フィンランド出張報告: 2003.03.21

by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST

フィンランド出張報告2003

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写真・文:宮城磯治 (産総研・国際部門・国際地質協力室)※
出張者:笹田政克&宮城磯治
作成日:平成15年4月22日(火)
修正日:平成16年6月16日(水)
デザイン変更:2008年2月4日月曜日


※産業技術総合研究所→活断層・火山研究部門→マグマ活動研究グループ:主任研究員

5日目 STUK を訪問


目次

概要

3月21日 金

AM/PM STUK見学

  • site investigations
  • safety demands

得られた資料

  • Annual report 1999, by STUK Radiation and Nuclear Safety Authority, 2000, -.
    ※ STUKの年次報告書.33ページ.英語.
  • Annual report 2000/ Radiation monitoring takes to the air. by STUK, 2001, -.
    ※ STUKの年次報告書.32ページ.英語.
  • STUK のwebページは [1]こちら.
    ※ 英語.
  • IMGS 2002 Report/ The geological and structural charcterization of the Olkiluoto site in a critical perspective, by John Cosgrove et al., 2003, STUK-YTO-TR 196 Feb. 2003.
    ※ IMGSとは「Investigations and Modelling of Geological Structures」の意味.英語.19ページ.
  • Regulatory research and development (R&D) in nuclear waste management, by Esko Eloranta, 2003, -.
    ※ Eloranta氏によるプレゼンテーションのハンドアウト. 21画面.英語.
  • Regulatory framework for radioactive waste management. by Kai Jakobsson, 2003, -.
    ※ Jakobsson氏によるプレゼンテーションのハンドアウト. 15画面.英語.
  • Summary: Posiva 2000-15 technical report. by Kai Jakobsson, 2003, -.
    ※ Jakobsson氏によるプレゼンテーションのハンドアウト. 7画面,英語.
  • Mission: Radiation safety. by STUK, -, -.
    ※ STUKのパンフレット.A4で3枚分,両面,観音開き.英語.
  • Natural Uranium fluxes and their use in repository safety assessment. by David Read, Karl-Heinz Hellmuth, Juha Kaija, Lasse Ahonen, -, -.
    ※ 出典不明の別刷.英文.12ページ.
  • IAEA coordinated research project (CRP)/ The use of selected safety indicators (concentrations, fluxes) in the assessment of radioactive waste disposal/ Report 1/ Geochemical cycles; the dispersion and concentration of elements in the earth's crust - global, regional and local scale. by Petr Vagnav with two appendices by Karl-Heinz Hellmuth, 2002, GTK Report YST-106.
    ※ 169ページ.英文.
  • IAEA coordinated research project (CRP)/ The use of selected safety indicators (concentrations, fluxes) in the assessment of radioactive waste disposal/ Report 2/ Dispersion halos and fluxes of chemical elements in permafrost and periglacial regions. by Petr Vagnav, 2002, GTK Report YST-107.
    ※ 54ページ.英文.
  • IAEA coordinated research project (CRP)/ The use of selected safety indicators (concentrations, fluxes) in the assessment of radioactive waste disposal/ Report 3/ Geohydraulic and geochemical basis of geochemical fluxes from deep groundwaters observed at earth's surface. by Daniel Traber with an appendix by Pertti Lahermo, 2002, GTK Report YST-108.
    ※ 93ページ.英文.
  • Focused modelling of bedrock fracture zones in Olkiluoto, by Jarkko Jokinen and Kai Jakobsson, 2002, GTK Report YST-111.
    ※ 24ページ,英語.GTKでもらったものと同じ.
  • Chernobyl and Finland. by STUK, 1987, -, -.
    ※ チェルノブイリ原発事故の解説や, 食生活上の注意などが書かれている.英語.16ページ.
  • Chernobyl ja Suomi. by STUK, 1987, -, -.
    ※ 上と同じ内容.フィンランド語.16ページ.

STUKまで

8:50 GTKのPaavoとEeroが迎えにきてくれた.Paavo曰く,今日は忙しいのでSTUKからホテルまで送ってあげられないが,メトロがあるから君達だけでもヘルシンキに戻れる.連日,GTK職員にはお世話になりっぱなしである(感謝).今日は昼と夜の長さが同じになる日.

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9:20 STUKに着く.

左:STUK外観.右:玄関.

