わたしが1999年の9月からの1年間併任した産学官連携推進センターは当時、実は2人しか働いていなかった。確かに名前を見るといかにも仕事がなさそうな部署ではあるのだが、実は、これがそうではなかった。
ホームページの更新、展示会への出展や特許の出願、あるいは、プレス発表とそれなりに派手な仕事もあるにはあったが、一番厄介で、かつ、時間を割かなくてはならなかったのは電話相談であった。
この部署に併任になる時から遡ること7年。1992年10月1日に計量法が改正されたのだが、SI(国際単位系)化を進めるために、それ以降使えなくなる単位ができてしまったのである。ただし、急峻な改定は難しいとのこともあり、単位によっては猶予期間を設けて徐々に移行させるようにしたのである。ミリバール(mb)からヘクトパスカル(HPa)への移行は記憶に残っておられる方も多いことと思う。ちなみに、気象庁の天気予報からmbが消えたのは1992年11月30日だった。
さて、その最終猶予期間7年間。つまり、全ての単位は1999年9月30日までに切り替えなければならなかったのだ。
そこで困った人たちが出てきたのである。
単位の切り替えをスムーズに進めるため、1999年3月に通商産業省(当時;現:経済産業省)が表題のようなガイドブックを出している。
ところで、相談を受け始めた当所、電話で相談してくる人の大半が「SI化の微妙な問題に関する質問なんですけど...」と切り出してくるのが不思議だったが、実はそれがこのガイドブックが存在したからだということに後から気がついた。このガイドブックの「はじめに」に次のようにある。
そして、巻末にはこうある。
(1)と(2)を見比べてほしい。なるほど。これは(2)にかけたくなるよなぁ。
それでは、どんな「相談」があったのか一部ご紹介しよう。実際にあった質問に対してわたしの回答を載せた。文字にすると一行だが、実際には何時間に及ぶやりとりがあったものも少なくない。
計量法の中で標準となるべきもの「秒」もしくは s を示しているので、それに従っていただくのがベストだが、表記について罰則を伴うものではない。
単位記号は、計量法の中で標準となるべきものを示していますが、表記に関しては罰則伴う規定はありません。
原則的には単位(記号)の中にその数値のもつ条件を含めるべきではない。Pa と共に添え字など適当な但し書きをつけてほしい。
ケースバイケースだと思う。
読み手が「質量」と「力」を混同しないようにすればいいのではないか。
わかるように書いてください。
わたしもそう思う。残念ながら。
法定計量単位としては使えない。時間の経過を示す目安としては使用できる。
rad/s を使ってほしい。
Bq が使えるような量ではないのなら、法定計量単位として定められた72量に入ってないということなので、特に規定するものではない。
SI 単位ではないが、使用できる単位の中に rpm は含まれている。
過重が常に鉛直方向を向くのなら、「吊り下げることのできる質量」ということで従来表記を使用してもいいように思う。「力」ではなくあくまで「質量」で押し通すことができるなら。
カタログなどで無理にメートルに変換したものを載せると余計混乱するだろうから、仕様書に書くときだけ変換し、ついでに、参考値として付すのがベストだろう。
かまいません。
mW (=10^(dBm/10)) を使ってください。
そのまま使ってください。
Cal にはいわゆる15度Cカロリー など数種類が存在する。それに合った係数をかけてください。
ここでいう 100kg は 100kg'f'のことであり、これを N へ変更していただきたい。これらの単位間の換算式は 1kgf=9.8N として、100kg/cm^2 は 980N/cm^2 とすればよい。
いいんじゃないか。
入らないでしょう。
そんなわけありません。
今回の改変が装置全体あるいは、計測・表示部に及ぶ場合は取り替えていただきたいが、そうでない場合は、法律の運用でカバーできるのではないか。ただし、この場合の kg は素性がよろしくないので、対処されるのが望ましい。
それが直接取引や証明に使われるとしたら問題ですね。
自分で調べてください。
通信速度とここでいう速度は違います。bps しか使いようがないと思います。
垓・じょ(のぎへんに「予」という漢字)と続きます。
計量行政室に問い合わせてみてくれ。ちなみに、あくまで「計量法」は「計量法」ですが・・・。
一応計量行政室に問い合わせてみてくれ。
歴史的な背景が大きいのだろう。よく使われる単位であることから急峻な改革はできなかったからだと思われる。
ppm, ppb は SI ではありません。
自分で調べてください。