公開セミナー

外部の第一線の研究者の方にお話しいただきます。各種メーリングリストやウェブサイトに広くアナウンスし,公開でおこなうセミナーです。講演要旨はスクロールダウンするとご覧になれます。

2016年3月2日
別所 学 氏
(名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程)
「発光生物はどのようにルシフェラーゼを獲得してきたのか」

2015年12月4日
大林 翼 氏
(北海道大学大学院農学院博士課程)
「昆虫内部共生系における新規分泌ペプチドの機能解析」

2015年10月2日
Dr. Andreas Brune (Max Planck Institute for Terrestrial Microbiology, Marburg, Germany)
"The gut microbiota of termites: evolutionary origin and functional adaptations"

2015年1月30日
松浦 優 博士(北海道大学・地球環境科学研究院、学振PD)
「ナガカメムシが新規に獲得した菌細胞とその発生制御機構」

2014年10月1日
Prof. Alain Blanchard (Univ. Bordeaux, France)
"Mollicutes, minimal cells and successful pathogens"

2014年8月5日
古藤 日子 博士(東京大学大学院 薬学系研究科)
「なぜ一人では生きられないのか:アリの社会的コミュニケーションに依存した生存維持機構の解明」

2014年5月14日
Prof. Yannick Outreman (Team Ecology and Genetics of Insects, Rennes - France)
"Evolutionary dynamics of protective symbioses"

2014年4月25日
徳田 誠 博士(佐賀大学 農学部)
「植物—昆虫相互作用系に見られる寄主操作のメカニズムと適応的意義」

2014年2月21日
島田 裕子 博士(筑波大学生命環境系 日本学術振興会特別研究員(RPD))
「栄養依存的な昆虫ステロイドホルモン生合成調節機構における新規ニューロンの同定と役割の解析」

2013年10月4日
Dr. Piotr Lukasik (Drexel University)
"Surprising diversity of specialized bacterial symbionts of neotropical army ants"

2013年7月2日
1. Dr. Jean-Christophe Simon (INRA, France)
"Population genomics to infer the evolutionary history and mechanisms of plant adaptation in the pea aphid complex"
2. Dr. Akiko Sugio (INRA, France)
"The effectors that alter plant-insect interactions"

2013年6月19日
Dr. Stefan M. Kuechler (University of Bayreuth, Germany)
"Diversity of bacterial endosymbionts in lygaeoid bugs (Heteroptera: Lygaeoidea) and moss bugs (Coleorrhyncha: Peloridiidae)"

2012年11月20日
古澤 力 博士(理化学研究所 生命システム研究センター)
「大腸菌の実験室進化系を用いた適応進化ダイナミクスの解析」

2012年8月27日
Dr. Bessem Chouaia (Univ. Milan, Italy)
"The acetic acid bacterial symbiont Asaia and their insect hosts: molecular diversity and insight on the function"

2012年4月26日
進士 淳平 博士(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
「クルマエビ類Litopenaeus vannameiの低塩分順応過程において機能するエネルギー供給機構」

2011年10月25日
鈴木 紀之 氏(京都大学農学研究科 昆虫生態学研究室)
なぜコストをかけた環境適応が維持されるのか:捕まえにくいアブラムシに特殊化したクリサキテントウの場合

2011年10月20日
Dr. Edouard Jurkevitch (The Hebrew University of Jerusalem, Israel)
"Using symbionts to combat pest insects: does microdiversity matter?"

2011年3月8日
春本 敏之 氏(京都大学大学院 生命科学研究科)
「器官のグローバルな非対称性と一細胞の極性を結びつける機構の解明」

2011年1月20日
Prof. Lee, Bok Luel (Busan National Univ., Korea)
"Molecular activation and regulatory mechanisms for the induction of antimicrobial peptides after microbial pathogen challenges in insects"

2010年10月20日
川口 正代司 博士(基礎生物学研究所)
「マメ科植物が進化させた根粒菌との共生バランスを制御するシステム」

2010年8月19日
大場 裕一 博士(名古屋大学大学院 生命農学研究科)
「ホタルルシフェラーゼの起源」

2010年7月14日
岩崎 崇 博士(鳥取大学農学部 生物資源環境学科)
「カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドの多機能解析」

2009年12月21日
石川 麻乃 氏(北海道大学大学院環境科学院)
「アブラムシの翅多型制御メカニズムの解明」
石川 由希 氏(北海道大学大学院環境科学院)
「シロアリにおける兵隊の防衛行動と神経基盤」

2009年11月2日
Prof. Mike Siva-Jothy (Univ. Sheffield, UK)
"Trauma, rhythms, immunity and fitness in bed bugs"

2009年4月14日
久保田 耕平 博士(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林動物学研究室)
「昆虫における隠蔽種の発見-コルリクワガタ種群の例-」
棚橋 薫彦 氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林動物学研究室)
「クワガタムシにおける昆虫と微生物の関係」

2009年2月6日
森山 実 氏(大阪市立大学大学院 理学研究科 情報生物学研究室)
「クマゼミの胚および1齢幼虫の生理生態学的研究:気候変化に注目して」

2008年10月3日
本郷 裕一 博士(理化学研究所基幹研究所/生研センター)
「シロアリ腸内共生系研究の最前線〜ゲノムから解き明かす培養不能微生物群の実体〜」

2008年4月24日
二橋 亮 博士(農業生物資源研究所・東京大学)
「昆虫の紋様形成に関与する分子機構の解明に解明にむけてートンボとチョウを例にー」

2007年11月22日
Prof. John H. Werren (Univ. Rochester, USA)
1. “Wolbachia: reproductive parasites of arthropods”
2. “Genetics of speciation”

2007年11月8日
Dr. Gerald Reeck (Department of Biochemistry, Kansas State University, USA)
“Molecular genetics of pea aphid salivary glands”

2007年10月5日
細 将貴 氏(京大院・理・生物科学)
「捕食者による多様性の創出:カタツムリ食のヘビが促進する種分化と適応進化」

2007年6月6日
藤原 晴彦 博士(東大院・新領域・先端生命科学)
「昆虫のテロメアの構造と進化」

2007年4月17日
工藤 慎一 博士(鳴門教育大・学校教育・自然系)
「栄養卵の進化生態学」

2006年9月25日
Dr. John Tane Christeller (Horticulture and Food Research Institute of New Zealand)
“Gene technologies in insect pest control: Research at the Horticulture Institute of New Zealand”