STUKはSa:teilyturavakeskusの略である.sa:teilyが放射線,turavaがsafety,keskusがcenterの意味なので,直訳は放射線安全センターになるが,オフィシャルな英訳はRadiation and Nuclear Safety Authorityである.

到着後,Kai Jakobssonがむかえてくれた.早速会議室に入る.机を時計まわりにOHP, Eloranta, Heinonen, Jakobsson, Sasada, Miyagiの順にすわる.会議机の中央にはクッキーとパンケーキが用意してある.各自の席前には,下からパンケーキ皿,コーヒー皿とスプーンとナプキン,コーヒーカップを重ねたセットが,用意してある.どの研究所を訪問しても同様だった.また,どの研究所でも「フィンランドじゃコーヒーを飲まなきゃ始まらない」というようなことを言いながら,彼らはコーヒーを勧めた.そこで,フィンランドでは毎朝仕事をする前にこういうふうにパンケーキとコーヒーを飲んでスタートするのが日常習慣かと聞いた.Jakobsson曰く,そうありたいものだ!がパンケーキはゲストが来たときだけの習慣とのこと.

9:30 笹田氏の自己紹介が延びたかたちで,GSJの立場をごく簡単に紹介.

STUKの紹介

9:40 Kai Jakobsson氏が,STUKの政治的立場を紹介.政府は,Posiva(=TVO+Fortan)に対してライセンスを与える.通産省はPosivaを規制する.STUKは研究機関(Posiva, GTK, VTT, Universities)を監督する.STUKは独立した立場の行政法人であり,STUKがオーソリティーで,VTTはその論拠を生産するのが仕事とのこと.//LovisaとOlkiluoto発電所について.Lovisaはソ連の技術でできたが,大幅に手をくわえられ,ソ連オリジナルは30%程度しか残っていない.一方Olkiluotoはスエーデン製の技術である.//規制法律の階層について.「政府のgeneral」が最高位にあり,その下にYVL8.4(長期安全の法律)とYVL8.5(操業安全に関する法律)がぶらさがっている.//1983→2020のタイムテーブルについて.1999から2001年にかけて大きな変化があった(候補地が決定したことに関係している).

廃棄物のマネージメント

9:58 Esko H. Eloranta氏が,放射性廃棄物マネージメントの規制研究開発に関する話題を提供.JYT(Program. on Nuc. Wast. Management)の経緯.1989→93年がJYTで,1994→96がJYT2で,1997→2001がJYT2001で,2002→2005がKYTである.JYTの特徴は「中立性」である.JYT2001の研究分担と構成,そして主要な成果に関する説明があった.KYTの予算規模は1ミリオンユーロ/年で,マルチファンディングであることが特徴(KYT以前は予算は通産省とSTUKの2つから出ていた).KYTはstrategic studiesをしており,研究対象は,fundamental options, general safety principles, そしてcostsに関するものである.KYTの「長期安全」に関する研究分野は5つ(放出過程,地下水,母岩,hogehoge)ある.それらから派生するプロジェクトを,VTT-processが4つ,VTT-building&transportが2つ,VTT-industrialSystemが1つ,GTKが3つ,Helsinki Univが6つ,helsinki Univ of Techが4つ,遂行中である.KYTはそのほか国際的な研究もおこなっている.STUKのレビュー下にある,Posiva社が行なっている研究もある.QレビュワーはPosiva内にもいるのか(答えは,いない.海外のレビュワーが含まれているが).Q中立性について.KVTは中立とのことだが,JYTなにがしも中立なのか(答えは,そうだ.JYTなにがしは,通産省とSTUKの予算だったが,KYTはもっと多くの組織が予算を拠出している).

処分地決定の経緯

10:35 Kai Jakobsson氏が,処分地決定の経緯を説明.説明内容は,他機関で聞いたものとほぼ同じだが,差分は,処分地決定作業の過程で(フィンランドが)学んだことを,Jakobsson氏個人の意見として,示してくれたこと.それらは以下のとおり.ボーリング穴を掘った後は,埋ずに後々のモニターのためにどう使うか議論すべきであること.処分地の地質学的モデルは複数つくるべきであること.水文学&微小地震のモニタリングはなるべく早期に開始すべきであること.地質環境以外にも,処分地選定には重要なファクターがあること(インフラ,廃棄物の原発からの運搬手段,住民の受入希望).QC(品質管理?)とdocumentation(情報公開?)を十分かつ慎重におこなうべきであること.国際的なレビューはとても有益だったこと,,.などであった.Q いつオルキルオトが処分候補地に選ばれたのか.当初の300候補地には含まれていなかった(答えは,1.もともとOlkiluotoとLovisaは,低レベル放射性廃棄物の処分地としてサイトの地質学的検証が行なわれていた.2.その時点ではOlkiluotoは高レベル放射性廃棄物の処分地としてはあまり良好とは思えなかった.3.しかしその後の公募でOlkiluotoは受入希望をだしてきた.4.地質調査がすすむにつれolkiluotoの地質環境はそう悪くないということがわかってきた).

