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【 窒化アルミニウムの粒子やフィラーの製法や評価法(H13.6.4読者ご質問に応えて)】

質問を頂きました。甚だ浅薄な知見ながら、自分の整理のためにも、又、現在作成中の特許・論文の緒言作りのためにも、記載してみます。全てご存知の内容ばかりかと想像しますが、一つでもなにか発見があれば嬉しいです。

  1. 放熱性向上を目的にしたフィラー応用のための新粒子の製造
  2. 粒子は既往のものを用いながら、粉体充填方法など周辺技術の工夫で、目的を達成しようというもの
  3. 粒子も充填技術も既往の方法で、評価研究的に明確化・系統化しようとする仕事

敢えて短く言えば、どちらかというと特許(日本の)が主体で、特に(1)は、「(フィラー等のための)改質」、又は、「焼結体用原料粉体」、は多いのですが、AlN“フィラー”そのものの第三(直接窒化及び還元窒化に続く)の工業プロセス作りとして、学術的に検証(認知?)された画期的な方法が未だ無く、試行錯誤状態と考えております(例えば、セラミックス ,36,No.4,236,2001でも同様の趣旨が言及されている)。そのため、今の我々の仕事が存在する、と判断しています。

以下、「フィラー」以外に焼結体用原料粉体(基板材料が主)用途も若干含まれていますが、粉体工学的切り口で観た場合仕分けにくい側面もあり、又、元々、絶対数がフィラーに比べ圧倒的に多いように思いますので、其れが出てきたらご寛恕ください。

調査は、特許庁のフロントページ検索、TACCのInspec、JICSTやSTN、J.Am.Ceram.Soc.検索Siteで、「窒化アルミ」「フィラー」「シリカ」「封止材」「噴霧」「アルミニウム」「火炎」等など...(及び各々の英語単語)のワードで行いました。

5-1.粒子合成

5-1-1.東洋アルミニウム

「大粒径化」J.Ceram.Soc.Jpn.,105,6,1997、特開平9-71474、7-215707公報、特開昭62-17161、62-278202:この辺は既に特許化?

直接窒化を駆動原理にし、燃焼反応合成と湿式解砕と分級に拠る(所謂、現行の工業的プロセス?) Max1000℃程度で良い点が 魅力か(その他、直接窒化は宇部興産や電気化学工業等も有名)。

「AlN表面改質(TEOS加水分解)」特開平9-183610公報

「AlN表面改質(燐系被膜)」特開平7-33415,9-31356,10-120407公報、高温状態下でも安定として(剥がれ難い)此れを主張

「AlN表面改質(SiC被覆)」特開平10-273306公報、東洋アルミ鰍フ直接窒化プロセス

5-1-2.Dow Chemical

「落下式気相プロセス・直接窒化(但しアニール併用)、SiO2被覆」J.Am.Ceram.Soc.,77,3,1994、米国Pat.4983553、3307908、5649278; 既往の直接窒化・還元窒化に無い、非バッチ式の連続(工業的)プロセスとして注目されるも、一回のパスで完全に反応を起こす事が難しく、先行技術と同じく再度熱処理(しかも結構高温)しなければならないという、何のために…と思わず突っ込んでしまった方法。撤退の決断も奈辺にありや…

5-1-3.新潟大学・堀田教授 + 昭和アルミニウム(共同研究、共同特許出願)

「浮上式気相プロセス・直接窒化」J.Ceram.Soc.Jpn.,83,491,1975(26年も検討されている)、J.Ceram.Soc.Jpn.,96,731,1988、特開昭63-195102、63-277503、J.Ceram.Soc.Jpn.,102,1032,1994、特開平1-141811、特開平3-103314(他多数)、材料化学,37,59,2000、Dow Chemical法と同様の効果が期待される。が、基本的にサブミクロン粉体の製法で、先行技術代替としてはコスト的に苦しい。何故大きい粒子が出来ないか考察すると、浮上式という点に鍵がありそう。恐らく未反応の粗大Alは落下して、粉体供給槽に帰っているのではないか?即ち、表面から核生成した分のみが粒子となって捕集され、「残りカス」が溜まっている。この点は、ウィスカー状AlNが作られている事からも推察される。結果として、対・投入粉体量の収率に疑問が残る方法と愚考する。

5-1-4.トクヤマ

「還元窒化」.Ceram.Soc.Jpn.,93,517,1985(所謂有名なトクヤマ透光性AlNの発表、以来16年も検討されている)、特開平6-191807、10-245207、米国Pat.4618592、吸熱反応であるための温度制御の容易さ、粉砕工程の不要の二点で、安定性(再現性)の高い工業的長所の高い方法。商品名「シェイパル」の製造設備を現行240t/年→480t/年(2001年)と発表。只、其れ故に、「フィラーサイズ」を作るには、長時間・高温・前駆体高濃度化など所謂常套手段しかなく、不向きで、結局難しいかも(勿論、其れが要るのか如何かという議論は別にして)。