2006年8月28日
Dr. Jan Engelstaedter (Department of Biology, University College, London, UK)
“Evolution in populations infected with male-killing bacteria”
Dr. Arndt Telschow (Kyoto University, JSPS Fellow)
"Wolbachia-induced unidirectional CI and speciation: mainland-island model"

2006年7月24日
Dr. Glen Powell (Division of Biology, Imperial College London, UK)
“Aphid stylet activities during interactions with plants and viruses”

2005年5月18日
Dr. Claude Rispe (INRA Rennes, France)
"The evolution of codon bias: selective and mutational pressures. Examples in prokaryotes (e.g. insect endosymbionts) and Metazoan (e.g. insects)"
Dr. Denis Tagu (INRA Rennes, France)
"A transcriptomic approach to study the photoinduced switch from parthenogenesis to sexual development in the pea aphid"
Dr. Jean-Christophe Simon (UMR INRA/AgroCampus de Rennes, France)
"Birth, life and death of asexual lineages of aphids"

2004年6月30日
菅野 紘男 博士(九州沖縄農業研究センター)
「セジロウンカの加害によってイネ体内に誘導される対病原微生物免疫機構について」

2003年9月26日
Dr. David L. Stern (Dept. Ecol. Evol. Biol., Princeton Univ., USA)
1)The morphological consequences of gene regulation microevolution in Drosophila
2)Developmental origin and evolution of bacteriocytes in the aphid-Buchnera symbiosis


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公開セミナー要旨
2016年3月2日(水)15:30~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-1棟 2F 214室(第7会議室)
別所 学 氏(名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程)
「発光生物はどのようにルシフェラーゼを獲得してきたのか」

 発光生物は様々な分類群に存在しており、それぞれ独立に発光能力を獲得してきた。生物発光の研究は、その応用性の高さから応用研究に重点が置かれてきたが、一方で、その進化学的な研究はあまり進んでいない。では、発光生物はどのように発光能力を獲得してきたのだろうか?
 発光形質の核となる要素は、ルシフェリン(基質)とルシフェラーゼ(酵素)である。例えば、我々になじみ深く、また最も研究されているホタルでは、これら2つの分子が生体内で合成され使われている。しかし、海洋発光生物に目を向けると、ルシフェリンは一部の生物が合成しているだけで、多くの発光生物は食物連鎖の過程でルシフェリンを獲得している。すなわち、発光形質獲得の最初で最大の鍵はルシフェラーゼの進化だと考えられる。
 本セミナーでは、最も研究されている発光生物の一つであるホタルと、ほとんど研究のされてこなかった発光魚キンメモドキについて、発光酵素のルシフェラーゼを軸に生物発光の進化について発表したい。


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2015年12月4日(金)15:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-1棟 1F 011250室(第8会議室)
大林 翼 氏(北海道大学大学院農学院博士課程)
「昆虫内部共生系における新規分泌ペプチドの機能解析」

 多くの昆虫はその体内に共生細菌を持ち、緊密な相互作用を行っている。共生細菌のゲノム解析や生理学的な研究により、これら共生細菌が宿主の栄養代謝において必須の役割を果たすことが明らかとなってきた。しかし一方で、異物であるはずの細菌がなぜ安定的に、そして平和的に昆虫体内に保持されているのか?その分子メカニズムについてはほとんど解明されていないのが現状である。その大きな理由としては、(1)多くの共生細菌が培養困難であり遺伝子組み換えなどの逆遺伝学的アプローチができないこと、(2)アブラムシのように良く研究された宿主昆虫においてRNAiが困難であることがあげられる。次世代シークエンサーの普及により有り余る遺伝子情報が得られているにも関わらず、多くの昆虫共生系の研究は真の意味でその恩恵に預かれているとは言いがたいかもしれない。
 ダイズの重要害虫であるホソヘリカメムシは中腸後端部に“盲のう”と呼ばれる多数の袋状組織を発達させ、その内腔中にβ-プロテオバクテリアのBurkholderia共生細菌を保持している。本共生系は、多くの昆虫内部共生系とは異なり、共生細菌の培養と遺伝子組み換えが容易であり、また宿主のRNAiがとてもよく効く。このことから、ホソヘリカメムシ-Burkholderia共生系は昆虫内部共生の分子基盤を解明する上で非常に優れたモデル系だと言える。
 これまでの研究で、ホソヘリカメムシの共生細菌感染個体と非感染個体における中腸トランスクリプトーム解析が行われ、盲のうで特異的に高発現する遺伝子が多数同定されている。盲のう特異的遺伝子の多くは“システインリッチペプチド(Crypt-specific Cysteine Rich peptides, CCR)”遺伝子と名付けられ、97種類が同定され、平均全長は90アミノ酸残基であった。すべてのCCRはN末端に分泌シグナル配列およびC末端に6個以上のシステイン残基を有していた。システインリッチペプチドは他の共生系においても報告されており、例えばマメ科植物のシステインリッチペプチドは根粒内で特異的に発現し、根粒菌を“バクテロイド”と呼ばれる窒素固定フェーズへ誘導することが知られている。我々は、システインリッチペプチドが昆虫内部共生系に果たす役割を解明するために、in vitroおよびin vivo両面から解析を進めている。In vitroでは化学合成したCCRを用いて共生細菌の生育実験を行い、CCRが共生細菌の生育を阻害することが明らかとなってきた。またin vivoでは、複数CCRのカクテルRNAiや、盲のう組織で高発現する転写因子のRNAiを行い、CCRの発現や共生細菌の表現型に対する影響を調べている。講演では、これらin vitro・in vivo実験から得られた結果を総合し、CCRがカメムシ腸内共生に果たす役割について議論する。


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2015年10月2日(金)15:00〜
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 1F 011250室

Dr. Andreas Brune (Max Planck Institute for Terrestrial Microbiology, Marburg, Germany)
"The gut microbiota of termites: evolutionary origin and functional adaptations"

