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SystemMixin plug-in users manual
◆ SystemMixin plug-in の目的
SystemMixin plug-in は、 EPP のような拡張性の高いシステムを作るための
機能を、 Java 言語に追加します。
SystemMixin plug-in の機能を使うことより、
プログラムを system mixin と呼ぶ細かい部品に分割して記述することができます。
system mixin は、オリジナルのシステムに対する差分のみを抜き出して
記述するもので、いわば unix の patch file のようなものです。
EPP はプリプロセスを開始する前に、 #epp で指定された plug-in を
load します。この plug-in は、1つあるいは複数の system mixin から
構成されます。
plug-in によって定義された「変更部分の差分」を、
オリジナルの EPP に追加することによって、
EPP のプログラムが拡張されることになります。
◆簡単な例
従来のオブジェクト指向言語では、ネストした if 文を含むメソッドは、
例えば以下のように書けます。
--------------------------------------------------
class Foo {
void m(String d){
if (d.equals("B")){
doB();
} else if (d.equals("A")){
doA();
} else {
doDefault();
}
}
--------------------------------------------------
このメソッドに、例えば "else if (d.equals("C") { doC() }"
といった処理を追加したいとします。
もし、オリジナルのソースコードを edit したくなければ、
継承を使うしかありません。
継承を使えば、次のように書けます。
--------------------------------------------------
class Bar extends Foo {
void m(String d){
if (d.equals("C")){
doC();
} else {
super.m(d);
}
}
--------------------------------------------------
しかし、この場合、オリジナルのクラス Foo は変化せず、
新しい別のサブクラス Bar を定義しなければなりません。
もしプログラムの他の場所で、 class X extends Foo {...} とか
new Foo() のように Foo の名前が使われていたら、
それを class X extends Bar {...} とか new Bar() に
変更する必要があります。
ほとんどのオブジェクト指向言語では、このように、
「メソッドとそれが属するクラス名」を変更しないでメソッドの動作を
拡張することはできません。
さらに、もともとのソースコードから "else if (d.equals("A") { doA(); }" という
部分だけ削除したい、といったことは絶対に不可能です。
system mixin の機能は、この問題を解決します。
上のプログラムを、3つの system mixin に分割して
記述すると、以下のようになります。
--------------------------------------------------
SystemMixin Skeleton {
class Foo {
define void m(String d){
doDefault();
}
}
}
SystemMixin A {
class Foo {
void m(String d){
if (d.equals("A")) { doA(); } else { original(d); }
}
}
}
SystemMixin B {
class Foo {
void m(String d){
if (d.equals("B")) { doB(); } else { original(d); }
}
}
}
--------------------------------------------------
このように、従来は一枚岩でしか書けなかった「1つのメソッド」を、
複数の「メソッドの断片」に分割して記述することができます。
そして、新しい system mixin を追加することで、
クラス名とメソッド名を変更することなしに、メソッドの動作を
拡張することができます。
(従って、もし Foo に subclass がある場合、メソッド m の変更は、
すべての subclass に自動的に波及します。)
また、プログラムの起動直前に、特定の system mixin を削除することもできます。
◆シンタックス概要
SystemMixin plug-in は、 Java 言語の上に、
いわば全く別のオブジェクト指向言語を実装します。
この言語には Ld-2 (description language version 2)という名前が
ついています。
実装の都合上、 system mixin を使って定義したクラスは、
Java のクラスとは互換性がありません。
このオブジェクト指向言語 Ld-2 では、 Java と違って以下のような
シンタックスを用います。
インスタンス生成 newObj ClassName(args ...)
メソッド呼び出し obj!methodName(args ...)
自分のメソッド呼び出し methodName(args ...)
自分のインスタンス変数アクセス self!varName ( self! は省略不可)
自分自身 self
オリジナルのメソッド呼び出し original(args ...)
