岩石磁気から知りたいことの例
岩石磁気から知りたいことの例
- 測定対象とした岩石ができたときの地球磁場の方向から、岩石のできた場所を復元する 第2歩
- 昔の地球磁場の強さを推定する 第3歩
- 磁性鉱物がたまった環境を復元する 第3歩
- 磁性鉱物ができる環境を推定する 第4歩
- 磁性鉱物を化石のように使って層序を復元する 第2歩
方位を付けたサンプリング
(『古地磁気学』Robert F. Butler 著 渋谷秀敏訳 より)
- サイト<サンプル<スペシメン
- サイトというのは、一連の堆積岩のある層や、火成複合岩体中の冷却単位(すなわち溶岩流や岩脈)の露頭である。
その岩相単位の初生NRM を知ることが出来るのであれば、各サイトの結果は各試料採取地点の初生磁化が形成された(理想的には短い) 期間の地球磁場方位の記録であるはずである。
ほとんどの古地磁気研究にとって、ある岩相単位で複数のサイトを設定することは、地球磁場方位の時間平均をとるために重要である。 どのくらいのサイト数が必要であるかは議論のまとである。
- サンプル(試料)というのはそれぞれ独立に方位をつけた岩石片である。
技術的な問題がない限り(例えば、湖底のコアなど)一つのサイトから複数の試料を取ったほうがいい。
通常は6-8個の試料を露頭の5-10mの範囲に分散させて取る。
NRM の方位を試料間で比較すれば、サイト内でのNRM の均一さが評価できる。
- スペシメン(試片)というのはNRM の測定に適当な大きさに試料から切り出したものである。
複数の試片をそれぞれの試料から切り出すこともある。
それらの結果の比較で、複数の試料の場合に加えてNRM の均質度や実験の再現性のチェックができる。
一つの試料から試片が一つしか取れないこともある。
一方、3個以上の試片を一つの試料から取っても意味のあることはまれである。
- サイトでの地層が水平でなければ、後で構造補正をするために地層の走向傾斜を測定しておかなければならない。
走向傾斜の測定は地質学一般で行われている方法でよい(通常はクリノメータを用いる)。
露頭の状況がよければ完全な構造の記載をしておく。
サイトがプランジした褶曲の翼部にあったとしたら、完全な構造補正のためにはその場の傾斜補正だけでなくプランジの補正もしなければならない。
- サイトというのは、一連の堆積岩のある層や、火成複合岩体中の冷却単位(すなわち溶岩流や岩脈)の露頭である。
- 試料採取の方法:
- 携帯ドリルを用いたコア試料
古地磁気試料の採取に最も広く用いられているのが水冷式のダイアモンドビットをガソリンエンジンで動かす
携帯ドリルでコア試料を得る方法である。
参考:高知大ホームページ
装備の問題、ドリルしにくい岩質、(または禁止地域) 等の理由でブロック試料を取る必要が出てくることがある。
割れ目の入った岩石に方位を付けて(一つの面の走向傾斜を記録することが多い) はずす。
地質ニュース
ドリル試料に比べて風化していることが多い。さらに方位の精度がどうしても甘くなる。実験室で測定用に試料を取る。
- 湖底や海底のコア試料
湖底や海底から堆積物の柱状試料を得るために色々な道具が作られている。
ほとんどのコアは水平面内の方位は付いていない。実験室で測定用にコアから試料を取ることになる。
- 遺跡のサンプリング
遺跡は方位のデータに、より注意が必要。
- 携帯ドリルを用いたコア試料
- 岩石試料は直径20-25mm、高さ20-25mmのコアに成型し、岩石試料には白絵具で方位の印をつける。
わきの矢印は上向き下向きどちらでも自分で決めた方向でよい。
わきのライン:ドリルで開けた穴にオリエンテータという器具を差し込む。この器具の差し込み部(円筒部)には線状のスリットがあり、穴の内側面に線を記す。
線を記したあと、この器具に取り付けたコンパスを用いて 磁北および水平面とこの線の相対的位置を計測・記録する。
- 未固結試料はプラスチックキューブに詰める。
海底や湖底の堆積物のコアからプラスチックキューブに詰めるときは、キューブを差し込むようにするから、キューブの底がコアの半割り面になる。
たとえばコアの上に向かって矢印をつける。
- いろいろな測定パラメータがあり、測定が容易なものから、高度で高価な装置が必要なものまでいろいろある。
論文を参考にして、どういう研究ではどのようなデータがとられているのか参考にするとよい。 - 例えば、「測定対象とした岩石ができたときの地球磁場の方向から、岩石のできた場所を復元する」研究で必要なデータは→例)
星・小川(2012)
この研究例で出されたデータは(多分標準的)
