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利尻火山 Rishiri Volcano

地質概説

利尻火山は北海道北部の日本海上に位置し(図1),浸食の進んだ成層火山体と(写真1),多数の側火山から構成される第四紀複成火山です(写真2).

利尻火山の活動は,白亜紀~新第三紀中新世の基盤岩上に,20万年前以降に開始しました.これら噴火活動は,噴火様式・噴出中心・噴出率・マグマの化学組成の違いから,初期,最盛期,末期の3つの活動期に分けられています.初期活動では,標高1300m程の安山岩成層火山体とデイサイト溶岩ドーム群をそれぞれ島中央部と山麓に誕生させました.約4万年前の最盛期になると,玄武岩~安山岩~デイサイト溶岩流が短期間に多量に流下し,標高1800m程の成層火山体を形成させます.そして最後の末期活動では,玄武岩およびデイサイト~流紋岩マグマが多数の噴出中心から少量噴出する活動へと変化しました.その活動は数千年前まで継続したと考えられています.現在では噴気活動を含め一切の火山活動を示す兆候は認められていません.

利尻火山は,他の第四紀火山から唯一離れた場所にあること(図1),著しく開析を受け火山体の内部構造が観察できること(写真1),寿命を終えたばかりの火山である可能性が高いことなど,日本の数ある火山の中でも大変ユニークな火山です.

石塚,1999,火山,vol.44より).


図1 利尻火山は最も近い第四紀火山(大雪火山)から,200km以上離れて位置します. 北海道の第四紀火山の中では唯一孤立した存在です.


写真1
利尻火山の火山体には浸食谷が発達し,山麓には広大な扇状地が形成されています.
正面の浸食谷では,山頂から高度差700mに渡って火山体の内部構造が観察できます.(1997年1月)


写真2 南山麓から見た利尻火山
利尻火山の南山麓には多数の側火山が認められます.写真中央部がスコリア丘(左から仙法志ポン山,メヌウショロポン山,鬼脇ポン山)
手前の池が(マグマ)水蒸気爆発によって形成されたマールです.(1993年7月)