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【 酸窒化アルミニウムの粒子や、原料粉体の新規供給ルートの高いニーズ 】

1.酸窒化アルミニウム“AlON”とは (材料の概要、メリット)

敢えて短く言えば、どちらかというと特許(日本の)が主体で、特に(1)は、「(フィラー等のための)改質」、又は、「焼結体用原料粉体」、は多いのですが、AlN“フィラー”そのものの第三(直接窒化及び還元窒化に続く)の工業プロセス作りとして、学術的に検証(認知?)された画期的な方法が未だ無く、試行錯誤状態と考えております(例えば、セラミックス ,36,No.4,236,2001でも同様の趣旨が言及されている)。それ故に、今の我々の仕事が存在する、と判断しています。

まず、材料の概要から。窒化アルミニウムAlN及び酸化アルミニウムAl2O3の偽多形(AlN-Al2O3 pseudo binary system)酸窒化アルミニウムAlON(特に,立方晶スピネル型が重要。Al(64+x)/3□(8−x)/3O32−xNx、但し□は陽イオン空孔)は、等方性の立方晶構造から成り、粒界散乱の無い優れた透光性を示します。可視及び赤外線波長での透光性に優れ、同時に耐熱性・耐磨耗性も高い材料が発光管用材料、高温用窓材料、スペースシャトルなど真空雰囲気下での高強度窓材料等として求められています。係る材料の一つとして透光性アルミナAl2O3焼結体は、高圧ナトリウム発光管に広く実用化されておりますが、アルミナは異方性を持つ六方晶構造を有し、結晶粒界での複屈折に因る光散乱が避けられない(複屈折については、下記参照)。そこで結晶粒子径の粗大化に因る散乱低減が図られていますが、強度低下が不可避の問題となっている。AlONはこの問題を解決する材料として期待されています。

また、高耐熱衝撃性或いは溶鋼に対する低濡れ性、更に非Si系である事から耐溶融セラミックスとしても有望視されている。 耐火物など耐溶融セラミックスは、溶鋼との低活性、高温安定性や耐酸化性、溶鋼流動に因る損耗が低い事(高温機械的強度)が重要である。サイアロンSiAlONが良好とされているが、高温でのSiとFeの親和性から耐溶融セラミックスに不適との見解も示されていた。AlONはこの問題を解決する材料として期待されています。

AlONは凡そ13個の多系が存在する事が報告され、1960年頃日本で発見されました。Al2O3等に比べると比較的歴史の浅い材料系で、製造方法自体、未だ、必ずしも最適化されたものとは考え難い。又、それ故に馴染みも少なく、勉強するのに苦労しました。下記が、AlON論文で先ず、引用される教科書的文献です。

Normand D.Corbin,Aluminum Oxynitride Spinel: A Review,Journal of the European Ceramic Society,Vol.5、p.143、1989

Jason Shin,Do−Hwan Ahn,Mee−Shik Shin and Yong−Seog Kim,Self−propagating High Temperature Synthesis of Aluminum Nitride under Lower Nitrogen Pressures,Journal of the American Ceramic Society,Vol.83、p.1021、2000

J. W. McCauley and N. D. Corbin ,Journal of the American Ceramic Society,Vol.62、p.476、1979

東北大・平井先生、AlN基セラミックスと其の気相合成、日本金属学会会報(まてりあ)、30、913(1991)

2.原料製造方法の現状

AlON粉体の製造方法は、窒化アルミニウムAlNと同様の金属Al粉の直接窒化法や、Al2O3と黒鉛の還元窒化法の他、Al2O3とAlNの混合物を窒素雰囲気中で高温焼成する方法、又近年では低圧雰囲気下アークプラズマに拠る気相合成法も報告されている。この内、Al2O3―AlN混合物の高温焼成法は、多くの多系を持つAlONの組成制御が比較的容易との利点を有し、製造法として一般的である(例えば、平井伸治、村上英明、片山博、上村揚一郎、三友護"アルミナと窒化アルミニウムからの酸窒化アルミニウムスピネルの生成"、日本金属学会誌、Vol.58、p.648、1994)。

しかしAl2O3―AlN高温焼成法は、固―固反応であり、高温で長時間の熱処理が必須で、実際の焼成温度が2000℃以上に及ぶ場合も報告されている。このような焼成条件下で生成された粉体は粗大化し、その後の粉砕も容易ではない。従って、高強度焼結体を製造するための易焼結性原料粉体の供給ルートとして、十分に満足した特性を発揮できていないとの問題点があった。更に長時間熱処理と粉砕は、純度の点でも問題である。

