ウェアラブル行動誘導システムのホームページ
最終更新日:2015.11.06


ウェアラブル行動誘導システムとは

ウェアラブル行動誘導システム
 GPSナビゲーション機能を持つ携帯電話が普及しています。ウェアラブル技術、ユビキタス技術の進歩により、歩行のナビゲーション(誘導、指示)だけではなく、一般的な人間の動作・行動の誘導、指示が実現されると期待されています。一般の行動に関して、普通の人は他人からの指示を必要としません。しかし負傷者や急病人の隣に立っているなら、専門家による応急手当ての指示が必要となるでしょう。私たちは、現場の情報を専門家に送り、専門家の動きを分かり易い形で提示し、それを真似ることで、高度の応急手当てを行うウェアラブル行動誘導システムを開発しています。

 専門家が、応急手当てを行う人(現場作業者と呼びます。)の行動を効率よく誘導、指示するために、鍵となる第1の基本技術は専門家と現場作業者との感覚情報の共有技術です。現場の情報が無ければ,専門家は、患者の状態を知ることは出来ません。私たちが開発している、応急手当てのための遠隔行動誘導システムでは、現場作業者がマイクとウェアラブルカメラ、その他色々なセンサーを装着し、現場の情報を専門家に送ります。専門家は現場の画像や音、その他のセンサー情報、現場作業者とのコミュニケーションで、患者の状態を知り、適切な応急手当てを判断します。

行動誘導システムの情報処理
 第2の鍵となる基本技術は、応急手当てを行う人の動作を誘導するために、専門家の動作を見せる技術です。多様な動作の指示、誘導を可能とするために、拡張現実感(AR: Augmented Reality)技術によって、応急手当てを行う人のカメラ画像に、専門家の手のCG画像を重ね合わせて表示する遠隔行動誘導システムを開発しました。このシステムでは、図2のように専門家の手の画像を画像処理(RGB空間からHSV空間への変換と閾値処理)により抽出し、応急手当てを行う人のカメラ画像に重ねて表示します。専門家の動作を現場作業者が見て、真似ることによって、応急手当ての動作の指示、誘導が実現されます。

 このシステムを用いて、三角巾を使って腕を吊る作業を行った様子を図3に示します。三角巾の利用法を知らない人でも、専門家の指示に従って、効率良く、応急手当てが可能となりました。このシステムでは、動作の提示装置として、ヘッドマウンテッドディスプレイを用いていますが、より一般の方が利用しやすいと思われる固定ディスプレイや携帯電話を用いたシステムの開発も進めています。

応急手当ての様子

 応急手当の支援だけでなく、災害現場、工事現場、工場等の比較的過酷な環境下での作業の支援でも、遠隔地の専門家による行動誘導は有効と期待されています。過酷な環境下での作業では、作業の専門家である熟練作業員が不足しています。現在、図4に示すような過酷環境での利用を想定した遠隔行動誘導システムを開発しています。本システムにより、現場にいる熟練していない作業員の能力を高め、作業を効率化することを目指しています。現時点で、本システムの有用性は確認されておりますが、現場への投入には、未だまだ時間がかかります。一刻も早い、実用化・製品化を実現するために、企業の皆様の協力を必要としておりますので、よろしくお願いいたします。
Behavior Navigation System for Harsh Environments


 本研究は、下記のインターネット科学技術ニュースメディアDiginfoにて紹介いただきました。


http://www.youtube.com/embed/ldEyGeSw4M8


 本研究はフランスのNetexplo 2012 awardを受賞しました。また、行動誘導システムの概念を紹介するビデオを作成していただきました。



 本研究はJST CRESTパラサイトヒューマン(研究代表:前田太郎大阪大学教授)の支援により、大阪大学、玉川大学、茨城大学の共同研究として行われました。


発表文献
・大山英明,渡邊紀文,三門裕明,大森隆司,篠田孝祐,野田五十樹,城間直司,米村朋子,安藤英由樹,近藤大祐,前田太郎,ウェアラブル行動誘導システムの研究 -共通プラットフォーム技術による簡易型パラサイトヒューマンシステムの開発 -,第9回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2009),2009

E. Oyama, N. Watanabe, H. Mikado, H. Araoka, J. Uchida, T. Omori,K. Shinoda, I. Noda, N. Shiroma, A. Agah, K. Hamada, T. Yonemura, H. Ando, D. Kondo and T. Maeda, ”A Study on Wearable Behavior Navigation System - Development of Simple Parasitic Humanoid System -”, in 2010 IEEE International Conference on Robotics and Automation ICRA 2010, Anchorage, USA, 2010, pp. 5315-5321.

E. Oyama, N. Watanabe, H. Mikado, H. Araoka, J. Uchida, T. Omori, K. Shinoda, I. Noda, N. Shiroma, A. Agah, T. Yonemura, H. Ando, D. Kondo and T. Maeda, "A Study on Wearable Behavior Navigation System (II) - A Comparative Study on Remote Behavior Navigation Systems for First-Aid Treatment -", in 19th IEEE International Symposium on Robot and Human Interactive Communication, Viareggio, Italy, 2010, pp. 808-814.

E. Oyama and N. Shiroma, "Behavior Navigation System for Use in Harsh Environment", in Proceedings of the 2011 IEEE International Symposium on Safety,Security and Rescue Robotics Kyoto, Japan, 2011, pp. 272-277.

E. Oyama, N. Shiroma, N. Watanabe, A. Agah, T. Omori, N. Suzuki, "Behavior Navigation System for Harsh Environments", Advanced Robotics (will appear).

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