レーザマニュピレーションを利用した粒子操作、粒子定着技術に関する研究
磁性体のニッケル金属微粒子やプラズマディスプレイパネル用の色素に着目して、光による微粒子のトラッピング、そしてレーザ光の円偏向制御よる回転方向の制御の確認に世界で初めて成功しました。
レーザマニュピレーションを利用した粒子操作、粒子定着技術に関する研究
図1. Experimental Setup for Trapping Particles
光マニピュレーションによる微小磁性粒子の移動制御や配列制御の技術は、光を利用した新しいマイクロナノレベルでの磁性構造作成に有益な手法と期待できます。 物理現象の視覚化が可能であるため、物理現象の深い理解という点からも興味深いと言えますが、これまでのところ、磁性微粒子の光トラッピングについての報告例はありません。 ここでは、磁性体のニッケル金属微粒子に着目し、光による微粒子のトラッピング、そしてレーザ光の円偏向制御よる回転方向の制御の確認に初めて成功したことについて述べていきます。
YAGレーザ(波長1.06µm)を光源として用い、レーザ光はレンズを通して顕微鏡鏡筒内に導かれ、ビームスプリッターで下方に曲げるようにして、顕微鏡対物レンズを通じて、試料中に焦点を結ばせています。ここでは、対物レンズの開口数(NA)は0.25と比較的小さなものを使用しました。入射光は、ビームエキスパンダー等で広げることなく、ガウシアンビームを直接対物レンズに入射させたため、実効的なNAはさらに小さく、0.2以下になっていると考えています。試料の観察にも同じ対物レンズを利用しており、CCDで試料の様子を観察できるようにしました。磁性粒子は、300ミクロン角のメッシュで通る微粒子を用いており、これを油に分散させています。
実験結果を下図に示します。丸で囲んだところに存在する油の中でブラウン運動を行っていたニッケル粒子に対してYAGレーザ光を照射すると、粒子の付近でニッケル粒子を捉えることができました。次にレーザの焦点を図中の下方に移動させると、トラップされたニッケル粒子もレーザ光に追従して同方向に移動し、その他のニッケル粒子は動いていないため、図上方に移動したように見えることが確認できました。さらにレーザ光を左方向にスキャンしてみると、同様にトラップされている粒子だけがレーザ光の方向に追従して移動していることがわかりました。
これにより、レーザによるニッケル微粒子のマニピュレーションが可能であることが証明され、これらの現象は、拡張されたMIE散乱理論を用いた計算により、境界回折波によって生じた力で粒子のトラップができることが説明できました。
Ni Particle Trapping by Laser Irradiation |
次に、レーザ光を円偏光にして、右周り光をニッケル微粒子に近づけると、微粒子は右周りの回転をはじめるため、ここで偏向角の回転方向を逆転させると、ニッケル粒子がそれに応じて回転が逆の方向である左周りに回転することがわかりました。こうして円偏向光照射による回転方向の制御が実現できることが確認できました。
Ni Particle Rotation by Polarized Laser Irradiation |
- レーザによるニッケル微粒子のマニピュレーションが可能であることが証明できた。 → レーザトラッピング油の中でブラウン運動を行っていたNi粒子に対して、YAGレーザ光を照射すると粒子の付近でニッケル粒子が捉えることができた。
- レーザによるニッケル微粒子のマニピュレーションが可能であることが証明できた。 → レーザの焦点を移動させると、トラップされたNi粒子もレーザ光に追従して同方向に移動することが確認できた。 → 拡張されたMIE散乱理論をもちいた計算により、境界回折波の反作用力によって生じた力で粒子のトラップができていると考えられる。
- 円偏向光照射による回転方向の制御が実現できることが確認できた。 → 右周り円偏光をNi微粒子に近づけると微粒子は右周りの回転をはじめ、円偏光の回転方向を逆転させるとNi粒子がそれに応じて回転が逆の方向である左周りに回転することがわかった。(回転周期1〜10 Hz程度)
Adhesion of Fluorescent Materials Using Optical Trapping for PDP |
Optical Emission by Ultraviolet Light Irradiation |