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パラレルテンパリング法

実際に,(8)式のように温度を変えた分布に対して, 交換操作を導入したのが パラレルテンパリング (parallel tempering) 法と呼ばれる手法である. ただし,定常分布を不変に保つために,交換は 単純に行えばいいというわけではなく,適切な確率で行わなければならない. $ x^{(j)}$$ x^{(k)}$ を交換する候補として選んだとしよう. $ j$$ k$ は任意の確率分布によって選んでもよいが, 実際に交換するかどうかは以下の確率で決める.

$\displaystyle \beta(x^{(j)},x^{(k)}) = \frac{p_{T_k}(x^{(j)}) p_{T_j}(x^{(k)})} {p_{T_j}(x^{(j)}) p_{T_k}(x^{(k)})}$ (9)

ただし, $ \beta(x^{(j)},x^{(k)})\ge1$ の場合は必ず交換する. この交換が全体の極限分布を不変に保つことは,全変数の MCMC と見てやれば 容易に確認できる.

(9) 式を見るとわかるように,交換は相手の温度に移ったときに やはり高い確率をとっていないと採択される確率が低いため,通常は 近い温度をもつ変数同士 ($ x^{(k)}$$ x^{(k+1)}$ など) で行われる.

パラレルテンパリング法は,温度の高い分布や低い分布を行ったり来たり しながら探索を行う. そのため,シミュレーテッドアニーリングと似た 効果を持ち,温度の下げ方に神経質になる必要もない. そのかわり, $ T_1,\ldots,T_K$ をどのように設定するかはそれなりに重要 となる. あまり密に配置すると,計算時間のオーバーヘッドなどが増えて 無駄になる上,温度の高いところと低いところを行き来するのに多くの ステップを必要とするために,最適化の効率も逆に悪くなる可能性もある. 一方,あまりスパースに配置すると前に述べたように交換の採択確率が 下がってしまう. そこで,経験的に(あるいは漸近理論などを用いて),ある程度 一定の採択率をもつような温度の配置がいろいろ提案されている[8].



Shotaro Akaho 平成19年6月13日