Termites degrade lignocellulose with the help of their intestinal symbionts. The general role of the gut microbiota in the digestive process is slowly emerging, but the specific functions of individual populations and their evolutionary origin are entirely in the dark. Deep sequencing of the hindgut community revealed strong differences among the major host groups, and dramatic changes in the abundance of particular taxa coincide with major events in termite evolution. The acquisition of cellulolytic protists by an ancestral cockroach provided new habitats for bacterial symbionts, which colonize the surface and cytoplasm of the gut flagellates in all evolutionary lower termites. After the loss of flagellates in higher termites, the wood particles became available for bacterial colonization, providing new niches for fiber-digesting populations. Although the coevolution of termites and their gut microbiota dates back to the early Cretaceous, evidence for cospeciation between particular lineages and their hosts is rare and often restricted to shorter periods on the evolutionary time scale. Comparatively analysis of higher termites from different feeding groups confirmed that the patterns in microbial community structure do not reflect host phylogeny but differences in diet, corroborating that the gut microbiota of termites is shaped by the availability of microhabitats and functional niches in the gut environment.


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2015年1月30日(金)15:30~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-1棟 2F 214室

松浦 優 博士(北海道大学・地球環境科学研究院、学振PD)
「ナガカメムシが新規に獲得した菌細胞とその発生制御機構」

昆虫には菌細胞という一風変わった細胞が存在する。菌細胞は細胞内共生に特化した細胞であり、その細胞質中には宿主昆虫の生存にとって必須な栄養素を供給する共生微生物が所狭しと詰まっている。菌細胞は胚発生のある時期に分化し、母系由来の共生微生物を取り込んだのち、宿主の生涯にわたってその微生物を維持しつづける。高度に特殊化した共生系の象徴ともいえる菌細胞共生については、これまで細胞内に保持される微生物についての系統学的位置、生物機能、ゲノムなどが広く研究されてきたが、一方で菌細胞そのものの正体についてはよくわかっておらず、その進化的な起源、発生の分子基盤や共生微生物の維持機構など、多くの謎が解明されていない。そこで演者は、菌細胞を新規に獲得したナガカメムシ類を用いて、菌細胞の獲得起源や発生制御機構の解明を目指している。本講演では、実験モデル種として優れた特徴を多く備えたヒメナガカメムシNysius plebeiusに焦点をあて、本種で明らかになったHox遺伝子による菌細胞の分化制御について解説する。そして、ナガカメムシ類の胚発生を比較することにより見えてきた菌細胞分化の驚くべき多様性についても述べる。最後に、菌細胞進化の分子基盤を明らかにするために現在進めているプロジェクトについてもふれ、今後の展望を議論したい。


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2014年10月1日(水)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 2F 228-1,2室
Prof. Alain Blanchard (Univ. Bordeaux, France)
“Mollicutes, minimal cells and successful pathogens”

Our laboratory seeks to improve our understanding of the biology and pathogenicity of Mollicutes that are considered as models for minimal cells. Comparative studies are performed on a number of Mollicutes species, including some that infect plants and animals. Some of the uncultivated Mollicutes, named phytoplasmas are the etiological agents of several major plant diseases. Our studies integrate practical or applied aspects dealing with the aetiology and epidemiology of phloem-limited bacterial pathogens with strong emphasis on the important diseases caused in grapevine by the Stolbur/Bois Noir and Flavescence Dorée phytoplasmas. We also aim at better understanding the cellular and molecular mechanisms governing the interactions of these minimal microbial pathogens with their host plants and insect vectors in order to propose innovative ways to control the corresponding diseases.
Recently, the genetic approaches for the study of Mollicutes have been revolutionized by the development of synthetic biology (SB) methods including genome cloning and engineering in yeast, genome transplantation into recipient cells. Our team plays an active role in developing these methods. The concept of minimal cell has attracted much attention in past years as it offers the possibility to understand the functioning of all DNA-encoded elements that are necessary to support life, at least in the laboratory. To reach this goal, it is logical to start with a living organism, which through the course of streamlining evolution, came to resemble a minimal cell. Arguably bacteria belonging to the genus Mycoplasma are among the best candidates for this purpose and have been used as starting material to develop SB technologies in order to manipulate their cell components on a large scale. In our laboratory, using mycoplasma cells we are pursuing the development of technologies with the aim of obtaining different cellular chassis that fulfill various applications. A prerequisite to the building of a cellular minimal chassis is the identification of the genome components that are able to support life. By using comparative genomics, we have shown that there are different minimal sets of genes to support complex and essential functions such as the synthesis of proteins. This chassis once obtained will be modified by plugging-in heterologous sets of genes to deliver products in different environments.

Some relevant publications:
† Grosjean H, Breton M, Sirand-Pugnet P, Tardy F, Thiaucourt F, Citti C, Barré A, Yoshizawa S, Fourmy D, de Crécy-Lagard V, Blanchard A. Predicting the minimal translation apparatus: lessons from the reductive evolution of mollicutes. PLoS Genet. 2014 May 8;10(5):e1004363
† Lartigue C, Lebaudy A, Blanchard A, El Yacoubi B, Rose S, Grosjean H, Douthwaite S. The flavoprotein Mcap0476 (RlmFO) catalyzes m5U1939 modification in Mycoplasma capricolum 23S rRNA. Nucleic Acids Res. 2014;42(12):8073-82.
† Citti C, Blanchard A. Mycoplasmas and their host: emerging and re-emerging minimal pathogens. Trends Microbiol. 2013 Apr;21(4):196-203.
† Carle P, Saillard C, Carrère N, Carrère S, Duret S, Eveillard S, Gaurivaud P, Gourgues G, Gouzy J, Salar P, Verdin E, Breton M, Blanchard A, Laigret F, Bové JM, Renaudin J, Foissac X. Partial chromosome sequence of Spiroplasma citri reveals extensive viral invasion and important gene decay. Appl Environ Microbiol. 2010 Jun;76(11):3420-6.