NRM、磁化率、段階交流消磁、段階熱消磁の測定。(各サイトの偏角、伏角、α95、k、VGP)
IRMの段階着磁、3成分IRMのThD実験。→磁化の主たる担い手はマグネタイトと推定。
- 自然残留磁化測定
- 野外で採取した岩石には初生残留磁化に、粘性残留磁化や等温残留磁化などの二次磁化が付け加わっている。
そこで、それらを選択的に消去し、かつ安定度を調べる。古地磁気では主として交流消磁と熱消磁が行われる事が多い。
- 交流消磁(AFD)
振幅が一定値からゆるやかにゼロまで減少する交流磁場によって試料を消磁する方法。
初めの振幅値を段階的に大きくしながら交流消磁と磁化測定を繰り返し、保磁力スペクトルを得たり、より保磁力の高い安定な磁化成分を順に取り出すことができる。
交流消磁の強さの段階は初めは少しずつ増やし、強くなってくると大きく増やすのが良い。
1, 2.5, 5, 10, 15, 20, 30, 40, 60, 80, 100 mT というような設定をよく用いる。
磁化強度が消磁前の1/2になる段階の磁場振幅値をMDF(Median Destructive Field)といい、残留磁化の安定性のパラメータとなる。
- 熱消磁(ThD)
熱消磁は試料をその強磁性鉱物のキュリー温度より低い温度(Tdemag) まで空気中で加熱して、室温まで(ほぼ)無磁場中で冷却する。
これでブロッキング温度(TB)≦Tdemag の粒子はH = 0 の“熱残留磁化” を獲得する。
すなわち、これらの粒子が担っているNRM は消える。
別の言い方をするとTB≦Tdemag の粒子の磁化は交流消磁におけるhc の小さな粒子と同様にバラバラになる。
段階熱消磁の段階は室温と一番高いキュリー温度との間を刻むことになる。
よく行われるのは低温部分では50℃ か100℃ のステップで上昇させて、キュリー温度の下100℃ 位になったときに細かく刻むという方法である。
マグネタイトのキュリー温度の580℃で止めるのではなく、ヘマタイトのキュリー温度である690℃近くまで段階熱消磁をすることが多い。
試料の変質をチェックするために、熱消磁の段階ごとに磁化率を測定する場合がよくある。
- 交流消磁(AFD)
- 野外で採取した岩石には初生残留磁化に、粘性残留磁化や等温残留磁化などの二次磁化が付け加わっている。
- 磁化率測定
- 試料を丸ごと測る(Low-Field susceptibility)→コアスクールのテキスト
- ヒステリシスカーブから読み取る
→
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
このとき初期磁化率(initial magnetic susceptibility)は磁化Jと加えた磁場Hからκ=J/H
ほぼ直線で近似できる磁場の弱いところから傾きを計算する。
- 試料を丸ごと測る(Low-Field susceptibility)→コアスクールのテキスト
- 自然残留磁化測定
- 古地磁気試料上の座標軸を地理座標に変換する。(『地球物理学 実験と演習』(1978)第24章古地磁気学演習より)
図24.3のようにオリエンテーターの溝の方向をx、コアの下の方向をzとする右手系の座標を取る。
今、自然界の座標を北をX、鉛直下方をZとする右手系にとる。
サンプリング時に測定しているのはAzimth(x軸の北からの角度。時計回りを+)とPlunge(上の図ではhade;z軸から鉛直下方への角度。時計回りを+)を測定している。
これを使ってスペシメン上のx-y-z座標で表した磁化ベクトルを、自然界のX-Y-Z座標で表した磁化ベクトルに変換する。
地磁気の三成分の関係は
F2=H2+Z2=X2+Y2+Z2
X=HcosD, Y=HsinD, tanD=Y/X
H=FcosI, Z=FsinI, tanI=Z/H
Butlerの教科書に、「試料座標系での磁化方向がIs = 46°, Ds =-28° = 332° であるとき、 試料の+z 軸の鉛直線からの角度(=hade) は37°で、+x 軸の方向が測定した方位角25°の場合 地理座標系でのNRM 方位は、I = 11°, D = 6°となる。」とある。
計算してみる→高校数学を忘れた人のために
入力パラメーター:dec=332°、dip=46°、pl=-37°、az=25°
結果:D=5.5°、I=11.9°
※→Tauxe(1998)のプログラムもある。
それで、MacUserではなかったのでカレイダグラフを使って自己流に悪あがきをしてきたが、
このたび、岡山理科大の畠山先生と同志社大の福間先生によってプログラムがWeb上に公開された!
