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1. はじめに

現在(2001年)、日本はロボットブームに沸いている。HondaのP-2、P-3、AsimoやSonyのAIBOの 登場により、工場の外に出てオフィスや家庭で活躍するロボットの研究開発 への期待が高まっている。 しかし、 「ロボット研究は、知能の部分が決定的に遅れている。」と多くの研究者が口にしているようである。 現在話題になっているロボットが、環境認識能力や行動計画能力をほとんど、 或いは全く備えておらず、作業を行うためには、遠隔制御や人間による再プロ グラムを必要としている。 自律型ロボットの実現には、少なくとも、環境認識、行動計画、運動制御と いう3つの情報処理が不可欠であるが、 環境認識、行動計画、運動 制御のうち、今後20年の間に、人間と同レベルの機能を持った情報処理システ ムの構築が見込まれているのは運動制御だけである。 画像認識を含む外界の認 識と適切な行動計画のための情報処理は難問であり、自律ロボット実現のため の大きな障害となっている。現時点において、ロボットに定型作業以外の作業 を行わせる実用的方法は、人間による操縦である。

人間型ロボットの最も有力な操縦法として、テレイグジス タンス方式がある。 テレイグジスタンスは、舘らによって提案されたロボットの遠隔制御のための 概念である [71][72][73][2]。 遠隔地にいるロボットの得た感覚情報を操作者に送り、ロボットが感覚情報を 得た状態と同じ状態で操作者に提示し、また操作者の動きに追従してロボット が動くようにすることによって、操作者はあたかもロボットとなったような感 覚で、ロボットを自由に制御でき、遠隔地のロボットに人間の高度な認識能力 と柔軟な作業能力を実現できる。 テレイグジスタンスの概念は日本で提案されたが [71][72]、 前後して、米国では、テレイグジスタンスと同様の概念であるテレプレゼンスが提案され ている [48][49][1]。 テレイグジスタンス・テレプレゼンス型ロボット操縦方式は、有力なロボット制御方式として 活発な研究が続けられている [21][70][67] [57][7]。 以下、本稿では、テレイグジスタンス・テレプレゼンス型ロボット操縦方式を テレイグジスタンス方式と省略して記述することにする。

学術上は、テレイグジスタンス方式 の提案は1980年前後となっ ているが、1970年代始めに、その原型とも言うべき操縦方式は、漫画並びにテレビ番組として提案・例解されていた。 小学館の学習雑誌・小学二年生に1970年9月号より1971年3月号まで連載された、 円谷プロ原作、内山まもる画による「ジャンボーグA」において、 操縦者の動作をトレースするように人間型ロボットを動作させる操縦方式が提案・例解されている。 本稿では、 小説、漫画、アニメーション、特撮TV番組、特撮映画等の芸術・エンタテイメ ント作品に登場したテレイグジスタンス方式のロボット・システムを紹介する。 さらに、テレイグジスタンス方式の技術上の諸問題について概説し、 これまでに発表された実在のテレイグジスタンス方式の ロボット・システムについて紹介する。

Eimei Oyama 2001-11-10