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2014年8月5日(火)14:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 2F 228-1室
古藤日子 (東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室)
「なぜ一人では生きられないのか:アリの社会的コミュニケーションに依存した生存維持機構の解明」

我々ヒトを含む多くの生物は複雑な社会的環境に生活し、他個体とのコミュニケーションは個体の生理状態や行動に大きな影響を及ぼす。また、社会的な孤立は多くの生物において健康状態を脅かす大きなストレス要因として知られている。しかしながら、社会的環境が生物の行動や生理状態を制御するメカニズムは不明な点が多く残されている。本セミナーでは社会性昆虫であるアリをモデルとし、同種間コミュニケーションに依存した個体の生存維持機構について紹介したい。私たちは、労働アリをコロニーから隔離し孤立状態させた時、顕著に寿命短縮がおこることを明らかにした。さらに、個体識別バーコードによる行動記録システムを用い、行動パターンの定量を試みた。また、生理状態の指標として、餌の摂取量、消化量の定量を一個体レベルで行った。その結果、孤立アリが死に至る過程において活動量の顕著な上昇と共に、餌消化量の減少が観察された。以上の結果により、社会的環境はエネルギー摂取と消費のバランス維持に寄与し、労働アリの生存維持に必須であることが示唆された。現在はRNAseqを用い孤立アリとグループで飼育した労働アリの間で遺伝子発現パターンの比較、解析を進めており、本セミナーでは社会的環境が個体の行動、生理状態、生存を制御する分子メカニズムについて議論したい。


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2014年5月14日(水)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 3F 311室

Prof. Yannick Outreman (Team Ecology and Genetics of Insects, Rennes - France)
"Evolutionary dynamics of protective symbioses"

  While considered until recently as a marginal phenomenon, symbiosis, in which different species engage in prolonged and intimate associations, is gaining recognition as a ubiquitous feature of eukaryotes life. In many animal species, associations with symbiotic microorganisms are pervasive. These microbial associates are often heritable, transmitted with high fidelity from parent to offspring. Because host species and their heritable symbionts share fates, but not necessarily common interests, inherited symbionts often affects the phenotype of the hosts that can profoundly influence its ecology and evolution.
  Among the phenotypes associated to symbiotic associations, recent studies show that microbial symbionts can confer a protection to their host against its enemies. The main objective of our research is to understand the processes determining the maintenance of these protective symbioses in natural populations, which are appearing as a major factor in evolutionary ecology of antagonistic interactions. To reach these goals, we use sap-feeding insects and their bacterial symbionts as model. Some results will be presented during this seminar.


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2014年4月25日(金)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 3F 311室

徳田 誠 博士(佐賀大学 農学部)
「植物—昆虫相互作用系に見られる寄主操作のメカニズムと適応的意義」

 植物と植食者間の相互作用系は、生物間相互作用の中でもっとも盛んに研究がなされている系の1つである。植食性昆虫の中には、植物を単に摂食するだけでなく、植物組織や器官を様々に改変して利用するものが知られている。ゴール(虫こぶ)形成昆虫はその典型例である。
 本セミナーでは、演者がこれまでに取り組んできたタマバエやヨコバイなどのゴール形成昆虫による寄主操作のメカニズムや適応的意義について紹介するとともに、近年明らかになってきた非ゴール形成性のカメムシやアブラムシなどによる寄主植物の形質操作の可能性や、捕食寄生バチによるゴール形成タマバエの行動操作の事例なども紹介する。
 これらに加え、植物における物理・化学・生物的防御の使い分けや被食防御のコストとベネフィット、植食者による植物の被食防御の回避・乗っ取り戦略、および、植物—昆虫間種子散布共生系の進化要因など、最近取り組んでいる研究についても紹介したい。


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2014年2月21日(金)15:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 3F 311室

島田 裕子 博士(筑波大学生命環境系 日本学術振興会特別研究員 (RPD))
「栄養依存的な昆虫ステロイドホルモン生合成調節機構における新規ニューロンの同定と役割の解析」

 生物の発生/発育プログラムは、外環境に応じて柔軟に変化できるポテンシャルを元来秘めており、遺伝プログラムにはいくつものバリエーションがある。例えば、ヒトの第2次性徴や昆虫の変態に代表される「こども」(幼若)から「おとな」(成熟)に移行するステップにおいては、幼若期で摂取される栄養量が成熟を促す条件の1つとして挙げられる。貧栄養条件下で個体が成育した場合には、幼若期が延長されるようにプログラムが修正されることで成体に必要な栄養が確保され、成体の繁殖成功がある程度保障される。このような発生プログラムの柔軟性は、生命の存続や次世代への継承の本質を理解する上で重要であると考えられるが、その分子基盤については未だ不明な点が多く残されている。
 「こども」から「おとな」への移行に伴う外部形態や生理状態の変化に対して、動物種を超えて中心的な役割を果たすのがステロイドホルモンである。ステロイドホルモンの生合成は、器官や体サイズ等の内的要因、あるいは栄養条件/温度条件/光周期などの外的要因に応じて、適応的に調節される。しかしながら、いつ、どのくらいの量のステロイドホルモンを生合成・分泌させるのかを決定する分子機構には未だ不明な点が多く残されている。
 私たちは、キイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster を用いて、昆虫の脱皮・変態を司るステロイドホルモン/エクジステロイドの生合成調節機構を解析している。エクジステロイドは、食物中のコレステロールを原材料として、前胸腺という特殊な内分泌器官において生合成される。本発表では、前胸腺に投射するセロトニン産生神経を新たに同定したことを報告し、セロトニン産生神経が栄養条件依存的に前胸腺でのエクジステロイド生合成を調節する仕組みについて議論する。


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2013年10月4日(金)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 2F 228-1室

Dr. Piotr Lukasik (Drexel University)
"Surprising diversity of specialized bacterial symbionts of neotropical army ants"

Symbiotic microorganisms play important roles in the biology of their arthropod hosts. Despite this, symbiont diversity, distributions and functions are poorly understood outside of a few model systems. We are investigating symbioses of neotropical army ants (Formicidae: Ecitoninae), an ecologically important group of social insects which have previously been shown to host two types of specialized bacteria. We are currently using a collection of over 30 Ecitoninae species, including some sampled in replicates at multiple geographic locations, to characterize symbiont diversity at the species, colony and individual level and to understand host-specificity of the dominant microbial associates of army ants.

