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大木研究室
第18回  選別方法の分類2~どの性質で分けるか~

前回は、個別選別と集合選別の特徴についてお話ししました。今回は、対象物のどの性質を利用して選別するか?についてお話しします。ソータと呼ばれる個別選別機では、市販されている多くのセンサー(分析装置)が利用できます。これらは主に、物の形や特徴を検出する方法と、元素や分子構造など、どんな素材でできているかを検出する方法に分かれます。物の形や特徴を検出する方法は、簡単に言えば、コンベアに流れてくる廃製品の写真を1つずつ撮って、その特徴から「これは○○だ」と判断するようなイメージです。最近では、これをAIが判断して「これは○○だ」と決めます。現状では、木材やペットボトルなど、特徴が分かりやすいものが対象です。筆者らは、スマートフォンとかゲーム機などの電子機器の識別ができる装置を開発していますが、これらは種類が多いので検出が簡単ではありません。皆さんがお掃除ロボットを見たら、すぐに「掃除の機械だ」と分かると思いますが、それはどこかで学習しているからですね。50年前の人が見たら、何の機械か分からないと思います。AIも同じで、学習させないと正しく判断できません。ある程度は推定することもできますが、ゴミの種類はものすごく多いので、今は人が行うほど賢くは判断できません。

どんな素材でできているかを検出する方法は、主に電磁波を利用します。電磁波は理科で習ったと思いますが、例えば、私たちが見える光(可視光)も電磁波の1つです。可視光はさまざまな色の束で、リンゴが赤く見えるのは、主に波長の長い赤い光だけを反射するからですね。可視光では色しかわかりませんが、X線や近赤外光など、他の電磁波を照射すると、理屈はそれぞれに異なりますが、跳ね返ってきた電磁波を検出することで、元素や分子の種類などを知ることができます。これで、金属やプラスチックの種類を判定します。ただし、本格的な分析装置では真空にしたり、長い時間検出したりすることで精度良く分析できますが、リサイクルではコンベア上を高速で流れてくる廃製品を一瞬で検出しなければならないので、あまり精度良く分析できません。また、廃製品の表面の1部分は検出できても、中身や廃製品全体がどんな成分でできているかを知ることができません。1種類の素材でできている単純な物は問題ないですが、多数の素材でできている複雑な物は正確に判断できません。X線などの電磁波を透過させて中身を見ることはできますが、レントゲンと同じで影しかみることができないので、先ほどのAIと同様にそれが何かを学習させる必要があります。このように、膨大な種類があるゴミの選別は大変難しく、科学が進歩した現代においても、リサイクル工場では、幾つかの作業を人手に頼っています。近い将来、これらができるAIや検出技術が開発されることを期待したいですね。

第18回図

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