5-1-5.三井化学 (前の三井東圧化学、Gr.内合併)

「Triethylaluminium (C2H5)3Al のNH3系MOCVDで非晶質AlN前駆体合成+1500℃前後でアニール」特開平10-60158、3-137009、5-170409、7-33412など多数、(1)還元窒化、(2)直接窒化、(3)気相法、と、論文緒言等で数えられる事が多いと判断される、其の第三方法の一種(この点で、言及しないわけにはいかない)。其の、国内で唯一、工業的に生産しているところではないか、と推察。易昇華性の有機(MO)原料を用いる。

5-1-6.横浜国立大学・米屋勝利教授

主に焼結体用原料粉体、其の点で「やはり」還元窒化の検討が多い模様。最新号:J.Ceram.Soc.Jpn.,109,372,2001など?

5-1-7.東芝セラミックス(など)

「SiO2表面改質(AlNで)」特開平5-247181、5-117543、8-291232、Dowさんと同じく、SiO2は多い被覆パターン。此処も、シェル状AlN焼結体原料粉体(特開昭61-205606)など、AlN系の検討数の多い会社です。

5-1-8.INAX(など)

「ポリアミド被覆AlN」粉体工学会誌、29、831、1992、特開平3-5311、その他カップリング剤など、高分子被覆も非常に多く検討されている。但し、東洋アルミの指摘でもあるように、耐性の点で難点も。

5-1-9.古河電気工業、古河機械金属

「高分子被膜」特開昭62-207770、99年の新聞記事で焼結体用AlN生産規模拡大も報道されている

5-1-10.Washington Univ. in St. Louis, Axelbaum教授

「NaCl被覆AlN」米国Pat.5498446, http://mesun4.wustl.edu/ME/apsl/home.html所謂AlCl3の気相CVDなのだが、Naサーバーを併用して塩で包んでしまおうというもの。ごく低温で昇華させても良し。発想が興味深い。只、AlNが現状で考えられている電子デバイス応用では「Cl」というだけならまだしも、「Na」が出てくると、基板との易反応性で敬遠されるかも(某D社次長さん談)。こういうのもあるし、この大学へ行ってきたいのですが

5-1-11.所謂PVDプロセス、減圧中アークプラズマでAl塊を溶融-蒸発-結晶化、超微粒子合成

(独)物質・材料研究機構:大野悟氏J.Ceram.Soc.Jpn.,95,76,1987や東北大学・金属材料研究所所長・井上明久先生、特開平7-163866。所謂、ダンベル状とか、サイコロ状粒子〜等として学会誌うを賑わす事の多かった手法。超微粒子合成の一種。井上先生と言えば、最近は日経の記事で、教授を含め全ポストに10年の任期制を導入した所長として、「其の筋」で名前が出てきましたが、元々はこういうお仕事で知っていました。

5-1-12.所謂ハロゲン系のCVDプロセス、AlCl3-NH3系

東大・小宮山宏教授、化学工学論文集、18、622、1992AlN超微粒子を作る場合に非常に多く見られる手法。小宮山研は反応機構を詳細に検討。CVDの第一人者と拝察。先生はその他「サバイバル英会話」等、研究者の指導的役割でも化工・粉体工学などで活躍中

5−2.粉体操作

5-2-1.電気化学工業

「SiO2に混ぜる添加剤として」特開平10-287767常套手段、且つAlNのフィラーとしての現行の工業的利用方法。逆にいえば、フィラーサイズ球状AlN粒子が「無い」から、単独で使えない

「粒子径及び粒子径分布の適正化」特開平7-330315電気化学工業の溶融プロセス

5-2-2.東芝

「AlONを混ぜる(化学的耐性の活用)」特開平7-183420酸素過剰に拠る低熱伝導層たるAlONを積極的に活用

5−3。評価、標準化

5-3-1.東洋アルミ

「シリカとの熱伝導性比較」J.Ceram.Soc.Jpn.,105,6,1997旧来の固形型樹脂に練り込んでフラッシュ法で測定

「表面性状評価」埼玉大学共同研究、粉体工学会誌、29、682、1992

5-3-2.神戸大学・薄井教授

「非球状粒子充填系の粘性予測モデル」J.Chem.Eng.Jpn, 34,360, 2001フィラー有効体積の増減 (shear-thinning to effective volume fraction of silica flocculation)と言うか、言わばフィラ無し〜低濃度で構築されたレオロジーモデルを基礎とする説群で、Einstein式の拡張式群、Mooney式、日立化成工業・尾形ら、Barnesらの説、神大・薄井教授(高分子レオロジー)、東北大・梅屋教授(セラミックスラリー)、果ては粉体充填模型の話まで、を挙げられるように思います。フィラー相互作用の増減 (flow-induced change in inter-particle interaction)、言わば主に高濃度のフィラ系で構築されたモデルを基礎とする説群(たとえばCal.Tech.のBradyらの説)もあります

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