Our data indicate that despite large variation between individual ants and consistent differences between colonies, the two previously reported bacteria dominate the microbial communities of most army ant species. Individual workers host only a single strain of each symbiont type, which facilitated characterization of their co-evolutionary histories with hosts. We found that these symbionts form host species-specific clades, with evidence for geographic differentiation within these clades. Strikingly, several divergent symbiont strains, often representing more than one clade, were found in most colonies. Thus, despite their relatedness and frequent sharing of food via trophallaxis, workers from a single colony can harbor very distinct strains of specialized bacteria. I speculate on how this intra-colony symbiont diversity in army ants can be maintained, and discuss its possible ecological and evolutionary consequences.

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2013年7月2日(火)15:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-9棟 2F 228-1, 2室

1. Dr. Jean-Christophe Simon (INRA, France)
"Population genomics to infer the evolutionary history and mechanisms of plant adaptation in the pea aphid complex"

The role of ecological factors and biological adaptations on species formation has gained strong support in the last decade. However, the precise steps involved in the accomplishment of ecological specialization and reproductive isolation are not fully understood, neither is the evolutionary time needed for such an accomplishment. In addition, the genomic architecture underlying adaptive traits is poorly known, especially in the case of replicated events of adaptive divergence. Here, I will present the recent progress we made on these issues, taking advantage of the pea aphid species/biotype complex, which conveniently shows a continuum of genetic divergence from sympatric host races to incipient species. By deeply exploring the evolutionary genetics of plant adaptation using a multidisciplinary approach, we showed in particular that the pea aphid complex underwent a recent and rapid ecological diversification through multiple host shifts. We also identified genomic regions putatively involved in host-plant adaptation by performing a genome scan analysis with high throughput genotyping technologies. Interestingly, these genomic regions include chemosensory or salivary genes, both of which being possible gene candidates responsible for plant specialization in the pea aphid complex.

2. Dr. Akiko Sugio (INRA, France)
"The effectors that alter plant-insect interactions"

Effectors are defined as the molecules that are secreted by pathogens/parasites and alter the interactions of two or more organisms. In my previous laboratory (Saskia Hogenhout lab, John Innes Centre, UK), we have identified several effectors of Aster Yellows phytoplasma strain Witches’ Broom (AY-WB), which is a bacterial phytopathogen transmitted by leafhopper, Macrosteles quadrilineatus. One of the effectors, SAP11, interacts with Arabidopsis class II TCP transcription factors and destabilizes them. The class II TCPs regulate plant growth and production of jasmonic acid, which positively controls plant defence against M.quadrilineatus. M.quadrilineatus produces higher number of progenies on the Arabidopsis plants that express SAP11 compared to the control plants. Thus, AY-WB effector SAP11 down-regulates plant defence and promotes the production of leafhopper progenies, which are essential for dispersal of AY-WB in nature.

Aphids are sap feeding insects and inject numbers of saliva proteins into plants while they feed on. Aphid saliva and some of aphid saliva proteins are reported to interfere or facilitate aphid feeding and progeny production. Hence, there is an emerging concept that sap-feeding insects secrete effector proteins into plants. The pea aphid (Acyrthosiphon pisum) forms multiple biotypes each of which is specialized to one or a few legume species. I hypothesize that effectors (saliva proteins) are one of the factors that are involved in host plant specialization of the aphids and initiated the research program to study the molecular mechanisms that underlie. In this seminar, I would like to share my research plan and preliminary results.


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2013年6月19日(水)15:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-1棟 2F 214室

Dr. Stefan M. Kuechler (University of Bayreuth, Germany)
"Diversity of bacterial endosymbionts in lygaeoid bugs (Heteroptera: Lygaeoidea) and moss bugs (Coleorrhyncha: Peloridiidae)"

Many hemipterans are associated with symbiotic bacteria, which are usually found intracellularly in specific organs called bacteriomes. Several bacteriome-associated symbiotic systems can also be found in lygaeoid bugs (Heteroptera: Lygaeoidea). Interestingly, the structure and localization of the bacteriomes as well as the contained endosymbionts exhibited a significant variance. Overall, six different symbiont systems could be identified and described so far within the families Artheneidae, Blissidae, Geocoridae and Lygaeidae (sensu stricto; including the subfamilies Ischnorhynchinae, Lygaeinae and Orsillinae). Such a variety of different endosymbioses in such closely related insect hosts could be detected only in few insect groups. The molecular characterization, based on 16S rRNA and groEL (Chaperonin) gene sequences, revealed that they phylogenetically belong to the group of γ-Proteobacteria. They form independent, partly monophyletic groups which are not related with other symbionts of Heteroptera, in particular crypts-associated midgut symbionts of the Pentatomoidea. This indicates that the endosymbiotic systems of the Lygaeoidea have developed independently from each other.

Furthermore, the obligate endosymbiosis of the moss bugs (Coleorrhyncha: Peloridiidae), representing the sister group of true bugs (Heteroptera), was characterized for the first time using molecular methods. The few recent representatives of this small, cryptic group also possess an endosymbiont from the group of γ-Proteobacteria. Phylogenetic analyses showed that the endosymbiont is not closely related to the endosymbionts, found and described in the sister taxon Heteroptera, but form a new monophyletic group that cluster together with other obligate endosymbionts of whiteflies and psyllids (Sternorrhyncha).


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2012年11月20日(火)15:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-1棟 2F 214室

古澤 力 博士(理化学研究所 生命システム研究センター)
「大腸菌の実験室進化系を用いた適応進化ダイナミクスの解析」

生物システムの進化過程は、環境応答・適応・進化といった複数の時間スケールを持つダイナミクスが絡み合い、その適応度地形上の細胞状態の変化は複雑な軌跡を描く。こうした状態変化の軌跡が持つ性質を理解することは、生物システムが持つ適応能・進化能の理解に重要な意味を持つ。そこで本研究では、大腸菌の実験室内での進化実験系を用いて、表現型・遺伝子型がどのような軌跡を描くかを解析した。具体的には、Escherichia coli W3110を親株として、エタノールストレス環境下における複数独立系列での培養を1000世代(約2500時間)程度行ったところ、比増殖速度のゆるやかな上昇が見られ、最終的に親株と比較して増殖速度が2倍程度上昇したエタノール耐性株を6株取得した。マイクロアレイによる遺伝子発現解析や質量分析器による代謝解析を用いて、この進化過程における表現型の変化を解析したところ、6株の耐性株において共通の表現型変化が生じていることが見出された。一方で、次世代シーケンサを用いたゲノム変異解析を行ったところ、この進化実験において集団中に固定された変異の数は数個のオーダーであり、異なる耐性株の間での共通の変異はほとんど見出されなかった。この結果は、1000世代にわたる表現型の変化がゲノム変異に起因するのではなく、何らかの遅い時間スケールを持つ適応過程であることが示唆している。そのメカニズムは不明であるが、このような適応のダイナミクスを理解することは、安定な環境適応と進化を可能とする生物システムの本質の理解に重要な役割を果たすと期待でき、何らかのエピジェネティクス機構がこの現象に関与するか現在解析中である。これらの研究に加えて、我々のグループが行っているラボオートメーションを用いた全自動進化実験システムの構築と、抗生物質を添加した環境での進化実験の結果についても議論する。


