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大木研究室
第13回  なぜ単体分離が重要なのか

単体分離が「最も重要な操作の1つ」といいましたが、今回はその理由を説明します。まず、前回の図を思い出してください。「〇」と「×」で単体分離の良し悪しを説明しましたが、これを数値で示す方法が1つだけあります。「単体分離度」という指標です。例えば、チョコの方を注目し、チョコ全体のうち単体分離したチョコの割合(重さや体積)を単体分離度といいます。「度」といっていますが、温度などの度数でなく、湿度と同じ比率で、普通は百分率(%)や少数で表します。「〇」の場合は、全てのチョコが単体分離していますので、単体分離度=100%です。「×」の場合は、チョコが1つも単体分離していませんので単体分離度=0%です。もし、1粒でも単体分離したチョコがあれば、全体に対するその分の割合が単体分離度(例えば20%)となります。

さて、前回、破砕して単体分離させたあとも、まだ、粒子が混ざった状態ですから、この後に「選別」をする必要があるといいました。対象物を破砕して単体分離させた後、選別して回収するまでの流れを下の表にまとめています。表の①は、まず、何を破砕するかです。例えば、スマートフォンだけなのか、さまざまな製品が混ざっているのかによって「単体分離のしやすさ」が変わります。次に、②で破砕機に入れます。ここでも破砕機の種類によって「単体分離のさせやすさ」が変わります。その結果、破砕産物が得られます(③)。このときの「単体分離結果」を、「単体分離度」でなく感覚的に点数で示してみました。Aは90点、Bは40点。厳密ではありませんが、単体分離度90%と40%と思っても結構です。これは、これらの粒子がチョコとプレーンにどれだけ選別しやすいかの指標でもあります。その後、④で選別をしますが、ここでも選別機の種類などで選別精度が変わります。ここでは、割とうまくいって90点の選別ができたとします(⑤)。⑥が選別して回収されたものの結果です。普通は純度、回収率や分離効率という指標を用いますが、わかりやすくするために感覚的な点数で示しました。同じ90点の選別(C)をしたのに、(A→C)では81点、(B→C)では36点と、点数がだいぶ違いますね。正確ではないですが、単体分離と選別精度は掛け算的に効いてきます。つまり、いくら90点で選別(C)をしても、単体分離が40点(B)だと良い選別結果は得られません。選別にとってみれば、”100点満点なのに40点分の問題しか配られていないテスト”のようで、どんなに頑張っても40点以上は取れないのです。仮に合格点が80点だとしたら、少なくとも③で90点(A)になっていないと合格できませんね。このことからも、単体分離がいかに重要かが分かると思います。

第13回図

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