日本の説明

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笹田氏によるプレゼン

11:00 笹田氏が話題提供.内容を列挙すると,AIST内のセンターや部門など組織,AIST全体の研究対象,AISTの研究員と分野,AISTの予算の紹介.深部地質環境研究センターと活断層研究センターの紹介.日本の発電内訳,核燃サイクルの紹介.処分場のコンセプト,処分事業の分担(NUMO,METI),処分地選びのステップを紹介.GSJ,NUMO,METIの関係.深部地質環境研究センターの研究紹介(長期安定性評価;処分場のパフォーマンスアセスメント).Q日本の長いトンネルはどうなった(答えは,それは青函トンネルだと思う.完成済み.海の下をほったのに,工事の途中真水が出た.海岸地域は処分場の候補のひとつであり,地下水の流動という意味で興味深い).

オルキルオト処分場

11:32 Jakobbsson氏が,オルキルオト処分場について説明.オルキルオトの詳細な地図,ボーリングは23本,その多くは1000m級.処分施設を3Dでみせて,破砕帯との位置関係を示した.Boreholeデータの解釈に幅をもたせる努力をしている.モデルは複数検討している.3Dモデル「3D-rock」は独自のデータ(コア解釈)を使用.Parallelなモデル(?)はポシバ社のコアデータベースを使用.Alternativeなモデルとして,GTKと共同のものがある.Rapidなモデル(逐次データをとりいれて更新してゆく)もある.さらに,放射性廃棄物を搬入するためのトンネルを掘る際にも,トンネル壁の解析結果をモデルに反映させてゆく予定.Q VTTの水文モデルを検証するためのAlternativeモデルをつくっているのか(答えは,基本的には外部の専門家を利用して対処している.STUKはストラテジーコンセプトから個別研究という大きな階層幅で仕事をしているが,情報源がひとつしかないものは,検証の独立性が減ってしまうのが問題だ).

昼食

STUKの食堂で昼食.実験室の周囲と,図書室もみせてもらう.図書室をざっと見たところ,放射性廃棄物の地層処分がらみの研究は,STUKの研究全体のごく一部を占めるにすぎないことがよくわかった.たとえば,携帯電話の電波が脳にあたえる影響なども,STUKが扱う研究対象である.

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左:STUKの換気施設.ラドンなど放射性の気体を想定.右:その換気施設の下にある実験室.

安全性関連研究

13:17 Karl-Heinz Hellmuth氏が,Safety Indications Projectに関する研究を紹介.これはIAEA(International Atomic Energy Agency)の仕事として,行なわれた.Safetyに関連する色々な研究分野のうちの,Post Closure問題の,さらに細分された問題が,この話題である.Peatは還元的なので,放射性物質(ウラニウム)を効率的にためこむ.氷河の出口のPeat BogのU濃度を測定.Palamatu地区の水文学&放射性物質の研究(GTKのJuha Kaijaの研究を紹介).二次的なウラン鉱床がさらにとこだして,Peat Bogにつかまるので,それを検出した.オルキルオトの場合の予想値.そのほかSafetyに関するものとしては,フィンランドではラドンの問題がある.花崗岩がおおいので,地下水には多量のラドンがとけこんでいる.この水をシャワーに使うと,シャワー室の空気にラドンが放出され,大量のラドンを吸入することになるのだそうである.

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14:20 終了.

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我々のSTUK訪問に対応してくれた方々と記念撮影.左から,笹田氏,Jakobsson氏, Eloranta氏, Hellmuth氏, Heinonen氏.

帰路

Jakobssonが車でメトロの駅までおくってくれた.

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メトロにのってヘルシンキにむかう.16:30 ごろ,ホテルに到着.

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