Perspective of Bayesian network


基本的にBayesian network における確率的推論は, 因果律if A then B に対応する 条件付確率 $P(B|A)$によって推論するものである。 Pは2値論理[if A then B]に連続値として主観確率を割り当てたものとして 考えることができるが、さらに$P(B|A)$を条件付確率分布とすると事象A,Bも 連続として考えることができる。 A,Bを連続に拡張したという点で関連するものとしてFuzzy論理、Fuzzy推論がある。

Toy Problemにたいしてこうした確率推論を用いてもあまりメリットはない。 従来のシンボル処理が$P(A)=1,0$の特殊な場合であるため 問題が従来の方法て処理出来る程度の複雑さならば、確率的推論の優位性を 見付けることは難しい。どちらかというと$P(A|B,C,D,E,F,.....)$のような 複雑さを簡略化、並列化することに意味があるような気がする。 したがって確率推論の特徴を活かすとすれば問題空間が密(連続的なmetricを持つ)で あり、アルゴリズムの記述が困難であるような問題について適用すべきである。

パターン認識などの低次の認知過程では従来から確率論的枠組での研究が進んでいる。 これは問題がまさに前述のような性質を持つためである。しかし、現状の処理システム では最終的な高次の処理としては2値論理へと還元されている。(連続値のまま処理が できず次のレベルへはargmaxなどがとられる) 今後の課題として重要となるのは高次、あるいは低次から高次へかけての中間的段階の 認知過程であると思われる。 また従来バックトラックなどによって行われて来た帰納的な処理もベイズ定理の適用 によって容易に行えるかもしれない。

また原理的にはシンボル処理によって連続値が取り扱えないことはなく、符号化や演算 ルーチンの工夫などによって連続値的な情報を効率的に扱うことができる。したがって シンボル処理を越えるためには原理的な優位性だけではなく実際的、工学的な側面から の優位性を強調することが必要となる。こうした観点から考えると確率的推論では 並列処理を前提とした処理モジュールの構成などにも常に目を配る必要がある。 確率分布を扱う点でBoltzmann machineなどを利用できることからニューラルネット ワークの応用としての意義もある。


MOTOMURA Yoichi / 本村 陽一 (motomura@etl.go.jp)