近藤 淳博士

Professor Jun Kondo
産業技術総合研究所名誉フェロー






金属の電気抵抗は温度を下げると共にに減少していくのが普通ですが、 磁性不純物を含む金属では減少していた抵抗があるところから逆に上昇をはじめるという現象が見つかっていました。 これが抵抗極小と呼ばれる現象であり、超伝導現象とともに長年にわたって未解決の問題となっていました。 この抵抗極小現象は、磁性不純物によって伝導電子が散乱されるというモデルを考えることにより説明できることが近藤先生によって示されました。 伝導電子が磁性不純物によって散乱を受けると、摂動論の高次項から電気抵抗に対数(logT)の温度依存性が現れ、その結果として抵抗に極小が生じることを説明できます。 (Tは温度を表わします。) これが近藤効果とよばれている現象です。磁性不純物と伝導電子との相互作用はs-d相互作用といわれる金属電子論において非常に普遍的なモデルであり、 近藤先生によりその重要性が認識され抵抗極小現象が解決されました。

抵抗極小現象の解決は、logTという対数項は絶対零度ではどうなるかという問題を提起しました。 logTは温度Tをゼロとすると無限大になってしまいますが、金属において実際に電気抵抗が無限大になるということはないからです。 これが近藤問題といわれた理論物理における大問題です。この問題はスピンのように内部自由度をもったダイナミカルなものと電子が相互作用するときに起こり、 より一般的にフェルミ面効果として捉えることができます。 近藤効果の理論は希土類化合物を中心とした重い電子系の研究において重要な役割を果たし、最近の量子ドット系の共鳴トンネル現象においては指導原理の役割を演じています。




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