トピック
廃製品リサイクル、選鉱、粒子解析などの研究を行っています。
ご興味のある方は、お気軽にご連絡ください(t-ueda[at]aist.go.jp [at]を@に変えてください)。
研究内容

廃小家電バッテリー検出

全国のリサイクルプラントで、廃棄物に混入した小型バッテリーによる火災リスクが大きな問題になっています。 バッテリーを内蔵していることが分かり辛い小型電化製品が多く、外見での判断は困難です。 廃棄物を透過X線撮影し、深層学習により混入したバッテリーを自動検出する技術・システムを開発しました。 より詳しい説明はプレスリリースをご覧ください。

廃小家電バッテリー検出

スマートフォン等の自動解体

自動自律化リサイクルプラントの構築を目指して、スマートフォン等の自動解体システムを開発しています。 リチウムイオン電池を傷つけることなく、筐体のネジ等のみを壊すという「スマートな解体」が必要になります。

有限要素法(FEM)遺伝アルゴリズム(GA)の 連成解析による基礎研究からはじめ、試作機を複数台作成してきました(左下図)。 プロジェクト実施中のため詳しいことは書けませんが、 X線撮影及び深層学習によりスマホの内部構造を分析し、 弱点を狙って解体するシステムを開発しています。 多くの機種で、筐体、基板、電池等の分離に成功しています(右下図)。

解体システム試作機 解体結果

基板から電子部品の剥離

ICチップ等の電子部品には有用な金属が多く含まれているため、リサイクルの関心が高まっています。 基板ごと粉砕して粉々にしてしまうと選別効率が悪くなるため、電子部品をなるべく無傷で剥離する(はぎ取る)必要があります。

個別要素法(DEM)遺伝アルゴリズム(GA) の連成解析による基礎研究からはじめ、実験計画法(DoE)高速度カメラ分析を活用した実験検討を行い、 チェーンミル(クロスフローシュレッダ―)ベースの試作機を開発しました。

電子部品剥離の高速度カメラ分析

電子部品の剥離状態の分析

電子部品の基板からの剥離状態を自動で評価したいと思いました。 電子部品の中で、貴重な金属を多く含んでいるICチップに注目しました(左下図)。

基板の表裏にICチップが付いているため、カメラ撮影では上手く分析できません。 そのためX線撮影パターンマッチングの組合せによる、自動分析システムを開発しました(右下図)。

ICチップのX線透過像 ICチップの自動識別(

鉱石粒子の分析(ステレオロジカルバイアス補正)

天然鉱山から鉱石を採掘し金属を回収するプロセスで、鉱石粒子の切断面の分析が行われます。 この際、本来3次元の粒子を2次元的に分析することになります。

しかし3次元と2次元の間には大きな誤差(ステレオロジカルバイアス)が発生します。 切断面の位置によって、3次元の中の一部分しか2次元で観察できないことが原因です(左下図)。 どれだけ多数の粒子を計測しても、ステレオロジカルバイアスは解消されません! (平均濃度などにはバイアスはかかりませんが、個々の粒子の状態に依存する単体分離度などのバイアスは解消されません)

独自に開発したシミュレータにより数億種類の粒子のデータを蓄積し、ステレオロジカルバイアスを補正する手法を開発しました。 X線CTによる実験検証では、開発手法によって(本来分からない)3次元データを推定できることが証明されました(右下図)。

本機能を備えたプログラム(S-BIC)を開発済みです。

2次元と3次元の誤差 実験結果

鉱石粒子の測定数

鉱石粒子の測定数を増やすほど、測定結果のばらつきは小さくなります(下図)。 しかし、この関係性について定式化されておらず、闇雲に多くの粒子を測定する傾向がありました。

統計学的な方法により、測定粒子数と測定結果のばらつきの関係を定式化し、 「▲%以内のばらつきに抑えるためには、●個の測定が必要!」と計算できるようにしました。 本機能を備えたプログラム(LISA)を開発済みです。

しかし、どれだけ多くの粒子を測定しても、ステレオロジカルバイアスを解消することはできないため、 補正技術が必要になります(下図)。

測定数とばらつきとステレオロジカルバイアス

粒子の形状・サイズの2次元→3次元推定

粒子(細胞、結晶、空隙などを含む)の2次元断面を顕微鏡で計測することがあります。 切断面の位置によって2次元断面の形状・サイズは大きく変わってきます(左下図)。 そのため、2次元の計測結果から、本来知りたい3次元情報を推定する必要があります。

粒子モデル遺伝アルゴリズム(GA)の組合せにより、2次元から3次元を推定する手法を開発しました。 粒径、体積、表面積、球形度、軸長比といった形状・サイズに係る3次元データを推定できます。 本機能を備えたプログラムを開発済みです。

珪砂のX線CTを使用した実験検証により、本手法の有効性を確認しました(右下図)。

3次元と2次元の差 表面積分布の推定結果

粒子形状モデリング(球面調和関数)

球面調和関数(左下図)を使用して、物体の形状をモデリングすることができます(穴が開いていなければ・・)。 フーリエ変換で三角関数の重ね合わせにより波形を表現するのと同様に、 球面調和関数を重ね合わせて物体の表面形状を表現します。

本機能を備えたプログラムを作成し、鉱石粒子等の形状を調べています。 約97%の精度で形状をモデリングしつつ、データ容量を約95%削減できます(右下図)。

また、主成分分析を行うことにより、形状の特徴を数値で表したり、同じような形状の粒子をランダムに作成したりできます。

球面調和関数(Wikipediaから引用) 球面調和関数による形状モデリング
(精度97%、データ圧縮95%)