目的

訓練CD1.0は、訓練CD0.0同様、視覚障害教育/リハビリテーションにおける障害物知覚獲得のための初心者用訓練教材として開発されました。訓練CD1.0には、実環境ではなかなか聞き取りにくい障害物知覚の音響的手がかりが、初心者にも聞き取りやすいように理想的な状態で収録されています。初心者の学習の補助や、また障害物知覚の基本原理を理解するための教材としてお使い下さい。

コンセプト

訓練CD0.0は、障害物との様々な遭遇の場面を想定し、いわばデータベース的にたくさんの状況を収録しましたが、訓練CD1.0では、訓練の場面で不必要な音響データを削除し、より実用的な状況を追加しました。具体的には以下の4つが大きな変更点です。

  1. 本物の環境音の音響データも追加しました。

    訓練CD0.0は白色雑音のみでしたが、訓練CD1.0では更に実録した環境音を用いた音響データも収録し、より実環境に近い練習ができるようになりました。

  2. 全てが移動条件としました。

    訓練CD0.0では、壁(物体)が静止した条件がほとんどでしたが、訓練CD1.0では全てが初心者に分かりやすい移動条件としました。また移動パターンも多様なものとしました。

  3. ヘッドホン聴取用データは削除しました。

    訓練CD0.0では、スピーカ聴取用とヘッドホン聴取用の音響データを収録していましたが、頭部伝達関数シミュレーションによって作成されたヘッドホン聴取用音響データは再現性が良くないことから、訓練CD1.0では削除しました。

  4. 足音は省略しました。

    訓練CD0.0では、足音の反射を用いる条件が収録されていましたが、あまりニーズがないので訓練CD1.0ではとりあえず省略しました。

再生・聴取方法

訓練CD1.0は、お手持ちの家庭用ステレオオーディオCDプレーヤで再生できます。新たに特殊な機材を購入する必要はありません。

訓練CD1.0は8cmシングルサイズCDですので、CDプレーヤの機種によってはアダプタが必要となります。
※ モノラルオーディオセットでは再生できません(スピーカから音は出ますが、意味がありません)。

まず、なるべく反響の少ない部屋の中の、壁からなるべく離れた場所(部屋の中心など)を選びます。次に、2つのステレオスピーカを向かいあわせにして、2.4m〜3m離して設置します。聴取者は、頭部中心が2つのスピーカの中心位置となるようにします。この状態で訓練CD1.0を再生すると、右チャンネルスピーカの方向の所定の距離に、音響によって作られる仮想的な障壁が再現されます。

※ ヘッドホンでは聴取できません(音は聞こえますが、意味がありません)。
距離の定義については、次の[5] 内容で説明します。

聴取者の右側に右チャンネルスピーカ、左側に左チャンネルスピーカが設置されている場合には、障壁は右側に現れます(図1)。障壁を左側に再現したい場合は左右のスピーカを取り替えます。また、障壁を正面に再現したい場合には、右チャンネルスピーカを聴取者の前方、左チャンネルスピーカを後方に配置します(図2)。

なお、聴取する際は、頭部を静止させておく必要はありません。頭部の向きを変えたり、再現された障壁に頭部を近付けたりして、頭部の動きによる聞こえ方の変化を確かめることが出来ます。

※ 頭部を動かす際には、2つのスピーカの中心からあまり大きく離れないようにして下さい。目安は20cm以内です。

図1は、2つのスピーカが聴取者の左右1.2m〜1.5mの距離に設置されている様子を描いています。聴取者の右側に仮想的な障壁が提示されます。次の文章は図1のタイトルです。
図1 スピーカの配置方法(聴取者の右側に障壁を再現する場合)
図2は、2つのスピーカが聴取者の前後1.2m〜1.5mの距離に設置されている様子を描いています。聴取者の正面に仮想的な障壁が提示されます。次の文章は図2のタイトルです。
図2 スピーカの配置方法(聴取者の正面に障壁を再現する場合)

内容

訓練CD1.0は、収録トラック数42トラック、収録時間21分49秒(ただしこの時間の中にはトラック間の無音区間も含まれていますので、実際の音響データの合計時間は20分26秒です)の8cmシングルサイズCDです。

