方向マンモグラム上の病変の3次元位置推定支援ソフトウェア

       共同研究者:R. Highnam、M. Brady(Oxford大)、東野英利子(筑波大病院)

概要

本ソフトウェアは、異なる方向から撮影される乳房のX線画像、Cranio-Caudal(CC) viewとMedio-Lateral Oblique(MLO) view (もしくはML view)に対して、

1) 一方向で現れる病変の位置から、他方向画像においてその病変の現れる位置を予測し、

2) 両画像上で検出された病変の3次元位置を推定し、画像情報から復元した3次元乳房上に提示する.

原理

これらの情報は、計算機上で、撮影時の圧迫による乳房の変形, フィルムへの投影などの撮影過程をシミュレーションすることにより得られる。乳房の変形はとても複雑で忠実なシミュレーションはほぼ不可能であるが、簡易化したモデルを用いて、精度が粗くではあるが実現している。 例えば、CC画像上での一点は、右図中の青い矢印に沿った過程のシミュレーションにより、MLO画像上の青い線上近辺にその対応位置が観測されると予想される。この線の近傍、赤点の位置に対応特徴が観測されれば、緑点線に示すようにその位置をバックトラックすることにより,非圧迫状態の乳房上での病変の3次元位置を推定できる。

推定精度

他画像に現れる対応病変位置の予測に関しては、英国内の症例約30例、日本国内の症例約20例で実験を行い、約半数で2mm以下、大多数で10mm以下の精度が得られることを確認している。
3次元位置推定に関しては、ほぼ同時期に撮像されたMRIでも検出された9例の病変を用いて、MRI上での位置との比較を行った。その結果、深さ方向に浅く推定される傾向があるものの、正面図における乳頭から見た方向はほぼ+-30度以内、乳頭からの距離は約1cm前後の精度が得られた。

まとめ

今までは得られなかった、マンモグラムからの病変の3次元位置推定が可能となり、読影時の補助として、またその後の精密検査、治療方針の参考として有用であると考えられる。

ノート型パソコンのWindows上など、一般的な計算機環境で作動する、移植簡易性も長所である。

乳房の変形シミュレーションの改良により、精度をさらに向上させることが可能である。デジタルマモグラフィ検査機器と直結させ、医師の診断補助に役立てることも検討したい

参考文献

1) Y. Kita、E. Tohno, R. Highnam、M. Brady: “A CAD system for the 3D location of lesions in mammograms”, Medical Image Analysis,Vol. 6,No.3, pp.267-273、2002

2) 喜多 泰代、 Ralph Highnam、Michael Brady:"対象の変形を考慮した乳部ステレオX線像間の対応手法", 情報処理学会論文誌、第40巻 第8号、pp.3209—3218、1999

3) Y. Kita, R. Highnam and M. Brady: "Correspondence between different view breast X rays using curved epipolar lines", Computer Vision and Image Understanding, pp. 38-55,2001