system mixin で定義されたクラスのインスタンスは、
Java からは Obj という型のデータとして扱われます。
例えば、 Foo というクラスのインスタンスを生成し、
それの m というメソッドを呼び出すには以下のように書きます。
Obj foo = objNew Foo();
foo!m(d);
◆ DefineModifier と MethodRole
・異なった作者による複数の system mixin をたくさん組み合わせていくと、
メソッド名が思わぬ衝突を起こすことがあり得ます。
また、ある system mixin が動作するために必要な他の system mixin を
指定し忘れるということも起こり得ます。
このような事態をある程度機械的に検出し警告するための宣言が、
DefineModifier と MethodRole です。
これらの宣言の正確なシンタックスは、「シンタックス」の章を見て下さい。
・ DefineModifier
SystemMixin の中で定義するクラスおよびメソッドの断片には、
define というキーワードをつけることができます。
system mixin をつなぎ合わせた時、すべてのクラスおよびメソッドの断片は、
次の条件を満たすように並んでいなければなりません。
「最初に define がつけられた断片が1つあり、
その後に define のない断片のみがつづくこと」
define のついた断片が同じ名前で複数回あらわれたり、
define のない断片が最初にあらわれると、エラーとなります。
たとえば、「簡単な例」の章の3つの system mixin では、
クラス Foo のメソッド m は、
SystemMixin Skeleton の class Foo の m (define あり)
SystemMixin A の class Foo の m
SystemMixin B の class Foo の m
という3つのメソッドの断片がつなぎ合わさったものであり、上で述べた
条件を満たしています。
・ MethodRole
MethodRole の宣言は、現在の実装では無視されます。
意味的には、それぞれの MethodRole は次の場合に指定します。
abstract インターフェースのみを定義し実装は定義しないメソッド
default redefine されてもよいメソッド
implement 普通のメソッド
extend 他のメソッドを差分的に拡張するメソッド
redefine 他のメソッドを上書きして再定義するメソッド
◆ BeforeLoadingPlugIn
BeforeLoadingPlugIn 文を使って、
plug-in がロードされる時に実行するコードを書くことができます。
例えば、ある plug-in が、他の plug-in (例えば Symbol plug-in )を必要とする
場合は、 package 宣言と import 宣言の後
(文法的には TypeDeclaration が来るべきところ)に、
次のように書きます。
BeforeLoadingPlugIn{
requirePlugIn("jp.go.etl.epp.Symbol.PlugIn");
}
requirePlugIn は、もし指定された plug-in がまだ load されていなければ、
それを load して、 setup list に追加します。
epp/sample/PComp/PlugIn.java には、別の使用例があります。
ここでは、 setup list の中身を調べて、本来の Java の比較演算の文法を
定義する mixin を取り除いています。
◆ Ld-2 と Java との違いおよび注意点
・すべてのインスタンスは、 Obj 型です。
・メソッドの overload はできません。
・ define class したら、必ずその SystemMixin 内で、
コンストラクタを定義しなければなりません。
・コンストラクタには return type として void を書かなければなりません。
コンストラクタは、インスタンス生成時に自動的に呼び出されるという
点を除けば、普通のメソッドと同じです。
・インスタンス変数は、コンストラクタで初期化される前に、
すでに Java で定義される「デフォルトの値」で初期化されています。
明示的な初期化をし忘れてもコンパイルエラーは出ません。
・ super はありません。
・メソッド a の中から super class の別のメソッド b を呼び出すには、
Java では super.b() と書けばできますが、 Ld-2 ではできません。
◆エラーメッセージ解説
SystemMixin plug-in で変換されたソースを javac でコンパイルすると、
見ただけでは意味のわからないエラーメッセージが出ることがあります。
しかし、以下の説明を読めば、たいていの場合は原因が推測できると
思います。
How to decode error messages during Javac
-----------------------------------------
"Superclass M_foo of class CompilationUnit_Epp_initEmitTable not found."
or
"Incompatible type for constructor. Can't convert SSS_CCC_foo to java.lang.Object."
You wrote an Ld method "foo" in your source code,
but the the compiler cound not find the declaration of the method.
Please check the followings.
1. Do not forget specifying "define" modifier.
2. Translate Java file which contains method declaration with "define"
before compiling Java file which extend the method.
3. Check the spell of the method name.
"Class M_foo not found in type declaration."
You wrote an Ld method invocation "foo()" or "obj!foo()",
but the compiler cound not find the method declaration.
So, this message can be interpreted as "Method foo not found."
Please check the spell of the method name.
"Method redefined with different return type: ..."
Please check the return type of the Ld method
written in the indicated line.
"No method found matching call(Obj,Object[],int)"
You wrote method invocation foo(), obj!foo() or original()
but the method foo requires additional arguments.
Please check the method definition.
The other error messages may be easy to understand as normal javac errors.
◆シンタックス
SystemMixin plug-in によって拡張された構文のシンタックスです。
記法は JLS1.0 で使われているものに準じます。
(特に断りのない限り、大文字ではじまるものが non-terminal で、
小文字ではじまるものはいわゆる「キーワード」です。
また、 _opt が付いているものは、それが省略可能であることを表します。)
Syntax
------
CompilationUnit
<original alternatives>
SystemMixinDefinition
SystemMixinDefinition
SystemMixin { LdClassDeclarations }
# Note: The "SystemMixin" in this rule
# is not a non-terminal. It is a token.
LdClassDeclarations
DefineModifier_opt class Identifier { LdClassBodyDeclarations }
LdClassBodyDeclarations
LdClassBodyDeclarations LdClassBodyDeclaration
LdClassBodyDeclaration
FieldDeclaration
LdMethodDeclaration
LdMethodDeclaration
DefineModifier_opt MethodRole_opt Type MethodDeclarator Throws_opt
DefineModifier
define
MethodRole
abstract
default
implement
extend
redefine
Primary
<original alternatives>
LdInstanceCreation
LdFieldAccess
LdMethodInvocation
OriginalMethodInvocation
LdInstanceCreation
newObj Identifier ( ArgumentList_opt )
LdFieldAccess
Primary ! Identifier
LdMethodInvocation
Primary ! Identifier ( ArgumentList_opt )
OriginalMethodInvocation
original ( ArgumentList_opt )
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