42トラックは、音2種類×距離変化パターン21通りによって構成されています。以下に音の種類距離の説明をします。

音の種類

訓練CD1.0に使用されている音は、次の2種類です。

  1. 白色雑音(White noise

    オーディオCDに収録可能な周波数帯域(22.05kHz以下)を全て一様に含んだ定常な雑音です。

  2. 環境音(Environmental noise

    屋外で実際に録音した音から作った環境音です。道路騒音と野原の音をミックスしています。

距離

ここでいう距離とは、2つのスピーカの中心から、再現された障壁(物体)表面までの距離をいいます。訓練CD1.0で設定されている障壁(物体)の距離変化のパターンは次の4グループ、21通りです。

  1. 接近グループ(Move from 3m to 0.2m

    3mから0.2mまで一定速度で接近し、0.2mで5秒間静止する条件のグループです。接近速度は次の3通りです。

    1. 0.7m/秒(接近時間4秒 合計時間9秒)
    2. 0.4m/秒(接近時間7秒 合計時間12秒)
    3. 0.2m/秒(接近時間14秒 合計時間19秒)
    図3は、接近グループの距離変化パターンのグラフです。3.0mから速度v m/秒で0.2mまで接近し、0.2mで5秒静止するグラフです。次の文はこの図の説明です。
    図3 接近グループの距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。v = 0.7m/秒, 0.4m/秒, および0.2m/秒の3通り。
  2. 往復グループ(Move between 3m and 0.2m

    3mと0.2mの間を一定速度で往復します。往復速度は次の3通りです。時間はすべて56秒間です。

    1. 0.7m/秒(往復時間8秒 往復回数7回)
    2. 0.4m/秒(往復時間14秒 往復回数4回秒)
    3. 0.2m/秒(往復時間28秒 往復回数2回)
    図4は、往復グループの距離変化パターンのグラフです。3.0mと0.2mの間を速度v m/秒で往復するグラフです。次の文はこの図の説明です。
    図4 往復グループの距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。v = 0.7m/秒, 0.4m/秒, および0.2m/秒の3通り。
  3. ジャンプグループ(Jump from infinity

    ∞m(つまり障壁が存在しない状態)が5秒続いたあと、突然有限な距離にジャンプして10秒間静止する条件のグループです。その有限な距離は以下の11通りです。時間はすべて15秒間です。

    1. 2.0m
    2. 1.5m
    3. 1.0m
    4. 0.9m
    5. 0.8m
    6. 0.7m
    7. 0.6m
    8. 0.5m
    9. 0.4m
    10. 0.3m
    11. 0.2m
    図5は、ジャンプグループの距離変化パターンのグラフです。∞mが5秒続いた後、距離d mへジャンプするグラフです。次の文はこの図の説明です。
    図5 ジャンプグループの距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。d = 2.0m, 1.5m, 1.0m, および0.9m〜0.2m (0.1mステップ)の11通り。
  4. ランダムグループ(Random

    距離がランダムに変化する条件のグループです。実際の歩行環境を意識した変化パターンです。次の4通りがあります。時間はすべて60秒間です。このグループは、仮想障壁を側面に再現する条件で(つまり2つのスピーカを左右に配置して)お聞き下さい。

    1. 斜めの壁(Slant wall

      壁の距離が連続的にランダムに変化するパターンです。斜の壁がある場所を歩いているときの変化に似ています。

      図6は、斜めの壁の距離変化パターンのグラフです。次の文はこの図の説明です。
      図6 斜めの壁の距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。
    2. 凸凹の壁(Rough wall

      壁の距離が非連続的にランダムに変化するパターンです。凸凹の壁がある場所を歩いているときの変化に似ています。

      図7は、凸凹の壁の距離変化パターンのグラフです。次の文はこの図の説明です。
      図7 凸凹の壁の距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。
    3. 出口(Exits

      距離が無限大になる部分が数カ所あります。出口のある壁を伝い歩きしているときの変化に似ています。

      図8は、出口の距離変化パターンのグラフです。次の文はこの図の説明です。
      図8 出口の距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。
    4. 柱(Poles

      通常は距離が無限大ですが、一瞬だけ距離が1m以下になる場所が数ケ所あります。柱が建っている道を歩いているときの変化に似ています。

      図9は、柱の距離変化パターンのグラフです。次の文はこの図の説明です。
      図9 の距離変化パターン。横軸は時間(秒)、縦軸およびグラフ中の数値は距離(m)。

