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Appendix. 1 ロボットへの搭乗による操縦

少年ジャンプに72年42号より73年35号まで連載された 永井 豪作「マジンガーZ」は、その後のロボット・アニメーションのブームを作っ たと評価されている。 「マジンガーZ」は様々な革新的なアイデアを提案したが、操縦者 が搭乗して操縦する点も革新的であったと評する文献が複数存在する [66][26]。しかし、その点にお いては、明らかに漫画版「ジャンボーグA」が先行している。 もっとも、H. G. Wellsの1898年の作品The War of the Worlds (宇宙戦争)に登場した三足ロボットは操縦者が搭乗する ものであったし、 文献[52]によれば、操縦者が搭乗して操縦するロボットは 1930年代より米国のSF雑誌に何度も登場しており、アイデアに新規性は無い。

しかも、ロボットの内部が通常の空間と同じ物理法則に支配されて いるならば、転倒する可能性のあるロボットへの人間の搭乗は非常に危 険であり、 現時点では工学的に健全なアイデアとは考えられない。


Appendix. 2 スケール変化による重力加速度の変化


 重力加速度を $h$ とすると、 高さ$h$にある物体が初速0で自由落下する場合、地面に到達するまでの時間
$\displaystyle t=\sqrt{\frac{2h}{g}}$     (1)

である。スレーブロボットの寸法が操縦者の$\alpha$倍になった場合、相似な高さ$\alpha h$から物体が地面まで落ちてくるのにかかる時間は$\sqrt{\alpha}$倍となる。このため、操縦者の視覚上ででは重力加速度が$1.0/\alpha$分の一に、変化してしまったように感じられることが予想される。 現時点においては実現は難しいが、 遠隔ロボットによるフライの捕球など、重力加速度が関係し、高度の予測情報 処理が必要な作業を やらせようとすると問題となってくる。 さらに、ロボットの転倒にかかる時間も $\sqrt{\alpha}$倍となってしまうの で、小さいロボットを操縦する場合は、転倒時の情報処理を高速化する必要が ある。 人間の適応能力に期待するというのが現実的な問題解決法であるが、 将来的には、VR環境の利用とロボットの自律化を組み合わせた、拡張型テレ イグジスタンス方式によって解決可能と予想される。


Appendix. 3 TELESAR設計時の失敗

TELESARの設計上の失敗の一つは、上腕の関節角配置が人間と異なっていたこ とである。TELESARの上腕の関節角配置は、(株)三菱重工製、汎用知能アームPA-10 と同様である。 インターフェイス仕様が公開されており、手頃なサイズ、軽量等、研究用ロボッ トアームとして極めて良好な特徴を持っていることから、PA-10を人間類似ロ ボットの上肢として用いるロボットシステムが多い。 しかし、PA-10型アームを上肢のように設置した場合、アームの先端回転軸の方向は、人間と90度ずれている。

さて、人間の良く行う手作業においては、前腕と手先が一直線上に並ぶ状況は 極めて頻繁に起こる。そしてこの姿勢は、PA-10型アームでは、特 異姿勢なのである。結果として、冗長自由度の有効利用は難しい。一方人 間の上肢はそのような姿勢において冗長自由度の有効利用が可能であり、様々な作業を行うことができる。ここにおいて、人間の上肢の作 業能力とスレーブアームの作業能力に大きな差が出来てしまい、真のテレイグ ジスタンスを実現できなかったのは失敗であった。

人間型ロボットの上肢として、PA-10型ロボットアームを利用しようと考えている研究者には、関節角配置の 違いを十分考慮して、システムを構築していただきたい。また、 PA-10を開発された三菱重工には、PA-10の先端回転軸の方向を変更する付属品の開発をお 願いしたい。

TELESAR設計時のもう一つの失敗は、経費を惜しんで、モーターにゼロ点を付 けていなかったことである。通常のテレイグジスタンス方式による制御の場合、 ゼロ点が無くても、ほとんど問題なく作業ができた。しかし、拡張現実感技術により、 アームのCG画像を実画像と重ねて表示したり、或いは不可視環境下でVR環境画像を表 示してロボット制御を行ったりする場合、多大な労力を伴うキャリブレーションにより 関節角のオフセットを推定する必要があった。電源が落ちたり、アームが何かにぶつかっ たりした時、モーターのオフセット値は変化してしまい、キャリブレーション のやり直しを繰り替えすことになった。 より高度の制御を行うためには、 モーターのゼロ点は絶対に不可欠と断 言できる。


Eimei Oyama 2001-11-10