公開されたのは、 小学2年生1970年10月号260ページ並び に261ページである。図1にそのページを引用する。 図1(a)において、ジャンボーグAの操縦者である主人公・真一が女の子を助けようと怪獣を突き飛ばすという動作を行うと、それに連動 して、ジャンボーグAが同様の動作を行う様子が示されている。 図1(b)の図中の「そうか、ジャンにのればぼくの力がなん十ばいにも なるんだ。」という台詞と枠外の「真一のうごきが、 なん十ばい にもなってジャンにつたわるのです。」という解説において、文章により操縦方式 が説明されている。 ジャンはジャンボーグAの略称である。 説明には力の増幅という点のみしか書かれていないが、 漫画の文脈から、操縦者の動作をトレースし、その力を増幅する制御方式であることが 分かる。

\includegraphics*[height=4.5cm]{jater2.eps}
(a)操縦方式の図解
\includegraphics*[height=5.0cm]{j-a_00012.eps}
(b)操縦方式の説明
図1: 操縦方式のアイデアの提案・例解


さらに、図1(b)の「ちょっとさわっただけなのに。」という台詞から見て、 触覚・力覚フィードバックが想定されている可能性が高い。 ただし、視覚情報のフィードバックは、操縦者前方にあるスクリーン上に 周囲の映像が写し出されるというもので、テレイグジスタン ス方式としては不完全なものであった。

「ジャンボーグA」の設定は、文献[31]によると,

我が国を代表するロボット工学の権威・大川博士はPAT()の参謀じきじきに秘 密兵器の開発を依頼された。秘密兵器の名はジャンボーグA。人間が搭乗して 操縦する巨大ロボットである。だが、完成後間もなく博士は死亡。秘密兵器は 闇に葬られるところとなった。ある日、博士の息子の真一が封印されていたジャ ンボーグAを発見。真一は自らこれを操り、地球の平和を乱す怪獣や宇宙人相 手に果敢にたたかいを挑んでいく。。。。

というものであった。

特別な操縦訓練を積んでいない少年がロボットを動かすという基本的設定 [31]の中で、最も合理的な操縦方式として、テレイグジスタンス方式の原型とい うべき方式が提案されたものと推察される。

「ジャンボーグA」は設定を変更されて,毎日放送、円谷プロ制作のTV特撮番組 「ジャンボーグA」として,1973年1月17日より12月29日まで,NET(現・テレビ朝日)系にてテレビ放映された。 図2に,実写版ジャンボーグAの操縦者の様子を示す。図3にVPL Research社のデータ・スーツを示す。 勿論、TV特撮番組であるジャンボーグAの操縦スーツに、実際に人間の運動状態を計測する機能は無く、画像提示もHMD(Head Mounted Display)では無いが、そのイメージの類似性には驚かざるを得ない。

\includegraphics*[height=5.0cm]{VPLDataSuit.eps}
図2: TV特撮番組「ジャンボーグA」のコクピット

\includegraphics[height=9.0cm]{japf.eps}
図3: VPL Research社製データ・スーツ

Eimei Oyama 2001-11-10