開発の背景
視覚障害リハビリテーション/教育における障害物知覚の訓練は、多くの場合、物体の存在による音の変化を実際に聴取して、経験的に体得していく方法がとられています。(図1)
しかしこの方法は、音の変化が初心者にはなかなか分かりにくく、修得に時間がかかるという問題を抱えています。
関喜一は、経験的ではなく、障害物知覚のメカニズムを考慮し、音響技術を用いて科学的に訓練ができないかと考えました。
システム概要
関喜一は、音響技術を用いて、物体による反射音を理想的に再現する装置を開発しました。この装置は、物体による音の変化を実環境よりもはるかに分かりやすく再現することができ、初心者の訓練に最適です。(図2)
しかしこのままでは大きくて高価なので、視覚障害リハビリテーション/教育の現場に導入可能な簡易版も同時に開発しました。(図3)
このシステムの開発により、障害物知覚の科学的訓練が夢ではなくなりました。
現状
現在、訓練システム簡易版が、国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科において、教育用として稼動中です。
しかし、たとえ簡易版といえども訓練システムというハードウェアの導入は現場に経済的負担をかけるため、2001年以降は、訓練システムが発生する訓練用音響をオーディオCDに収録し、オーディオソフトウェアとして提供しています。
参考文献
- Yoshikazu SEKI,
Systematic Auditory Training of Obstacle Sense for the Visually Impaired by using Acoustical VR System,
Human-Computer Interaction (Proceedings of HCI International '99) 2 , 999-1003 (1999). - [5] 関喜一、
障害物知覚の体系的聴覚訓練の提案
、第24回感覚代行シンポジウム予稿集、41-46 (1998).
研究資金
本研究の一部は旧 科学技術庁(現 文部科学省)の平成8年度〜平成10年度科学技術振興調整費による「高齢者・障害者に快適な社会のための参加支援工学に関する研究」の一環として行われました。