私の所属する産総研地質研究部門の陸域地質図プロジェクトでは,日本全国の地質図を作成しています.
大地は植生や人工物に覆われています.従って,野外地質調査では,川沿いや海岸・崖など基盤岩が直接露出しているルートを地道に歩き,露頭データを収集します.そして地形や岩石の向き・傾きを基に,露出している岩石同士を主に種類ごとに繋ぎ合せ,地質図を完成させます. 険しい地域の地質調査では,V字谷を泳いで突破したり,残雪期の登攀を行うこともあります.
地層は向きや傾きを持っています.その情報を基に見えない地下構造を推定することができます.
私はこれまで下記の地質図幅作成に携わりました.
(高橋ほか,2010)
新潟地域では,足尾帯の付加体を,前期~中期ジュラ紀付加体(混在相)と中期~後期ジュラ紀付加体(整然相)の2つに区分しました.
なお,下の1/5万地質図幅「加茂」は,1/20万地質図幅「新潟」に含まれています.
(工藤ほか,2011)
新潟加茂地域は地形が急峻で,白亜紀花崗岩の接触変成作用の影響もあるため,これまで詳細な研究成果はほとんど公表されていませんでした.
本研究では,本地域付加体に対し仙見コンプレックスと命名し,更に緑色岩やチャートに富み,かつ前期ジュラ紀前半の付加年代を示す”
神戸サブコンプレックス”と,砂岩に比較的富み,かつ前期ジュラ紀中頃~後半の付加年代を示す”滝谷サブコンプレックス”とに区分しました.
一連の成果は,内野(2010),内野ほか(2010),内野・堀(2010),内野・堀(2011)に公表されています.
(川村ほか,2013)
早池峰山地域には,北上山地に分布する主要地質帯である南部北上帯,根田茂帯,北部北上帯がすべて分布します.従って,北上山地の 地質スタンダードを理解する上で重要な地域です.
(内野ほか,2017)
三重県志摩半島を対象地域としています.本地域には,北から,三波川帯(白亜紀の三波川結晶片岩類と御荷鉾緑色岩),秩父帯北帯 (前~中期ジュラ紀の付加体),黒瀬川帯(前~後期ジュラ紀の付加体,中期ジュラ紀~前期白亜紀浅海層,蛇紋岩,深成岩,変成岩,古生代浅海層), 秩父帯南帯(中~後期ジュラ紀付加体),四万十帯(後期白亜紀付加体)が分布しています.紀伊半島の地質スタンダートが分布する重要な地域です. 成果の一部はプレスリリースされています.>> 恐竜化石はなぜ鳥羽で見つかったのか?
(工藤ほか,2020)
青森県の下北半島を対象地域としています.主に中新統~更新統からなりますが,半島最北部にジュラ紀付加体が基盤岩として僅かに分布しています.
(内野・小松原,2024)
北上山地では,豪雨や地震等でしばしば土砂崩れを起こしています.盛岡から三陸海岸に至るまでの幹線道路は2本しかなく,土砂崩落等による
道路の分断は地域生活に大きな影響を与えかねません.本図幅は,当地域における地質学的研究の進展のみならず,防災, 土木・建設などの基礎資料として
社会に役立つことが期待されます.
>> 岩手県盛岡東方5万分の1地質図幅「外山」の刊行 ~地質情報研究部門「研究成果」