MacUserでなくても使えます。ありがとうございます!
そちらを使うことをおすすめします!
- 古地磁気プロットアプリケーションWeb版by 畠山先生@岡山理科大
- 古地磁気プロットアプリケーションオフライン版by 福間先生@同志社大
- 等積投影図
球面上の点Pと極Sを結ぶ線分PSの長さと等しい距離だけ原点から離れた点P'を投影点とする。
小玉(1999)より
具体的には、偏角Dと原点Sからの距離rを極グラフにプロットすればよい。→カレイダグラフを使う例
原点Sからの距離rは伏角をIとすると、
- 直交投影図(Zijderveld,1967)
ザイダーベルド投影(Zijderveld projection)
小玉(1999)より
南北鉛直面(白丸)、東西水平面(黒丸)が慣例
NRMi;磁化強度、Di, Ii;偏角、伏角
Ni=NRMi*cosIi*cosDi
Ei=NRMi*cosIi*sinDi
Zi=NRMi*sinIi
図はNiをX軸として、それぞれEiとZiをプロットする。
- 磁化強度変化
X軸に磁場または温度、Y軸に磁化強度をプロット。
磁化強度はそのままの値をプロットしてもよいが、交流消磁の場合、MDF(磁化強度が半分になった時の磁場の値)を読みやすくするために、消磁前の磁場を1として割合で示すことも多い。
違う方向を持つ複数の成分が認められるときVDSという値を使ってもよい。→VDSの例
- 消磁データの主成分分析(Kirschvink,1980)
- NRM の特徴成分(『古地磁気学』Robert F. Butler 著 渋谷秀敏訳より)
部分消磁はNRM の成分を順番に消していく。簡単に消える成分は不安定成分と言う。
部分消磁で不安定成分を取り除けば、安定成分を取り出すことが出来る。
多くの場合、安定成分は必然的に初生のNRM、不安定成分は二次的なNRM と推定される。
しかし、これはいつも正しいとは限らない。そのため、安定成分を表わす述語が必要となる。
部分消磁で取り出されたNRM の安定成分はNRM の特徴成分(Charactaristic Remanent Magnetization:ChRM) と呼ばれることが多い。
部分消磁ではChRM を特定することは出来るが、それが初生磁化であるかについては他に情報が必要である。
特徴成分という単語を用いれば部分消磁の結果について述べるのに初生NRM という言葉が内包する獲得時期に言及せずにすむ。
この区別は不必要に細かいものに見えるかもしれないが、部分消磁の結果確かに言える部分(ChRM の決定) から、
ChRM が初生磁化であるという不確かな部分を切り離すために有用である。
- 主成分分析
(『古地磁気学』Robert F. Butler 著 渋谷秀敏訳より)
図5.10の例にして、p.c.a.(principal component analysis) を使って、一連の実験で得られたデータ点を通る最適な直線を決定できる。
通常は、それに加えて、得られた最適直線の精度の定量的な目安となる最大角分散(maximum angular deviation: MAD) も計算する。
主成分分析で直線を当てはめる時、ベクトル成分図の原点の取扱いに関して三つの選択肢がある。
(1) 原点を通る直線を当てはめる(原点拘束)
(2) 原点をデータ点の一つとして使う(原点利用)
(3) 原点を特別扱いしない(自由)。
原点に向かうデータ点がChRM を与えるのであるから、ChRM の決定には原点拘束か原点利用の当てはめをするのが普通である。
図5.10 では原点拘束の当てはめを示した。この直線は、原点を通ると言う制約条件でデータ点を通る最適の直線である。
得られた直線の方位はI = 6.4°,D = 162.8° でMADは5.5° である。
もし、当てはめを原点利用でするなら、I = 7.3°,D = 164.7° でMAD は8.0° となる。
方位決定の際に原点から最も遠い点が一番大きな重みを持つことになっている。
なぜなら、原点から最も遠い点が方位に関して最大の情報を持っているからである。