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2012年8月27日(月)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所  S6-1棟 2F 214室

Dr. Bessem Chouaia (Univ. Milan, Italy)
"The acetic acid bacterial symbiont Asaia and their insect hosts: molecular diversity and insight on the function"

Acetic acid bacteria (AAB) have been recently shown to be dominant bacterial symbionts in the gut of several sugar-feeding insects, including Diptera, Hemiptera, Hymenoptera and Lepidoptera (Favia et al., 2007; Crotti et al., 2010). The use of DGGE for screening showed that in Anopheles and Aedes mosquitoes, vectors of human diseases, AAB of the genus Asaia represent the major symbiont, present in all individuals. In addition, these symbionts have also been detected in the hemipteran Scaphoideus titanus (Marzorati et al., 2006). By various typing BOX- and RAPD- PCRs, we showed that a high diversity of strains circulate among mosquito populations (Chouaia et al., 2010). An investigation of the role of these bacteria in the development of the larvae of A. stephensi, was carried out by curing the larvae for their associated microbiota then supplementing them with Asaia in a second time (Chouaia et al., 2012). The data obtained showed that Asaia has a positive influence on the larval development. Moreover it has been shown that symbiotic AAB play a role in the modulation of the host innate immune system (Ryu et al., 2008). Studies currently in progress in the context of our research network are congruent with these results, suggesting the existence of a co-adaptation between Asaia and the mosquito host. To understand better the relation between Asaia and its host, the bacterial genome has been sequenced, and the analyses are in progress. The data obtained allowed us to have some insights into the interaction between Asaia and the mosquitoes.


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2012年4月26日(木)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)

進士 淳平 博士(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
「クルマエビ類Litopenaeus vannameiの低塩分順応過程において機能するエネルギー供給機構」

浸透圧調節は、全ての生物にとって体液と組織の物質組成を維持するために重要な活動の一つである。生物は、陸上では乾燥により常に体内から水分が失われ、また、水中では浸透および透析により水分および無機イオンが流入出し、常に体内の物質組成を変化させられる危険にさらされている。こうした環境の浸透圧の影響に順応するため、生物は環境に対し適切な浸透圧調節機構を発達させ、自然環境に適応してきた。
 一般的に、ほとんどの脊椎動物は、生息環境を問わず能動輸送によって水分および無機イオンの排出・取り込みを行い、体液浸透圧を一定に維持することが知られている。この浸透圧調節機構は、Na+/K+-ATPaseをはじめとする一次性能動輸送体の機能により得られた電気化学的勾配を利用するエネルギー消費を伴う浸透圧調節である。これに対し、水棲無脊椎動物は、上述した浸透圧調節に加え、自ら細胞中のオスモライト量を変化させ、細胞内の浸透圧を変える浸透圧調節を行うことが明らかにされている。後者の浸透圧調節メカニズムは、細胞内等浸透圧調節と呼ばれ、1950年代以降、甲殻類を実験動物に用いて盛んに研究が行われてきた。しかし、これまでの水棲無脊椎動物の浸透圧調節に関する研究は、浸透圧調節のメカニズムに焦点をあてたものがほとんどであり、こうした浸透圧調節を行うためのエネルギー供給機構に関する研究はあまりされてこなかった。
 本研究では、クルマエビ類Litopenaeus vannameiを用い、低塩分順応過程のエネルギー供給機構の解明を試みた。その結果、脊椎動物で一般的にみられるような内分泌制御によるエネルギー供給機構のほかに、浸透圧調節機構そのものがエネルギー供給機構を兼ねることが示唆されたので、報告する。


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2011年10月25日(火)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)

鈴木紀之 氏(京都大学農学研究科 昆虫生態学研究室)
「なぜコストをかけた環境適応が維持されるのか:捕まえにくいアブラムシに特殊化したクリサキテントウの場合」

 昆虫と寄主との敵対的な共進化は、ときとしてコストを伴った極端な形質の進化を促す。たとえば、ダーウィンが予言したことで有名なマダガスカルのスズメガは、非常に長い口吻を形成し、さらに吸蜜源を特定のランに限定している。しかし、こうした昆虫の多くは、野外でいっさい利用しない寄主であっても潜在的には発育可能である。それでは、なぜコストをかけてまで緊密な共進化関係に甘んじているのだろうか? 私は繁殖期における近縁種との相互作用(繁殖干渉)に着目し、捕食性テントウムシを用いて研究を進めてきた。
 クリサキテントウは野外では足の速いマツオオアブラムシだけを食べている。しかし、生理的には様々な種類のエサで正常に発育・繁殖できる。さらに、捕まえにくいエサに適応するため、母親は栄養卵をたくさん投資することで子の数を犠牲にしている。私は実験的にクリサキと近縁種でジェネラリストのナミテントウを一緒にし、メスの繁殖成功を調べた。その結果、クリサキの交尾率だけが一方的に減少することが分かった。ナミの多いパッチではクリサキの種内の配偶行動が阻害するためだと思われる。このことから、クリサキはナミからの繁殖干渉を避けるために、野外では捕まえにくいエサに特殊化していることが示唆された。
 以上の研究は、生物の寄主選択が過去から続く相互作用に拘束されず、現状の生態学的なプロセスによって適応的に規定されていることを意味している。同時に、一部の種で大きなコストを伴った環境適応が生じ、その近縁種では寄主との緊密な共進化関係が発達しなかった理由を合理的に説明できると思われる。


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2011年10月20日(木)16:30~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)

Dr. Edouard Jurkevitch (The Hebrew University of Jerusalem, Israel)
"Using symbionts to combat pest insects: does microdiversity matter?"