トラック一覧

訓練CD1.0 トラック一覧表を示します。トラックは全部で42トラックあります。一覧表の各行の内容は、最初から順に、トラック番号 : 音の種類 : パターン : 時間となっています。

  • 01 : White : Move from 3m to 0.2m in 0.7m/s : 9s
  • 02 : White : Move from 3m to 0.2m in 0.4m/s : 12s
  • 03 : White : Move from 3m to 0.2m in 0.2m/s : 19s
  • 04 : White : Move between 3m and 0.2m in 0.7m/s : 56s
  • 05 : White : Move between 3m and 0.2m in 0.4m/s : 56s
  • 06 : White : Move between 3m and 0.2m in 0.2m/s : 56s
  • 07 : White : Jump from infinity to 2.0m : 15s
  • 08 : White : Jump from infinity to 1.5m : 15s
  • 09 : White : Jump from infinity to 1.0m : 15s
  • 10 : White : Jump from infinity to 0.9m : 15s
  • 11 : White : Jump from infinity to 0.8m : 15s
  • 12 : White : Jump from infinity to 0.7m : 15s
  • 13 : White : Jump from infinity to 0.6m : 15s
  • 14 : White : Jump from infinity to 0.5m : 15s
  • 15 : White : Jump from infinity to 0.4m : 15s
  • 16 : White : Jump from infinity to 0.3m : 15s
  • 17 : White : Jump from infinity to 0.2m : 15s
  • 18 : White : Random (Slant wall) : 60s
  • 19 : White : Random (Rough wall) : 60s
  • 20 : White : Random (Exits) : 60s
  • 21 : White : Random (Poles) : 60s
  • 22 : Environmental : Move from 3m to 0.2m in 0.7m/s : 9s
  • 23 : Environmental : Move from 3m to 0.2m in 0.4m/s : 12s
  • 24 : Environmental : Move from 3m to 0.2m in 0.2m/s : 19s
  • 25 : Environmental : Move between 3m and 0.2m in 0.7m/s : 56s
  • 26 : Environmental : Move between 3m and 0.2m in 0.4m/s : 56s
  • 27 : Environmental : Move between 3m and 0.2m in 0.2m/s : 56s
  • 28 : Environmental : Jump from infinity to 2.0m : 15s
  • 29 : Environmental : Jump from infinity to 1.5m : 15s
  • 30 : Environmental : Jump from infinity to 1.0m : 15s
  • 31 : Environmental : Jump from infinity to 0.9m : 15s
  • 32 : Environmental : Jump from infinity to 0.8m : 15s
  • 33 : Environmental : Jump from infinity to 0.7m : 15s
  • 34 : Environmental : Jump from infinity to 0.6m : 15s
  • 35 : Environmental : Jump from infinity to 0.5m : 15s
  • 36 : Environmental : Jump from infinity to 0.4m : 15s
  • 37 : Environmental : Jump from infinity to 0.3m : 15s
  • 38 : Environmental : Jump from infinity to 0.2m : 15s
  • 39 : Environmental : Random (Slant wall) : 60s
  • 40 : Environmental : Random (Rough wall) : 60s
  • 41 : Environmental : Random (Exits) : 60s
  • 42 : Environmental : Random (Poles) : 60s

聞き方のコツと練習方法

原理

障害物知覚の大きな要因の1つは障壁(物体)からの反射音(reflected soundです。反射音は、音源から直接届く直接音(direct soundよりも僅かに遅れて聴取者に届きます。この遅れ時間を、反射音の遅延時間(delay timeといいます。遅延時間は、聴取者と障壁(物体)の距離に比例します。遅延時間の変化によって起る聞こえ方の変化が、障害物知覚の重要な手がかりとなります。この聞こえ方の変化と障壁(物体)の距離との関係を学習することが、障害物知覚の獲得の第一歩です。

訓練CD1.0では、左チャンネルスピーカから直接音、右チャンネルスピーカから反射音を提示し、反射音の遅延時間によって障壁(物体)の距離を制御する方法を用いています。両者の音圧レベルとスペクトルは等しく設定して、初心者にも聴取しやすくしてあります。詳しい技術情報は次の参考文献を御覧下さい。