実験という観点から考えても原点から最も遠い点は信号/雑音比が最大になっているはずで、方位は最も良く決まっているであろう。
特に合意が出来ている訳ではないが、主成分分析でMAD≧15°を与えるような直線は良くない当てはめで、意味があるか疑問だと考えられている。
ここから、Lisa Tauxe(Paleomagnetic Principles and Practice, 1998)のプログラムを使って、三石蛇紋岩体の段階交流消磁のデータを考えてみる。
N個の磁化ベクトルJiを考え、それらの三成分を(xi,yi,zi)とする。これらを用いて次のような対称行列Hを作り、Hの固有値λと固有ベクトルUを求める。
つまりdet(λE-H)=0の解を求める。 このλには一般に3つの解、λmax、λint、λminが存在し、それぞれたがいに直交する固有ベクトルUmax、Uint、Uminが対応する。
これら固有ベクトルの方向を、行列Hの主軸(principal axis)という。
固有値の求め方はdet(λE-H)=0を解く。
ここでdetAは俗に言う「たすき掛け」で計算できる。
よって
det(λE-H)=(λ-h11) (λ-h22) (λ-h33)+(-h12)(-h23)(-h31)+(-h13)(-h21)(-h32)-(-h13)(λ-h22)(-h31) -(-h12)(-h21)(λ-h33) -(λ-h11)(-h23)(-h32)
これを整理してλmax、λint、λminを求める。
つぎに、それぞれのλについて固有ベクトルUを求める。
つまり、を解く。
ここで考えられている直線のあてはめの問題では、λmaxに対応する固有ベクトルUmaxの方向が求めるべき直線の方向で、
λmaxはその方向のデータの分散、λint、λminはそれと直交する2方向の分散となる。
※やってみる
- NRM の特徴成分(『古地磁気学』Robert F. Butler 著 渋谷秀敏訳より)
- MAD(Maximum Angular Deviation)を計算し15°未満を採用
MADは上のpcaのプログラムで計算する。
- 地点平均方位95%の信頼限界半径(α95)および集中度パラメータ(k)
- 平均方位
古地磁気で扱うデータはせいぜい1サイト10個程度である。
こういう場合、方位の集合の平均はベクトルの単なる和で得られる。
N 個の単位ベクトルの集合の平均を計算するには、まず、それぞれのベクトルの方向余弦を次の式で求める。
li = cos Ii cosDi, mi = cos Ii sinDi, ni = sinIi
ただし、Di, Ii はi 番目のベクトルの偏角、伏角で、li,mi, ni はi 番目のベクトルの北向き、東向き、および下向きの方向余弦である。
平均方位の方向余弦は次の式で与えられる。
l=(Σli)/R、m=(Σmi)/R、n=(Σni)/R、ここでR2=(Σli)2+(Σmi)2+(Σni)2
平均の方向余弦から平均方向の偏角と伏角は
Dm=tan-1(m/l), Im=sin-1(n)
ここで、データの個数をNとすると、集中度パラメータkはk=(N-1)/(N-R)となる。
- 信頼限界
N 個の方位データの集合についての信頼限界は以下の式で与えられる。
この角α(1-p) は、計算した平均からα(1-p) の範囲に真の平均(未知) が入る確率が(1-p)であるという意味である。
p=0.05の場合が広く使われているα95である。
k≧7のときはで近似できる。
- 平均方位
- 半径α95の小円を平面に投影する
勘違いしている恐れがあるけれどこれで・・・
- 仮想地磁気極:VGP(Virtual Geomagnetic Pole)
一地点での地球磁場観測から計算した極の位置を仮想地磁気極(VGP: Virtual Geomagnetic Pole) と呼ぶ。
これは、ある地点である時間に観測した磁場方位を与える地心双極子の極の位置なのである。
VGP はある地点の現在の地球磁場方位から計算することができる。