一方、金属Alの高活性に拠る発熱反応を利用して直接窒化法は、所謂燃焼合成法(Self−propagating High Temperature Synthesis又はCombustion Synthesis)としては100年程前から検討されてきた。これはプロセスが単純で、コスト的には最も有利とされるが、生成粉体の粒成長が起こり易いのが一般的である。しかも、現状の"常圧"下での直接窒化プロセスでは、窒素雰囲気中1000〜1500℃程度のAl融点以上の熱処理が必要とされる。即ち、既往の直接窒化製造方法によると、(1)激しい発熱反応;(2)Al融点以上の熱処理、により、生成粉体が固く凝集(融着)した状態となっていた。従ってこの方法でも生成物の粗大化と低純度の問題が解決されない(例えば、Normand D.Corbin,Aluminum Oxynitride Spinel: A Review,Journal of the European Ceramic Society,Vol.5、p.143、1989;又はJason Shin,Do−Hwan Ahn,Mee−Shik Shin and Yong−Seog Kim,Self−propagating High Temperature Synthesis of Aluminum Nitride under Lower Nitrogen Pressures,Journal of the American Ceramic Society,Vol.83、p.1021、2000)。

AlONは通常不安定で、上記の非化学量論的な構造を持つのが一般的である。化学量論組成のスピネルAlONは現在までのところ、アークイメージ炉による溶解法でのみ製造されている(桑野義博、平井敏雄、AlN基セラミックスとその気相合成、日本金属学会会報、Vol.30、p.913、1991)。プラズマアーク溶融法は、微細且つ高純度な粉体製造が可能という、気相(エアロゾル)合成の利点を有し、更に反応雰囲気調整に拠る量論組成の微細制御の可能性を持つ点で、今後の発展が期待される(例えば、Hiroyuki Fukuyama,Wataru Nakao,Masahiro Susa and Kazuhiro Nagata,New Synthetic Method of Forming Aluminum Oxynitride by Plasma Arc Melting,Journal of the American Ceramic Society,Vol.82、p.1381、1999;又は特開平11−268910公報)。しかし、この方法は減圧気相プロセスで、減圧(真空)化設備を必須とする製造コストの問題がある。其れに付随して、工業的プロセスとした場合(例えばスケールアップ化)、上記の高特性を保持出来るか未知、との問題点が指摘される。更にこの手法は、蒸発―凝縮反応を駆動原理とする事から必然的に、ナノメーターレベル(大きくても数10ナノメーター)の粉体合成は可能であるが、其れが本発明で対象とする技術分野の材料系に必ずしも好適なわけではない。一般に上記のような所謂"超微粒子"は捕集や分散、成形などの粉体工学的取り扱いが難しく、易凝集性粉体で、焼結体用原料粉体としては余り用いられない(むしろ粘稠剤用フィラーとして利用されている)。即ち、焼結体原料粉体供給プロセスとしては、平均粒子径が数10ナノメーター〜サブミクロンレベルから、ミクロン程度の粉体を制御性良く合成可能なことが求められるが、Building Up法であるプラズマアーク溶融法は、其のために長時間を要したり、前駆体の高濃度化が必要となって生成物の制御性が低下する恐れがある(しかも、減圧気相プロセスであるため、前駆体・高濃度化の融通性は比較的小さい)。

難合成系で優位性を発揮し得る気相法では、その他Alの低沸点前駆体のCVD気相合成法(例えば、B.Aspar,B.Armas,C.Combescure and D.Thenegal,Organometallic Chemical Vapour Deposition IntheAl−O−N System,Journal of the European Ceramic Society,Vol.8、p.251、1991)も検討されているが、同様の問題点を有する。 またAlONは、1960年頃日本で発見された。Al2O3等に比べると比較的歴史の浅い材料系で、製造方法自体、未だ、必ずしも最適化されたものとは考え難い。

即ち、既往の酸窒化アルミニウムAlON粉体の主な三つの製造方法によると、

(1)Al2O3―AlN高温焼成法では粗大粒子径と低純度が不可;

(2)Al直接窒化法でも粗大粒子径と低純度が不可;

(3)プラズマアーク溶融法等の気相合成法は所望の粒子径範囲と減圧気相プロセスで難点、

となり、高焼結性に必要な粒子径を満たす粉体も、其れを生産性・経済性良く製造する方法・装置の何れも、現時点では得られていなかった。

調査は、特許庁のフロントページ検索、TACCのInspec、JICSTやSTN、J.Am.Ceram.Soc.検索Siteで、「酸窒化アルミ」「粉」「フィラー」「シリカ」「封止材」「噴霧」「アルミニウム」「火炎」等など...(及び各々の英語単語)のワードで行いました。
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