音の変化

ここでは、具体的な音の聞こえ方の変化について説明します。障壁(物体)の距離の変化に対して、音像音色の両方が変化します。

  1. 通常私達は周囲の音を聞くと、その音が何であるかだけではなく、その音が聞こえてくる方向・距離などの空間的特徴を同時に知ることができます。このような空間的特徴を伴った音の実在感を音像(sound imageといいます。例えば、オーディオで音楽を聞いている時に2つのスピーカの中央からピアノの音が聞こえる場合、この状態を2つのスピーカの中央位置にピアノの音像を生じるなどと表現します。

    障壁(物体)の接近に伴い、直接音と反射音の音像は次のように変化します(図10)。

    1. 距離が約2m以上離れている場合

      直接音と反射音の音像はそれぞれの到来方向に生じます。この状態では、障壁(物体)方向から到来する環境音と反射音との区別ができないため、障壁(物体)の存在を知ることは難しいのが普通です。

    2. 距離が約2m〜約1mの場合

      遅延時間が短くなることにより、直接音の音像のみが生じ、反射音の音像は消失します。この現象を先行音効果(precedence effectといいます。この状態では、障壁(物体)の方向が静まりかえり、同時に障壁(物体)方向に圧迫感や威圧感を生じることがあります。この変化を手がかりとして、障壁(物体)が近距離に存在することを知ることができます。

    3. 距離が約1m以下の場合

      直接音方向に生じていた音像が聴取者頭部付近に接近してきます。これに伴い、障壁(物体)方向の圧迫感・威圧感も増大します。これにより、障壁がかなり近距離に存在することを知ることができます。

    図10は、ここで説明した距離に対する音像の変化を図に表わしたものです。次の文はこの図のタイトルです。
    図10 音像の変化の様子。距離と音像の関係。
  2. 音色の変化

    直接音と反射音が同時に聞こえてくると、両者がお互いに干渉して音色(timbre)が変化します。この現象をカラーレーション(colorationといいます。一般にカラーレーションが起ると、聴取者はピッチ(pitch、即ち音の高さを知覚します。

    知覚されるピッチは遅延時間の逆数に等しくなります。ただし、遅延時間は距離に比例するため、結局ピッチは距離に反比例して一意に決まります。即ちピッチによって、障壁(物体)までの距離が分かることになります(図11)。

    ※ ピッチ(Hz)は、音速(m/秒)を距離(m)の2倍で割った値で与えられます。

    図11は、ここで説明した距離とピッチの反比例の関係をグラフに表わしたものです。次の文はこの図のタイトルです。
    図11 音色の変化の様子。距離とピッチの関係。

    なお、カラーレーションは一般に直接音と反射音以外の音による妨害を受けやすいため、実環境中では聞き取りにくいのが普通です。

練習方法

最初は白色雑音の接近グループ(トラック番号1〜3)を使います。距離の減少に伴い、音像が次の3つの順に変化する様子が分かりますか?

※ 3つの接近速度のうち、聞き取りやすいものを選んで聞いてみて下さい。

  1. 距離が約2m以上離れている場合

    左右チャンネルスピーカとも同じように音が聞こえる。

  2. 距離が約2m〜約1mの場合

    距離の減少に伴い、右チャンネルスピーカの音(つまり反射音)がだんだん小さく聞こえるようになる。それに伴い、顔の右チャンネルスピーカ側に圧迫感を生じる。

  3. 距離が約1m以下の場合

    左チャンネルスピーカ側に生じていた音像が接近してくる。右チャンネルスピーカ側の圧迫感も更に増大する。

また、距離が減少するに従って、音色が変化する様子が分かりますか? 音色は、距離が近いほど高い音となって聞こえます。音色の変化は音像の変化に比べて実環境中では聞き取りにくいので、この練習で音色の特徴をよく聞いて覚えておくことが重要です。

一般に、音像の変化は障壁(物体)が頭部の側面に存在する場合に、音色の変化は頭部の正面に存在する場合によく聞こえます。障壁(物体)を再現する方向を変えて試してみて下さい。参考までに、通常は音色の変化は実環境中では聴取しにくいため、障害物知覚は音像を手がかりにしやすい頭部側面の障壁(物体)に対する検出感度が高いのが一般的です。

距離の減少とそれに伴う聞こえ方の変化の関係が理解できたら、次は往復グループ(トラック番号4〜6)を使って接近・回避の際の聞こえ方の変化を体験してみて下さい。頭で考えずとも、障壁(物体)が近付いたり、遠ざかったりしている様子を体感することができますか?