もし、地球上の様々な地点で現在の地球磁場についてのVGP を決めたなら、現在の地磁気極の周りに分布する。
古地磁気学では、ChRM 方位のサイト平均は試料採取サイトでのChRM が着く(理想的には短い) 時間の過去の地球磁場方位の記録である。
従って、一つのサイト平均ChRM 方位から計算した極の位置は仮想的地磁気極なのである。
- 具体的な計算方法は、
サンプルの採取地点S(λs,φs)(緯度λ、経度φ)における古地磁気偏角Dと伏角Iが得られたとする。
これが双極子磁場のみによるものとしてそのVGPの位置をP(λp,φp)とする。
ここで球面三角形NPS(Nは北極、PはVGP、Sはサンプリングサイト)に対する余弦定理から
sin(λp)=sin(λs)cos(p)+cos(λs)sin(p)cos(D)
ここでpはSとPの間の角距離だから、tan(I)=2tan(λ)が成り立つことよりλ=π/2-pとして
p=tan-1(2/tanI)
このpとλs、Dを代入すればsin(λp)が計算できる。
VGPの経度φpとサンプルサイトの経度φsの差をβとすると
sin(β)=(sin(p)sin(D))/cos(λp)
ここで、βが鋭角の時は、φp=φs+β
鈍角の時はφp=φs+(π-β)
判定の仕方は、
cos(p)=sin(λp)sin(λs)+cos(λp)cos(λs)cos(β)
cos(β)=(cos(p)-sin(λp)sin(λs))/(cos(λp)cos(λs))
定義によりcos(λp)cos(λs)>0なので
cos(p)≧sin(λp)sin(λs)であればcos(β)≧0でβは鋭角となる。
cos(p)<sin(λp)sin(λs)であればcos(β)<0でβは鈍角となる。
- 計算の例として、サイト平均磁化方位がIm = 45°, Dm = 25°でα95 = 5.0°。
このサイトの位置がλs = 30°N, φs = 250°E (=110°W) の場合を考えてみよう。
これはプログラムを組むまでもなく、エクセルで計算する。
deg rad rad deg Im 45 0.785 p 1.107467172 63.48537931 Dm 25 0.436111111 λp 1.182819511 67.80494013 λs(N) 30 0.523333333 β 1.522875937 87.29862061 φs(E) 250 4.361111111 φp 5.978235174 342.7013794 cos(p) 0.446928738 sinλs*sinλp 0.462625368
よってVGP(λp,φp)は緯度67.8°N、経度 342.7°E になる。
いくつかのサイトからVGPを計算したら、集中度パラメータK、信頼限界A95を計算する。
- 具体的な計算方法は、
磁化を主として担っている磁性鉱物の種類を推定する方法はいろいろあるが、保磁力と温度で推定されることが多い。
- 一般に保磁力は強磁性粒子のサイズが小さくなるにつれ増大する。
また、温度増加に伴い、ほぼ直線的に減少し、キュリー点で強磁性の消滅とともに0となる。
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
- 保磁力を測る
磁性鉱物の種類を推定する研究例
- IRM獲得曲線 ★★
- 実験例1 藤井・中島(2002)
段階的IRM獲得実験にはPulse Magnetizerを使用。
段階的により大きな直流磁場に試料をさらし,その都度獲得したIRMの強度をスピナー磁力計で測定した。
10,15,20,25,30,40,50,60,100,150,250,400,600,800,1000,1500,2000,2500,3000(単位はすべてmT)の19段階に磁場強度を設定した。
※IRM獲得曲線は急速に立ち上がり,磁場100mTで飽和磁化の8割以上を獲得,500mTではほとんど飽和に達する。→マグネタイトが主?
※IRM獲得曲線の立ち上がりが緩やかであり,磁場400mTで飽和磁化の8割以上を獲得するが,3000mTでも飽和しない。→ヘマタイトを含む?
