2010~2012年に、野外地質のひとつの可能性を探った記録です.現在では古い内容ですが、参考になることもあるので、アーカイブとして置いています.
本ページ以下ではいくつもの機器やソフトウェアを実際にテストしてみて気がついたことを中心に記します.同じようなことを試みるときの参考になれば幸いです.なお,この実験では今回用いた機器類の使用を特に推奨するものではなく,ひとつのケーススタディと見なしてください.また,印象はあくまでも野外での使用時のもので,室内でのデスクワーク等では当然違った結果になると考えられます.
ハードウェア
現在,利用している機器は以下の通りです.
- ポータブルPC:viliv X70
- デジタルカメラ: Pentax Optio W90
- GPS: Sony GPS-CS3K
- クリノメーター: GSI GeoClino
- 無線LAN機能付きSDカード:Eye-fi Pro
詳しくは,こちらの詳細ページへどうぞ.
ソフトウェア
現在,利用しているソフトウェアは以下の通りです.
- 地図ソフト:カシミール
- GIS:地図太郎 (plus)
- データ入力:Microsoft XML Notepad
- 入力補助 (クリップボード拡張ユーティリティー):Sanvient
- 入力補助 (スクリーンキーボード):PIGYソフトウェアキーボード
- 画像ビューアー・画像メモ:Faststone Image Viewer
- ベクターグラフィック:Inkscape
詳しくは,こちらの詳細ページへどうぞ.
手法・手順
野外で行うことは通常の地質調査と同じです.ただ,紙の地図の代わりに地図ソフトを,紙の野帳の代わりに入力ソフトを利用します.現在行っている観察記録手法は,以下の通りです.
- 地図ソフトまたはGISソフト上で観察ポイントを決定 (タップ).
- 固有の岩相IDを入力.緯度・経度値が固定されるので,そのままファイル保存.
- 記載用ソフトを起動し,同じIDを入力.
- 記載用ソフト上に観察内容をテキストで記載.
- 岩相ID名で記載用ソフトファイルを保存.
ソフトウェアを2種類起動することから分かるように,必要な情報も2つのファイルに分かれています.位置の情報は地図ソフトのファイルに,それ以外は記載用ソフトファイルに保存されています.最終的には岩相IDを基に,2つのファイル情報をマージします.
スケッチや写真は別個の画像ファイルとなります.これらにも位置情報等のメタデータを付加して管理します.
利点と課題
野外調査のデジタル化により,以下のようなメリットがあります.
- データの利便性が向上.デジタルデータの場合,検索性に優れ,目的に応じた再利用 (サンプルリスト・作業日誌作成,データの統計処理など) も容易.
- 清書が不要に.調査後に宿で行う整理作業の負担が軽減.
- GPSによるポジショニング.
- 入力補助 (コピペ機能) を活用した文字入力は,筆記より高速.
- スクリプトを利用した自動化.
- 現場で写真に直接メモを書き込み (スケッチ代替).
- チーム調査時のデータ統合が容易に.
一方,現状では以下のような欠点・課題があります.
- 野外での視認性に優れた液晶パネルを備えた,安価なポータブルPCがない.
- 安価でカスタマイズに優れた地図ソフトウェアがない.
- 現状では地図上でのフリーハンドの書き込みや,地質調査固有の記号表示ができない.このため手書きのルートマップに比べ,視認性に劣る.
- 手書き描画性能が低い.
- データの標準フォーマットがない.普遍的に情報共有・交換できない.
- 一般にハードウェアの防水・防塵性能,バッテリー性能が十分でない.
- 既存ソフトの場合,ペン入力を前提とした操作性になっていない.右クリックやドラッグの多用は×.
宿題
現状ではまだ満足できないので,以下のようなことを試してみたいと画策しています.
- スクリプト等を利用した入力補助の改善・進化.
- 海外製を含めた地図ソフトのテスト.
- WebGISを利用したシステムの検討.
- 資金を獲得して独自にソフトウェア・ハードウェアを製作.
一方で,現状では満足のいく結果が得られない場合でも,ハードウェアの性能向上によって使いやすくなる可能性は大いにあります.近い将来には,本当に使いやすいシステムができることを確信しています.