続けて、ジャンプグループ(トラック番号7〜17)を用いて練習します。CDプレーヤのシャフル機能などを使うか誰かに手伝ってもらって11通りの距離を無作為に選んで再生し、ジャンプして現れた障壁(物体)がおおよそどのくらいの距離にあるか言い当てることができますか? 聴取する際には、再現された障壁(物体)に対し、頭を近付けたり遠ざけたり、また向きを変えたりして聞こえの変化を確かめてみて構いません。必ずしも正確に0.1m刻みで言い当てる必要はありませんが、おおよその距離が分かるように練習してみましょう。

そしていよいよランダムグループ(トラック番号18〜21)を使った練習です。4つのパターンはそれぞれ実際の歩行環境を意識したパターンです。斜めの壁では壁の連続的な距離の変化が分かりますか? 凸凹の壁では非連続的な聞こえ方の変化を手がかりに、壁が遠くなったか近くなったかが分かりますか? 出口では、壁の中に時々表れる開口部分を見つけられますか? では、何もないところに時々表れる柱を見つけられるでしょうか?

※ 通常、柱状の物体の場合、反射音の音圧レベルやスペクトルは距離によって大きく変化しますが、ここでは初心者に分かりやすいように変化を設けていません。

一通り白色雑音による練習が終わったら、次は環境音(トラック番号22〜42)を使って同じ練習をしてみます。環境音は白色雑音とは違い、何もしなくても時間的に自然に変化します。実環境中で障害物知覚を可能にするためには、この自然の変化と障壁(物体)による変化を混同しないように聞き分ける練習が必要です。がんばって挑戦してみて下さい。

よくある質問

Q&A 目次

Q&A 本文

  • A. 部屋の壁や床や天井からの反射音が邪魔をしているからです。聴取する際はなるべく反響の少ない部屋を選んで下さい。再生にもっとも理想的な部屋は無響室なのですが、普通自宅や盲学校にはそんなものはありません。でも反射音に邪魔をされない工夫をすることはできます。反響の少ない部屋とは、壁や床の表面が柔らかいまたは凸凹した材質でできている部屋や、壁や床に家具、カーテン、絨毯などが設置してあって壁や床の露出が少ない部屋、およびなるべく広くて壁からの反射音が届きにくい部屋などです。また、2つのスピーカを配置する際には、壁や床からなるべく離し、壁に平行または直角に並べない(例えば部屋の対角線上に並べる)などの対策をとると効果があると思います。
  • A. 必要ありません。数万円で市販されているごく普通の家庭用ステレオオーディオセットで十分です。もし物体が存在する実環境で録音した音をオーディオ機器で再生して物体を再現しようと思えば、特別に忠実度の高いHi-Fiオーディオセットが必要になるでしょう。それは、実環境中での障害物知覚の音響的手がかりが他の環境音に埋もれていて小さいレベルでしか録音されていないからです。しかし、訓練CD1.0は、計算機によって理想的に作成された障害物知覚の音響的手がかりだけを収録しているため、特別に忠実度が高くなくとも十分再現が可能です。ちなみに障害物知覚の音響的手がかりを再生するためには、原音の波形を忠実に再現できることではなく、音の到来方向や到達時間差を正確に再現できることがむしろ重要です。従って、クロストーク(左右チャンネルの信号が反対チャンネルに漏れる現象)が少ないこと、左右チャンネルの特性が一致していることなどが要求されます。現在市販されている家庭用ステレオオーディオセットは品質も上がって来ていますので、この点は心配ないと思います。
  • A. 音は聞こえますが意味がありません。必ず[4] 再生・聴取方法に従ってスピーカを設置して聞いて下さい。
  • A. 音は聞こえますが意味がありません。必ず[4] 再生・聴取方法に従ってステレオスピーカを設置して聞いて下さい。
  • A. クリック音は、環境音のジャンプグループ(トラック番号28〜38)および凸凹の壁(40)、出口(41)、または(42)において、距離が非連続的に変化する瞬間に聞こえることがあります。これは、音響データ作成の際、距離を非連続的に切り替える瞬間に音の振幅がパルス状になってしまうためであり、異常ではありません。訓練CD1.0を使った練習においては、このクリック音を手がかりに距離が変わったことが分かってしまう場合がありますが、実環境中にはこのクリック音は存在しませんので、手がかりにしないよう御注意下さい。このクリック音は、次回のバージョンアップでは解決したいと考えています。