- 実験例2(星・小川,2012)
段階的IRM獲得実験には水冷式電磁石を使用。
段階的により大きな直流磁場に試料をさらし,その都度獲得したIRMの強度をスピナー磁力計で測定した。
0~1.6Tまで着磁。
※0.1-0.2TまでにIRMが飽和等温残留磁化(SIRM)の90%に達していることから、主として磁化を担っている鉱物は0.1-0.2T以下の保磁力を持つ(マグネタイト)と推定される。
※0.5TでSIRMに達したのでヘマタイトやゲータイトは含まれていないと判断できる。
- 実験例1 藤井・中島(2002)
- IRMの段階熱消磁
- やりかた
- Pulse Magnetizerなどを用いて,互いに直交する3軸方向にそれぞれ大きさの異なる磁場をかける。
- たとえばZ軸方向にhard成分(0.4-5T),Y軸方向にMedium成分(0.12-0.4T),X軸方向にSoft成分(<0.12T)とし、大きな磁場から順にかける。
- これにより,高保磁力を持つ磁性鉱物はZ軸方向に,中保磁力を持つ磁性鉱物はY軸方向に,低保磁力を持つ磁性鉱物はX軸方向に磁化されることになる。
- その後,段階熱消磁実験を行う。
- Pulse Magnetizerなどを用いて,互いに直交する3軸方向にそれぞれ大きさの異なる磁場をかける。
- 実験例(Lowrie,1990)
- 段階的IRM獲得実験で5T着磁した方向をZ軸であったとすると、直交するY軸に0.4T、X軸に0.12Tの磁場をかける。それぞれHard、Medium、Soft成分と呼ぶ。
- 空気中でNRMと同様に段階熱消磁を行う。
- sample1
(a)5Tまで飽和しない。0.5Tで傾きが変わる。
(b)HardとMedium成分が330℃より低いところでアンブロックするのはピロータイト。640℃はヘマタイト。
Soft成分が330℃で消磁されるのはゲータイト、マグへマイト、マグネタイトがほとんどない。
- sample2
(a)低い磁場で傾きが急。5Tでも飽和しない。
(b)Hard成分がわずか80℃で下がっているのはかなり大きなゲータイトが含まれている。Hard成分が80℃から680℃まで単調に減少しているのはヘマタイト。
SoftとMedium成分にマグへマイトまたはピロータイトを示す目立った段差がなく単調に下がって540℃で消磁される。
このサンプルは、感知できるほどのゲータイトを含んで、マグネタイトとヘマタイトが主として磁化をになっている。
- sample3
(a)低い磁場で傾きが急。0.5Tまでに飽和磁化の90%に達している。しかし5Tまで飽和はしていない。
(b)330℃で3成分とも大きく下がっている。ピロータイトを含む。
Soft成分は580℃で消磁されるのでマグネタイトを含む。
ヘマタイトの証拠がない。
Hard成分で80-150℃で大きく下がっているのは安定したゲータイトがあるせい。
- 段階的IRM獲得実験で5T着磁した方向をZ軸であったとすると、直交するY軸に0.4T、X軸に0.12Tの磁場をかける。それぞれHard、Medium、Soft成分と呼ぶ。
- めやす(Lowrie,1990)
Ferro-magnetic mineral Maximum corecivity(T) Maximum unblocking temperature(℃) Magnetite 0.3 575 Maghemite 0.3 350 Titanomagnetite(x=0.3) 0.2 350 Titanomagnetite(x=0.6) 0.1 150 Pyrrhotite 0.5-1 325 Hematite 1.5-5 675 Goethite >5 80-120
- やりかた
- IRM獲得曲線 ★★
振動型磁力計(vibrating sample magnetometer: VSM)
VSM BHV-55LH(理研電子)の操作方法
- ヒステリシスを得る
- サンプルを振動型磁力計にセットして室温でヒステリシスを得る。
http://www.jst.go.jp/pr/report/report27/grf2.html
ここで測定されるものは飽和残留磁化Mr、飽和磁化Ms、保磁力Hc、残留保磁力Hrc、初期帯磁率など。
ヒステリシスカーブの形は含まれている磁性鉱物によって変わる。研究例
Tauxe(1998)より。左からヘマタイト、SDマグネタイト、ヘマタイト+マグネタイト、SD+SPマグネタイト。
横軸は磁場μ0H(mT)
その他
- Day Plot
ヒステリシスパラメーターの比(Hrc/HcとMr/Ms)をプロットした図。
Day et al(1976)
マグネタイトの粒子サイズによるヒステリシスパラメーターの違いを表す。
※Dunlop(2002)では粒子サイズの区分をDayとは違う値にしている。
※
SD(Mrs/Ms) SD(Hcr/Hc) MD(Mrs/Ms) MD(Hcr/Hc) Day et al(1976) 0.5 1.5 0.05 4 Dunlop(2002) 0.5 2 0.02 5
