計量単位の相談

2004/07/08 作成

思い出話

計量研究所産学官連携推進センター

わたしが1999年の9月からの1年間併任した産学官連携推進センターは当時、実は2人しか働いていなかった。確かに名前を見るといかにも仕事がなさそうな部署ではあるのだが、実は、これがそうではなかった。

ホームページの更新、展示会への出展や特許の出願、あるいは、プレス発表とそれなりに派手な仕事もあるにはあったが、一番厄介で、かつ、時間を割かなくてはならなかったのは電話相談であった。

新計量法

この部署に併任になる時から遡ること7年。1992年10月1日に計量法が改正されたのだが、SI(国際単位系)化を進めるために、それ以降使えなくなる単位ができてしまったのである。ただし、急峻な改定は難しいとのこともあり、単位によっては猶予期間を設けて徐々に移行させるようにしたのである。ミリバール(mb)からヘクトパスカル(HPa)への移行は記憶に残っておられる方も多いことと思う。ちなみに、気象庁の天気予報からmbが消えたのは1992年11月30日だった。

さて、その最終猶予期間7年間。つまり、全ての単位は1999年9月30日までに切り替えなければならなかったのだ。

そこで困った人たちが出てきたのである。

通商産業省発行「新計量法とSI化の進め方」ガイドブック

単位の切り替えをスムーズに進めるため、1999年3月に通商産業省(当時;現:経済産業省)が表題のようなガイドブックを出している。

ところで、相談を受け始めた当所、電話で相談してくる人の大半が「SI化の微妙な問題に関する質問なんですけど...」と切り出してくるのが不思議だったが、実はそれがこのガイドブックが存在したからだということに後から気がついた。このガイドブックの「はじめに」に次のようにある。

また、新計量法やSI化に関する疑問点は、巻末に記載の新計量法相談窓口にご相談くださるか、参考文献・規格をご覧になることを推奨します。

そして、巻末にはこうある。

相談窓口
 
(1) SI化及び計量法全般について
通商産業省機械情報産業局****室
〒100-**** 東京都千代田区霞ヶ関****
TEL 03-****-****
 
(2) SI化特有の微妙な問題に関する質問について
通商産業省工業技術院計量研究所産学官連携推進センター
〒305-8563 茨城県つくば市梅園*−*−*
TEL 0298-**-****

(1)と(2)を見比べてほしい。なるほど。これは(2)にかけたくなるよなぁ。

それでは、どんな「相談」があったのか一部ご紹介しよう。実際にあった質問に対してわたしの回答を載せた。文字にすると一行だが、実際には何時間に及ぶやりとりがあったものも少なくない。

単位記号や用語

時間を表す単位「秒」を sec と表記して構わないか。

計量法の中で標準となるべきもの「秒」もしくは s を示しているので、それに従っていただくのがベストだが、表記について罰則を伴うものではない。

SI で引張り強さ/降伏点の単位は N/mm^2 ですが、高炉メーカーのミルシートの中には N/MM2 とミリメートルの所が大文字になっているのが有ります。問題ありますか。

単位記号は、計量法の中で標準となるべきものを示していますが、表記に関しては罰則伴う規定はありません。

「15℃のときの」圧力を示したい。どういった単位を使えばよいか。

原則的には単位(記号)の中にその数値のもつ条件を含めるべきではない。Pa と共に添え字など適当な但し書きをつけてほしい。

圧力の単位は絶対圧なのかゲージ圧なのかを必ず明記しなければならないのか?

ケースバイケースだと思う。

「重量」という単語をカタログの中で使用してはいけないのか。

読み手が「質量」と「力」を混同しないようにすればいいのではないか。

濃度を表す % では「質量百分率」なのか「体積百分率」なのかがわからなくなるのではないか?

