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4.1 テレイグジスタンス方式の一般的な問題

テレイグジスタンス方式のマスター・スレーブ・システムの構築に当たっての中心的な課題は、次にあげるようなマスター装置とロボットとの間の様々なミスマッチをどのように解消するかということである。
(1)運動学的ミスマッチ
(2)トルク制限、時間遅れ等を含む動力学的ミスマッチ
(3).時間遅れを含む感覚情報のミスマッチ
このようなミスマッチの解決のためには、マスター・システムの改善とスレーブ・ロボットの性能改善が不可欠であるが、根本的には、 [*]6.3で述べるテレイグジスタンス実験システムにおいて採用された拡張型テレイグジスタンス(Extended Tele-existence) 方式が必要となる[74][77] [57][58][59]。 これは、SheridanらによるSupervisory Control並びに予測ディスプレイ [64][13][65] [55][16][4] のアイデアを発展させたもので、 環境モデリング技術の向上による、実環境を正確にコピーしたVR環境を前提として、以下のような方針で、ロボットシステムを動作させる。
(1)スレーブ・ロボットのセンサデータにより、VR環境を常に正確なものに保 つ。
(2)操縦者はVR環境中で作業を行う。
(3)VR環境での操縦者の動作結果と実環境との差が出来る限り小さくなるよ うに、スレーブ・ロボットを動作させる。
実環境とVR環境の差が許容範囲内に収まっていて、 VR環境中で行った作業によって生成されたスレーブロボットへの指令が実環 境でも適切であれば、操縦者は、日常的に作業を行うような感覚でロボットを 操作することが可能である。 例えば、運動学的・動力学的ミスマッチの結果、 人間型スレーブ・ロボットが人間の半分の歩幅でしか歩けなかったとしても、 操縦者がVR環境中で行った2歩を、スレーブ・ロボットの4歩の動作に変換し、 操作者が2歩で移動した状態と一致するように、スレーブ・ロボットが動作すれ ば、操作者はスレーブ・ロボットとの違いを意識することなく歩行できる。 勿論、第1章で述べたように、環境モデリングの前提となる環境認識の性能は低く、 また、スレーブ・ロボットの行動計画能力も低い。自律型ロボットの実現に比 べれば遙かに容易であるが、 真の拡張型テレイグジスタンス実現には、未だ多くの時間が必要である。

Eimei Oyama 2001-11-10