これでみるとSD+MDでMDの割合が増えてくるとPSD領域に入ってくる。
- サンプルを振動型磁力計にセットして室温でヒステリシスを得る。
- 磁化温度曲線を得る
- キュリー温度
- 可逆性
- 真空中の磁化温度曲線
- マグネタイトの模式図(小嶋・小嶋,1972)
真空中の磁化温度曲線が可逆的で、キュリー温度が580℃付近であればマグネタイト。
可逆的な磁化温度曲線で、キュリー温度が580℃より低い時は、チタノマグネタイト(ウルボスピネルの割合が高いほどキュリー温度が下がる)。
チタノマグネタイト(Fe3-xTixO4)の組成とキュリー温度の関係 (河野(1982)より)
チタノマグネタイトは、マグネタイト(Fe3O4)とウルボスピネル(Fe2TiO4)の固溶体
- チタノマグネタイト:一つの岩石試料の中でもβ相の部分や粒子によってTiの含有量が異なれば、キュリー点や飽和磁化Jsも異なる。
(a)塁帯構造がある場合は最も高いキュリー点のみ決まる。
(b)石基と斑晶で組成が違う場合はキュリー点も2つ現れる。
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
- 高温酸化:
6Fe2TiO4+O2→6FeTiO3+2Fe3O4
ウルボスピネル+酸素→イルメナイト+マグネタイト
イルメナイトはラメラーになる。
この反応は結晶ができた直後の高温(1000℃から500℃)で起こる。
高温酸化を受けると、Tiの少ないマグネタイトと、Tiの多いイルメナイトに分かれる。
常温のイルメナイトは磁性を持たないので、β相のTi量が少なくなる。
すなわち、高温酸化を既に受けているもの(イルメナイトのラメラーを持つマグネタイト)は、受けていないものに比べてキュリー点も高く飽和磁化(Js)の値も大きい。
- (a)のように、真空中の磁化温度曲線が可逆的であればβ相(マグネタイトまたはチタノマグネタイト)。
(b)と(c)のように空気中で加熱した場合はマグネタイト(Fe3O4)→ヘマタイト(αFe2O3)の反応が起きる。
ただしヘマタイト(αFe2O3)のJsはマグネタイト(Fe3O4)に比べて無視できるほど小さい。
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
- 低温酸化:
酸化が400℃程度より低温で進行する場合は、Fe2+→Fe3+という変化が起こる。
γ相(マグヘマイト:γFe2O3またはチタノマグヘマイト)が存在するということは、2次的に酸化されている証拠。
ただし、Tiが少ない場合は、ほぼ可逆的な磁化温度曲線が得られる。
典型的な例は、海底玄武岩。
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
上図の(a)はイルメナイトラメラーを持たない=Tiをある程度含むチタノマグヘマイト。
下図の(b)と同じ。
加熱時に300度付近で分解が起こって x = 0 に近いチタノマグネタイトが生成し,300→400度にかけての加熱で磁化の増加が見られる。
冷却時はチタノマグネタイトの曲線をたどる。
上図の(b)のようにイルメナイトラメラーがある場合は、ウルボスピネル+酸素→イルメナイト+マグネタイトの反応が起きているから、マグネタイトの可逆曲線になる。
Dunlop and Oezdemir(1997)「Rock Magnetism」
上図の(a)は低温酸化を受けていない海底玄武岩で、塁体構造があるパターン。
- 真空中で加熱して、非可逆的な磁化温度曲線が得られた場合は、まずγ相の存在を考える。
(a)γ相(マグヘマイトまたはチタノマグヘマイト)は真空中であっても高温で分解されるので、可逆的にならない。
(b)マグヘマイトを空気中で加熱すると、分解され、酸化されてヘマタイトになる。
(c)マグヘマイトとマグネタイトの混合体を真空中で加熱すると、マグヘマイトがキュリー点に達する前に分解されてγ相のキュリー点は現れない。
冷却時の飽和磁化はマグネタイトが増えるのでやや増加する。
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
- マグネタイトの模式図(小嶋・小嶋,1972)
磁化温度曲線で、急激に磁化が落ちるところについて、二本の接線の交わるところを読み取る。
磁化温度曲線の二次微分のピークを読み取る方法もある。
これらは同じデータでも微妙にずれる。
Figure 8.3: a) Ms - T data for magnetite. Inset illustrates intersecting tangent method of Curie temperature estimation.
b) Data from a) differentiated once. c) Data from a) differentiated twice.