Insects are hugely diverse. Yet, similar bacterial species can be found forming the bulk of the microbiota communities associated with many different insects. As an example, Tephritids appear to often bear the same bacterial species. We examined Ceratitis capitata, the Mediterranean fruit fly in detail. This insect contains different enterobacterial species that perform similar central metabolic functions like pectinolysis and nitrogen fixation. Yet, internal, microdiversity at the strain level is also apparent between growth stages and between individuals as shown by FISH and metagenomics.
The sterile insect technique (SIT) is being used on a large scale to combat the medfly. Still, SIT flies suffer from low competitiveness, so various approaches are being developed to increase their efficiency. Examination of flies produced in such an SIT facility in Israel showed that their gut community was significantly altered in comparison to that of wild flies. Provisioning such sterile male flies with a gut symbiont forming a dominant population in wild flies significantly improved mating performance and competitiveness. Although promising, these results raise questions pertaining to the causes of these effects and to their relationship to the structure of the fly’s gut bacterial community. These questions will be addressed.


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2011年3月8日(火)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)

春本 敏之 氏(京都大学大学院 生命科学研究科)
「器官のグローバルな非対称性と一細胞の極性を結びつける機構の解明」

 多細胞体の構築において、それぞれの細胞は、所属する器官あるいは組織の非対称な空間情報に従って、平面内細胞極性 (planar cell polarity; PCP) を発達させる。例えば哺乳類では内耳有毛細胞や気管上皮細胞など様々な組織で見られ、この極性の獲得が生体内機能の発現に重要である。ショウジョウバエの翅を用いた研究から、このモデル系においては少なくとも二つの分子群が PCP 形成を制御することが明らかになっている。その一つは、細胞の遠位側あるいは近位側に局在するコアグループタンパク質群であり、Frizzled (Fz) や Flamingo (Fmi) が含まれる。第二のグループには、非典型的カドヘリン Dachsous (Ds) と Fat (Ft) が含まれる。後者の分子群は、コアグループタンパク質群より早期に機能し、翅の遠近軸に沿ったグローバルなパターン情報を与えると考えられている。
 近年我々はコアグループタンパク質の非対称な局在化の仕組みに注目している。これまでに、翅の表皮細胞内に遠近軸に沿った微小管が存在することを発見し、Fz や Fmi を含む小胞 (Fz-Fmi 小胞)がそれらの微小管に沿って遠位側細胞境界へと極性輸送されるモデルを提出した(Shimada et al., 2006)。しかしながら、依然として以下の2つの問題が明らかにされていない。(1)どのようにして微小管は翅の遠近軸に沿って配向するのか。(2)なぜ Fz-Fmi 小胞は遠位側境界にのみ選択的に輸送されるのか。これらの問いに答える目的で、生体内経時観察により微小管の時空間的ダイナミクスを解析した。野生型をはじめ、様々な PCP 制御因子の機能欠損や過剰発現のもとで解析した結果、Ds-Ft 経路が微小管の遠近軸に沿った配向と、微小管極性の僅かな非対称性の双方を制御する可能性が示唆された。これらの結果および、Fz 小胞の挙動解析のデータをもとに、微小管を介した輸送が、器官のグローバルな非対称性と細胞極性を結びつける可能性について議論したい。


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2011年1月20日(木)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-9棟2F 第1会議室(228-1室)

Prof. Lee, Bok Luel (Busan National Univ., Korea)
"Molecular activation and regulatory mechanisms for the induction of antimicrobial peptides after microbial pathogen challenges in insects"

Innate immunity is a crucial host defense mechanism against microbial infection in all animals. The insect Toll signaling pathway is activated upon recognition of Gram-positive bacteria and fungi, resulting in the expression of antimicrobial peptides via NF-κB-like transcription factor. This activation is mediated by a serine protease cascade leading to the processing of Spätzle, which generates the functional ligand of the Toll receptor. Recently, we analyzed the serine protease cascade regulating the Toll signaling pathway using larvae of the beetle, Tenebrio molitor. This large insect enabled us to collect large amount of hemolymph (the insect blood) allowing purification of serine proteases. Our studies demonstrated that the recognition of bacterial Lys-type peptidoglycan (PG) by the PG recognition protein-SA (PGRP-SA)/Gram-negative binding protein 1 (GNBP1) complex and the recognition of fungal beta-1,3-glucan by GNBP 3 activates pro-Spätzle via the sequential activation of three serine proteases: modular serine protease (MSP), Spätzle processing enzyme-activating enzyme (SAE) and Spätzle processing enzyme (SPE). Additionally, we provide biochemical evidences of how the Tenebrio PGRP-SA/GNBP 1 complex-mediated bacteria recognition signal or GNBP3-mediated fungi recognition signal is transferred to pro-Spätzle leading to the production of antimicrobial peptides. Injection of β-1,3-glucan into Tenebrio larvae induced production of two antimicrobial peptides, Tenecin 1 and Tenecin 2, which are also inducible by injection of the active form of Spätzle-processing enzyme-activating enzyme or processed Spätzle. Furthermore, we identified four different serpins that are involved in the regulation of Toll signaling cascade. We examined in vitro and in vivo biological functions of these serpins during Toll activation cascade.
In summary, our work supports a model in which bacterial Lys-type PG and fungal beta-1,3-glucan recognition signals activate a common proteolytic cascade involving three different serine protease zymogens that are sequentially processed. This Toll activation processes were tightly regulated by specific serpins.

References) J. Biol. Chem. 277: 39999-40004 (2002); J. Biol. Chem. 278: 42072-42079 (2003); J. Biol. Chem. 279: 3218-3227 (2004); J. Biol. Chem. 280: 24744 - 24751 (2005); EMBO J. 24: 4404-4414 (2005); J. Biol. Chem. 281: 7747-7755 (2006); J. Biol. Chem. 282: 10783-10791(2007); PNAS 104: 6602-6607 (2007); J. Biol. Chem. 283: 7599-7607 (2008); J. Biol. Chem. 284, 19474 -19481(2009); J. Biol. Chem. 284, 35652-35658(2009); Trends in Biochemical Sciences (TIBS), 35, 575-583 (2010); J. Biol. Chem. 285, 32937-32945 (2010); J. Biol. Chem. 285, in press (2011).


