技術メモ:3次元形状処理

3Dプリンタの使用記録

ここでは3Dプリンタの使用記録を載せます。 3Dプリンタの一般的な解説はこちら

使用機器の概要

ここでは装置もソフトウェアも既存製品を使用しています。 2013年1月にBits from Bytes社の3DTouch(ダブルヘッド)を購入しました。 樹脂を溶融して積層するタイプで、近年増えてきた比較的安価な製品のひとつです。 組立不要で箱から出したらすぐ使えるところがポイントです。

使用材料について

ダブルヘッドなので、2種類の材料を扱うことができます。 購入した材料で言うと、ABSかPLAを2色組み合わせるか、ABSとPLAを1色ずつ組み合わせることができます。

購入した時点でのマニュアルには、ABSは反りやすいので造形材料はPLAを使う方がよいとの記述がありました。 なので、基本的にABSをラフト(土台部分)に、PLAを本体の造形に使用しています。 もともとPLAはサポート材として使用されることを想定していたはずですが、 実際に平たくて面積が大きめのものを造形すると、ABSは反ってPLAは反りませんでした。

PLAで造形することに関して特に問題は感じていなかったのですが、使う際には注意点があります。

使い始めてしばらくして、あるとき造形材料のPLAが途中で切れて供給がストップして、 造形に失敗したことがありました。その断面はポキッと折れたような状態でした。 材料を供給するチューブの中をリールに巻かれた線状の材料が送られるのですが、 リールに巻かれた状態の形からチューブを通るときの変形で力が加わるようなので、 そのときは材料のリールに欠陥があって途中で切れただけかと思ったのですが、 しばらくしてまた同じことが起きました。

試しに折れた材料の一部を折り曲げてみると、全然折れません。 PLAはかなり粘りのある材質らしく、力を加えると曲がりますが、なかなか折れません。 いろいろ調べた結果、冷凍庫で冷やして力を加えると、ポキッと折れることがわかりました。 このことから、使用し始めた2月頃、平日は毎日部屋に暖房が入っていて暖かく、 暖房の切れている朝方でも冷凍庫ほどの寒さにはならなかったのが、 週末明けの月曜朝などはそれぐらいの寒さで折れやすい状況になって、 チューブ内で材料を変形させる力が大きいところで折れるという現象が生じたのだろうと考えています。 つまり、冬に使うときは折れてないか確認してから使うようにするか、 終わったら材料を外しておく必要があります。

(2013年4月18日追記)
4月になって暖かくなってきましたが、また折れてました。 冷凍庫ほどの寒さでなくても折れるようです。 またいろいろ実験してみたところ、力を加えた状態で長時間経つと、ポキッと折れました。 寒いと折れやすくなるのは間違いないですが、 むしろ応力が高い状態で長時間経つ方が効いている感じです。

(2013年4月22日追記)
PLAに力を加えて長時間放置する実験を行いました。 下図左が使用したPLAです。 このように、自然な状態ではリールに巻かれたときの径ぐらいに曲がっています。 それを下図右のように、金属製の書庫にマグネットクリップを使って貼り付けて、 湾曲を伸ばすように固定しました。参考までに温度計も置いてあります。 この状態でUSBカメラで1秒に1枚画像を撮影して観察を開始しました。

この日は20℃ぐらいで比較的暖かかったですが、4時間ぐらい放置していたら下図のように折れました。

折れるかどうか、またどれくらいの時間で折れるかは、材料の状態や温度に依存するようですが、 温度が高くても材料の状態によっては折れることが確認できたので、 PLAに関してはなるべく使い終わったら外しておくのが良さそうです。 折れたまま放置しておいたら、チューブの中で何箇所も折れてしまって、 取り出すのに苦労しました。

使用例:USBカメラマウントの作成

手持ちのUSBカメラにシャープカットフィルタを取り付けるためのカメラマウントを自作してみました。 使用したシャープカットフィルタは可視光をカットして赤外光を透過するタイプのもので、 USBカメラで赤外線LEDの光だけを撮影するために使います。二つの部品でフィルターを挟み、 USBカメラのレンズ部分を差し込んで使います。 レンズ部分に固定するために、穴を開けたウレタンシートを利用しています。 下図左が完成後の写真で、下図右がUSBカメラに取り付けた写真です。

以下はレンズ部分を差し込む側の部品についての画像です。 下図左は、CADでモデリングしたデータの画面表示です。 SolidWorksで作成して、それからSTLファイルに書き出しました。 下図右は、3Dプリンタ付属のソフトウェアでSTLファイルを読み込み、 自動で造形用のデータに変換したところです。赤い部分が本体で、青い部分が土台を表現しています。

下図が、上記のデータを3Dプリンタで造形した結果です。 土台はABS、本体はPLAで作成しました。

概ね問題はなくできましたが、4つの突起にそれぞれ糸状の樹脂が付着していることがわかります。 このように、積層の合間に送り動作(何もせず移動)をするときに、 どうしても樹脂がスパッと切れずに糸を引くことが多いです。 たいていは終わってから除去すれば済むのですが、糸にある程度大きな塊が付着してしまったりして、 不要なコブが途中にできたりすることもありました。

また、4つの突起のように、断面積が小さくて高さがあるものは、 高すぎるとうまくいかないようです。 このぐらいでも、先端がだれてしまってあまり正確ではありません。

とはいえ、総合的には気をつけて使えば充分役に立ちそうです。

作成日 2013-04-01

最終更新日 2013-04-22