Whitesides教授について

Whitesides教授はセルフアセンブル研究のビッグなアイディアマンです。 教授は半導体産業で使われている光リソグラフィーとは異なる原理のソフトリソグラフィー技術を1993年に提唱されました。 無機表面の加工には、レジストと呼ばれる有機膜をマスクとして使いますが、最後にレジストをとりのぞく工程が必要です。 この方法で有機分子をパターニングすると、レジストと一緒に目的とする分子まで剥がれてしまうことがあります。 SCIENCE 289,1170 Fig.3より引用 ソフトリソグラフィーは有機分子を並べるのに適した手法で、 簡単にマイクロメートル・スケールの分子パターンが作製できるので、化学やバイオの分野で広まっています。 教授とは直接面識はありませんが、論文や記事の翻訳(「ナノ構造を作る新技術」日経サイエンス, 2001年12月号)で優れた仕事やお考えに接してきました。論文といっても人柄はおのずと反映されるもので、読んでいて実に楽しいものがあります。 判りやすい例として、学術論文におもちゃのようなモデルを使われたのには、びっくりしました。

その仕事は、表面に電極と発光ダイオード(LED)をつけたサイコロのような部品(図上)をたくさん用意し、熱い液体の中に入れて混ぜ合わせるというものです。 すると、電極に付けたはんだが溶け、部品同士が自然につながって構造と回路ができていきます(図下、このアイディアは教授が日本で天ぷらのかき揚げを食べたときに思いついたという…嘘)。あるサイコロの電極を電源につなぐと、別のサイコロの面についているLEDも赤く光ります(Gracias et al. SCIENCE 289 (2000) 1170.)。 これは将来、サイコロの代わりにもっと複雑で小型の部品(分子?)を作り、その相互作用によって自己集合する回路(ニューラルネットワークなど)を作る可能性を示す実験なのですが、コンピュータ・シミュレーションと違って実際に手で触れるものができるものは、訴える力が強いのです。 この仕事の学術的価値を疑う意見もありますが、こういう愉快な論文が掲載されるのも、大先生の証であるともいえるでしょう;-P。General Interest を重視する雑誌ですし。それはともかく、それまでセルフアセンブルの研究は単分子膜のような二次元系が中心でしたので、三次元のセルフアセンブル構造としても面白いと思いました。 想像してみてください、

下ごしらえした材料を天ぷら鍋に放り込んで、ほどよく揚がったら取り出して油を切るとデバイスができている
のですよ。

アイディアを出すだけでなく、どんどん実験を進めて論文にしてしまう。 論文検索したら、教授のグループからはほぼ毎週論文が出ている。 週刊ホワイトサイズですね。 これはかなわない・・・というわけで、我々は教授のグループが手がけていない材料を選んで研究をしているわけです。

ホワイトサイズ(George M. Whitesides)
ハーバード大学の化学・化学生物学科で自己組織化、ナノバイオロジー、ナノ構造作成などを研究している。 1964年カリフォルニア工科大学で学位を取得、 1982年よりハーバード大学。 1986-9年学部長。現在 Mallinckrodt Professor。

2003.10. 9.W.Mizutani@aist.go.jp
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