私たちの地球には、プレートがぶつかり合う「沈み込み帯」というエリアがあります。 ここでは、地球の表面に見えない様々な動きがあり、それが私たちの住む世界に大きな影響を与えています。 沈み込み帯のジオダイナミクスに関する研究は、主に数値シミュレーション(ジオダイナミックモデリング)を用いて、 沈み込み帯の長期的な地質構造の発達の解明に取り組んでいます
沈み込み帯における複数の海山衝突
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南海トラフといった沈み込み帯で発達する地質構造(付加体)に対して、海洋プレートの移動にともなって海底の山や海嶺が大陸の端に衝突するとどうなるか、コンピュータシミュレーションを使って調べました。
この衝突がどのように地形を変えるか、そしてそれが繰り返されることで、南海トラフで観測されるような複雑な地質構造が生まれるかを見つけ出しました。
この複雑な地質構造が、沈み込み帯での複雑な地震活動に影響しているかもしれません。 参考: Miyakawa et al. (2022) 本研究で日本地震学会論文賞を受賞しました。 [地震学会HP] |
地質構造発達過程における被熱履歴
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地球では地球の持つ熱により、地下深くなるほど温度が高くなっていきます。
沈み込み帯で発達する地質構造(付加体)がどのように成長し、その中の堆積物や岩石がどれだけ熱を受けるかをシミュレーションしました。
岩石がどの道をたどるかによって、その熱成熟度がどう変わるかを明らかにしました。
特に、同じ時代に堆積した堆積物でも、付加体に取り込まれ方によって、深くもぐりこむケースと、浅い深度しか経験しないケースに別れ、それぞれ受ける熱(被熱)が大きく異なることがわかりました。
地表で観察される過去の地質の記録する被熱は、このような堆積物の経験の違いを反映しています。 参考: Miyakawa et al. (2019) |
断層周辺の力の場(応力場)と断層の活動
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地下深くで岩が滑りやすいかどうかを、数値シミュレーションの中で調べました。
シミュレーションで再現された地質構造(付加体)の中には、大規模な断層が形成されます。
大規模な断層が作られるとき、その断層が活動(変位)するときに、断層周囲の力の場(応力場)がどのような状態にあるかを、断層の滑りやすさの傾向(slip tendency)で評価しました。
大きな断層が活動する前は、断層周辺で局所的に断層の滑りやすさの傾向が高まり、断層が活動(滑る)ことで、断層の滑りやすさの傾向が低下することがわかりました。 参考: Miyakawa et al. (2016) |
プレート境界断層の変化と地質構造の変化
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巨大な海溝型地震を引き起こすプレート境界断層では、場所によって滑りやすさ(摩擦)が異なると考えられています。
そのような空間的に変化する摩擦がどのように、沈み込み帯の地質構造に影響を与えるか調べました。
この結果、プレート境界断層が深くなるにしたがって滑りにくくなる(摩擦が増加する)ことによって、”序列外断層”と呼ばれる特殊な大規模な断層が形成されることがわかりました。
南海トラフなどで観察される序列外断層のような地質構造から、プレート境界断層の物性(地震の起こしやすさなど)を推定できるかもしれません。 参考: Miyakawa et al. (2010) |