わかるように書いてください。

温度の差を表すのに degree を使いたい。℃だと気持ち悪いのだが。

わたしもそう思う。残念ながら。

単位の可・不可

時間の単位として「日」や「年」を使用してはいけないのか。

法定計量単位としては使えない。時間の経過を示す目安としては使用できる。

角度の単位で度や分が使えるなら、角速度の単位で度/秒といったものは使用してもいいのではないか。

rad/s を使ってほしい。

cps (1秒あたりの放射能のカウント)は使えるか?

Bq が使えるような量ではないのなら、法定計量単位として定められた72量に入ってないということなので、特に規定するものではない。

角速度の単位 rpm は計量法で使用可能か?

SI 単位ではないが、使用できる単位の中に rpm は含まれている。

クレーンを作っているのだが、やはり耐荷重 250kg については 2450N としなければならないのか。

過重が常に鉛直方向を向くのなら、「吊り下げることのできる質量」ということで従来表記を使用してもいいように思う。「力」ではなくあくまで「質量」で押し通すことができるなら。

液晶や CCD の大きさはインチで表す。これはいかんということだな。

カタログなどで無理にメートルに変換したものを載せると余計混乱するだろうから、仕様書に書くときだけ変換し、ついでに、参考値として付すのがベストだろう。

製品概要を述べる資料において、ラックマウントに収める形のサーバーは「10U占有」などと表記していいのか。

かまいません。

dBm は使えるのか?

mW (=10^(dBm/10)) を使ってください。

印刷品質 dpi はどうすりゃいい?

そのまま使ってください。

Cal(カロリー)を J(ジュール)に変換する式がいくつかあるんだけど、どれを使えばいい?

Cal にはいわゆる15度Cカロリー など数種類が存在する。それに合った係数をかけてください。

コンクリートの強度を表す従来単位の 100kg/cm^2 を SI ではどう表せばよいのか。

ここでいう 100kg は 100kg'f'のことであり、これを N へ変更していただきたい。これらの単位間の換算式は 1kgf=9.8N として、100kg/cm^2 は 980N/cm^2 とすればよい。

書類の取り扱いなど

仕様書は昨年の7月のうちに提出し、9月末までに契約書も交わした。10月以降の仕様改変について、改変部分以外でも単位を変換しなければならないのか。

いいんじゃないか。

「官公庁に提出する資料」に「公立の小中学校に納める製品のカタログ」は入るのか?

入らないでしょう。

法定計量単位は長さや質量など物体の「多い少ない」を表すものだけが重要で、電圧などは別に従う必要はないのだろ?

そんなわけありません。

平成11年10月より前に納めた機器を改変する場合、張力の単位(kg)はすべて取り替える必要があるか?

今回の改変が装置全体あるいは、計測・表示部に及ぶ場合は取り替えていただきたいが、そうでない場合は、法律の運用でカバーできるのではないか。ただし、この場合の kg は素性がよろしくないので、対処されるのが望ましい。

ゴルフ場のコースはヤードで表しているではないか!

それが直接取引や証明に使われるとしたら問題ですね。

子供相談室?

どうして dBm とかいう単位が mW とは別に存在するの?

自分で調べてください。

通信速度は bps で表しているが、速度は m/s とのことなので、それに変換する方法を教えてください。

通信速度とここでいう速度は違います。bps しか使いようがないと思います。

一十百千万億兆京・・・その上は?

垓・じょ(のぎへんに「予」という漢字)と続きます。

「新」計量法は英訳するとどうなる?

計量行政室に問い合わせてみてくれ。ちなみに、あくまで「計量法」は「計量法」ですが・・・。

「新」計量法の全文英訳はどこで手に入るか?

一応計量行政室に問い合わせてみてくれ。

接頭語は g につくのに、質量の基本単位は kg とはどういうことだ?

歴史的な背景が大きいのだろう。よく使われる単位であることから急峻な改革はできなかったからだと思われる。

「国際文書第7版国際単位系(SI)」という本に ppm や ppb といった単位が載ってないのだが・・・。

ppm, ppb は SI ではありません。

SI 単位でないのに法定計量単位に入ってるものって誰が決めたのですか?

自分で調べてください。