Peak shows temperature of maximum curvature, interpreted as the Curie temperature for this specimen.
http://magician.ucsd.edu/Essentials_2/WebBook2ch8.html
VSMではなく、例えば 磁化率異方性測定システム(Kappabridge system MFK1-FA, AGICO)を用いると、
-196℃から700℃くらいまで磁化率を測定することができるので、磁化率ー温度曲線からキュリー温度を読み取る場合もある。これも微妙に温度がずれる。
b) Behavior of ferromagnetic susceptibility (solid line) as the material approaches its Curie temperature (Ms - T data shown as dashed line).
http://magician.ucsd.edu/Essentials_2/WebBook2ch8.html
磁化温度曲線は加熱と冷却で1サイクル。
このパターンを見ることによって、磁性鉱物を推定する。
(最近では、磁性から推定するだけでなく化学分析を求められることも多い。)
- 実際の地質試料中では,β相(マグネタイトおよびチタノマグネタイト)とγ相(マグヘマイトおよびチタノマグヘマイト)は、共存している場合が多い。
「酸化被膜」というイメージ。
そこで、真空中加熱したときに、特徴的な非可逆的磁化温度曲線が得られる。
小嶋・小嶋(1972)「岩石磁気学」
加熱したときのキュリー点よりも冷却時のキュリー点が低く、途中まで冷却時のほうが磁化が小さいのが特徴。
小嶋・小嶋(1972)では、TiO2が10-15%含まれる安山岩に見られるとしている。
含まれるTiO2がこれより少ないとキュリー点が高くてγ相のキュリー点まで加熱されないうちに分解されてしまう。
これより多いとキュリー点が低すぎてγ相はキュリー点より上の温度でも存在可能となり、見かけのキュリー点低下は見られない。
- 蛇紋岩
Dunlop and Oezdemir(1997)「Rock Magnetism」
- 熱水変質を受けた海底玄武岩
Dunlop and Oezdemir(1997)「Rock Magnetism」
- 天然のピロータイト(Fe1-xS)は,単斜晶系でフェリ磁性のFe7S8と,六方晶系で反強磁性のFe9S10やFe11S12の混合体として産することが多い。
Fe7S8のキュリー点は約320度であり,室温における自発磁化はマグネタイトの約1/6である。
六方晶系のFe9S10は,約200~265度の範囲でフェリ磁性を示す。
その影響はJs-T曲線の加熱カーブで局所的な磁化の増加として観察され,「λ転移」と呼ばれる。
2008年8月改訂: 山本 裕二, J-DESCコアスクール・古地磁気コースの講習資料として.
初版: 石川 尚人 氏, 2004年3月「若手研究者・学生のための掘削コア磁性測定技術習得ショートコース」講習資料として.より
- →コアスクールテキスト
磁性鉱物には特定の温度で磁気的に急激な変化(相変態)を示す場合がある。キュリー点などは代表例。
磁気的相変態点は鉱物ごとに異なった温度で起こるので、磁性鉱物の種類をきめるための非常に有力な方法となる。
- フェルベー点を得る
マグネタイト(Fe3O4)のフェルベー相変態(Tv):マグネタイトは120 K付近で、低温で獲得させたIRMがシャープに減少する。
北海道岩内岳の蛇紋岩(マグネタイト)の例(森尻・中川,2009)
- モーリン点を得る
ヘマタイト(Fe2O3)のモーリン点:ヘマタイトはField coolingしたIRMを暖めていくと、260 K前後でIRMが増えるのがはっきり見える。
Dunlop and Oezdemir(1997)「Rock Magnetism」
- フェルベー点を得る