アレイ形状と解析内容

BIDOが想定するアレイ形状

BIDOのアレイ解析理論は円形アレイ(円周上にすきまなくセンサーを配置する)を地面に設置する仮定を基礎としていますが、では実際には円周上に何個のセンサーを配置すれば良いか、また中心点にセンサーを配置するかなどが問題となります.結論を述べると、BIDOは円周上に0、1、2、3、5個のセンサーを配置するアレイを想定しています.中心点にもセンサーを配置すると最大6個のセンサーを用いたアレイとなります.アレイのジオメトリや記録の成分によって解析できる内容が異なります.

以下に、アレイジオメトリ・記録成分と解析内容との対応を示します. 表には解析内容あるいは解析法の名称が書き込んであります.

アレイ形状

(黒丸は地震計)

スライド1

スライド2

スライド3

スライド4

スライド5

スライド6

スライド7

地震計(総数)

中心

円周

5

鉛直動のみ

位相速度解析

(レーリー波)

なし

SPAC

SPAC

H0

CCA

SPAC

CCA

nc-CCA

H0,H1,V

CCA

SPAC

CCA

nc-CCA

H0,H1,V

位相速度解析

(ラブ波)

なし

なし

なし

なし

なし

なし

なし

その他

PSD

PSD

PSD

PSD

PSD

NSR(V)

PSD

PSD

NSR(V)

水平動のみ

位相速度解析

(レーリー波)

なし

なし

なし

CCA-R

 

CCA-R

SPAC-R

SPAC+R

CCA-R

 

CCA-R

SPAC-R

SPAC+R

位相速度解析

(ラブ波)

なし

なし

なし

CCA-L

CCA- L

SPAC-L

SPAC+L

CCA-L

CCA-L

SPAC-L

SPAC+L

その他

PSD

PSD

PSD

PSD

PSD

NSR(H)

PSD

PSD

NSR(H)

3成分

位相速度解析

(レーリー波)

なし

SPAC

 

SPAC

H0

CCA

CCA-R

SPAC

CCA

nc-CCA

H0,H1,V

CCA-R

SPAC-R

SPAC+R

CCA

CCA-R

 

SPAC

CCA

nc-CCA

H0,H1,V CCA-R

SPAC-R

SPAC+R

位相速度解析

(ラブ波)

なし

なし

なし

CCA-L

CCA- L

SPAC-L

SPAC+L

CCA-L

CCA-L

SPAC-L

SPAC+L

その他

PSD

H/V

PSD

H/V

PSD

H/V

PSD

H/V

PSD

H/V R/V,R/L

NSR(V)

NSR(H)

PSD

H/V

PSD

H/V

R/V,R/L

NSR(V)

NSR(H)

(脚注)

SPAC 空間自己相関法(一般には水平動にも適用可だがここでは「鉛直動からレーリー波の位相速度を解析する手法」とした)

CCA   鉛直動からレーリー波の位相速度を解析する手法(引用文献[1、3]

H0,H1,V, nc-CCA 鉛直動からレーリー波の位相速度を解析する手法(引用文献[4]

CCA-R, SPAC-R, SPAC+R 水平動からレーリー波の位相速度を解析する手法(引用文献[5]

CCA-L, SPAC-L, SPAC+L 水平動からラブ波の位相速度を解析する手法(引用文献[5]

・PSD パワースペクトル密度

・H/V H/Vスペクトル(水平動のパワーと鉛直動のパワー比)

・NSR(V) 鉛直成分のNS比(引用文献[3]

・NSR(H) 水平成分のNS比(引用文献[8]

R/V レーリー波の水平動と鉛直動の振幅比(※パワー比ではありません)(引用文献[2]

R/L レーリー波とラブ波のパワー比(引用文献[5、7]

 

上の表の通り、BIDOはアレイデータのみでなく単点観測データや2点による線状アレイ3点によるL型アレイで得られるデータの解析にも対応しています(なお複数の地震計を同一地点に配置してのハドルテストにも対応しています).開発当初は円形アレイデータの解析を想定していましたが、実際の観測現場(特に市街地)では設置が容易なように簡単なアレイ形状が望まれますし、上下動の解析では線状アレイやL型アレイも適用できるケースが多々あることが分かってきているので、後になってBIDOにも取り入れることにしました.なお表の左から3、4列目はどちらも地震計3個で構成されるアレイですが、1つを円形アレイの中心点に配置されているとみなすか、すべて円周上に配置されているとみなすかによって適用できる手法が異なることになります.

しかし、円周上のセンサー数が多いほど精度が高く、安定した解析結果が得られることは言うまでもありません.小アレイ(半径10m以下)の場合はできるだけ表の最右端に示されるような6点アレイを設置することを推奨します.特に半径1m前後の極小アレイ(扉ページの写真参照)では6点アレイは高精度というだけでなく効率の点でも有効と期待されます(「手法の有効利用のための1アプローチ」参照).

 

水平動のアレイ解析に関する注意

水平動のアレイ解析は現段階では基礎研究のレベルです.円周上に5個、中心に1個を配置したアレイでラブ波等を解析できることは分かっていますが(引用文献[5、7])、円周上に3個のセンサーを配置したアレイではどの程度解析結果を信頼できるかは明らかにされていませんBIDOは円周上に3個のセンサーを配置したアレイであっても水平動を解析できる仕様にしていますが、主に開発者向けであり、解析結果の解釈には相当に慎重を期する必要があります.また円周上に5個のセンサーを配置した場合であってもSN比が低い(ノイズが大きい)場合、解析結果の信頼性がかなり下がるので注意が必要です.残念ながら、現在のところ水平動についてはSN比の推定値から解析結果の信頼性を評価する理論的根拠は確立されていません.

 

「円形」アレイからの逸脱について

円周上に3個以上のセンサーを配置する円形アレイでは、円周上の点は必ずしも等間隔である必要はありませんが(引用文献[2])、精度を保つためにはできるだけ等間隔のアレイを展開したいところです.円周上に配置されていない点(半径方向の誤差)については補正理論がないので、ディフォルトで5%(プログラムの再コンパイルにより変更可)までの誤差を許容して円周上にあるとみなすことにしています.

 

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