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2010年10月20日(水)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-9棟2F 第1会議室(228-1室)

川口 正代司 博士(基礎生物学研究所)
「マメ科植物が進化させた根粒菌との共生バランスを制御するシステム」

 マメ科植物は窒素固定細菌である根粒菌との相互作用によって、根に根粒という共生器官を形成する。しかし、共生窒素固定には大きなコストがかかるため、植物は根粒菌の感染や根粒の数を厳密に制御している。共生を制御する宿主側因子の全体像を知るために、日本に自生するマメ科の草本ミヤコグサを使って根粒共生変異体の大規模スクリーニングを行ったところ、根粒数の制御が破綻したhar1、klavier、too much love (tml)などの根粒過剰着生変異体を単離することができた。接ぎ木実験によってHAR1 とKLAVIER がシュート(植物の地上部)で、TML が根で機能することが示唆された。岐阜と宮古島由来のミヤコグサのDNA多型を用いてHAR1の原因遺伝子を特定した。HAR1はLRR型受容体キナーゼをコードしており、根粒菌の感染情報をシュートで感知して、根粒菌感染を遠距離に制御するレセプターであると考えられた。興味あることに、HAR1は非マメ科植物であるシロイヌナズナの遺伝子の中でCLAVATA1と最も高い相同性を示した。CLAVATA1は細胞間コミュニケーションを介して茎頂メリステム(植物の地上部を生み出す分裂組織)の細胞分裂を負に制御することが知られているため、ミヤコグサとシロイヌナズナで遺伝子機能に大きな違いがあることが明らかとなった。マメ科植物は、根粒菌と共生系を確立する進化プロセスにおいて、茎頂メリステムの維持に関わるCLAVATA1遺伝子をリクルートすることによって、根粒菌との共生バランスを制御するシステムを確立したことが推測された。
 この茎頂メリステムを支えるCLAVATA1遺伝子の共生系へのリクルートは、偶然か必然か。遺伝子を特定して以来、「偶然」と思っていたが、その後のKLAVIERの表現型解析やHAR1のリガンド候補の特定などによって、「必然」かもしれないと考えるようになった。セミナーでは、これまでの結果を踏まえ、根粒という新しい共生器官がどのようにして進化してきたについて、最近考えていることを紹介する。


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2010年8月19日(木)16:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)

大場 裕一 博士(名古屋大学大学院 生命農学研究科)
「ホタルルシフェラーゼの起源」

ルシフェラーゼは、発光反応を触媒する酵素です。我々は、これまでの研究結果から、ホタルのルシフェラーゼは脂肪酸CoA合成酵素から進化したと考えています。脂肪酸CoA合成酵素は、β酸化の第一段階を触媒する酵素で、あらゆる生物が持っているものです。本セミナーでは、このように普遍的なタンパク質がいかにして新しい機能を獲得するに至るのかについて、私が研究しているホタルルシフェラーゼを例に紹介します。


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2010年7月14日(水)15:00~
会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)


岩崎 崇 博士(鳥取大学農学部 生物資源環境学科)
「カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドの多機能解析」

カブトムシの抗細菌性ペプチドである「ディフェンシン」を人工的に改変することで得られた、僅か9アミノ酸残基からなる4つの改変ペプチド(D-peptide A、B、C、D)の多機能について紹介する。

これまでの研究から、正電荷を帯びているディフェンシン由来改変ペプチドは、負電荷を帯びた細菌細胞膜と電気的に相互作用し、膜破壊を引き起こすことで抗細菌活性を示すことが分かっている。この抗細菌活性はオリジナルのディフェンシンや既存の抗生物質よりも強く(MIC=1~40µg/ml)、さらに本研究では改変ペプチドを長期間使用し続けた場合においても薬剤耐性細菌は出現しないことを明らかにした。

また、改変ペプチドは哺乳類の正常細胞(白血球・赤血球)に対しては毒性を示さない一方で、一部のがん細胞に対して細胞膜を破壊することで選択的細胞毒性を示すことが新たに分かった(IC50=28~140µM)。哺乳類の正常細胞表面は電気的に中性であるのに対して、がん細胞表面には負電荷を帯びた酸性リン脂質・ホスファチジルセリン(PS)が多量に表出していることが先行研究により報告されている。そこで、様々な哺乳類細胞株の細胞表面PS密度を定量したところ、改変ペプチドの細胞毒性との間に強い相関関係が見出された。このことから、改変ペプチドは細胞表面PSを標的として、がん細胞選択的に細胞膜を破壊している可能性が示唆された。

さらに、改変ペプチドのより効果的な応用を目指して、改変ペプチドの新規標的としてがん細胞内のミトコンドリアに着目した。ミトコンドリアは好気性細菌由来の細胞小器官であり、負電荷を帯びた外膜をもつことが先行研究によって報告されている。そこで、マウス肝臓から単離したミトコンドリアに対して改変ペプチドを直接処理したところ、改変ペプチドは顕著なミトコンドリア破壊を示すことが明らかになった。ドラッグデリバリーシステムを応用することで、改変ペプチドを特定の標的がん細胞内へ導入したところ、改変ペプチドは細胞内ミトコンドリアを破壊することで、明確な選択的細胞毒性を示すことが明らかとなった。この結果は、「改変ペプチドを用いたミサイル療法」という新たな応用への可能性を示唆している。

本研究の結果より、ディフェンシン由来改変ペプチドは抗細菌活性、抗がん活性そしてミトコンドリア破壊活性を示すことが明らかとなった。一見異なるこれらの生理活性は、改変ペプチドの「負電荷生体膜破壊活性」という生理活性で説明することが出来る。また、改変ペプチドは医療・畜産分野において有効な新規治療薬となる可能性を秘めていることが明らかとなった。


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2009年12月21日(月)15:00〜

会場:産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)


1.石川 麻乃 氏(北海道大学大学院 環境科学院)
「アブラムシの翅多型制御メカニズムの解明」
 アブラムシはその進化過程で多彩な表現型多型・生活史を進化させ、変動しやすい環境に適応してきた。この表現型多型の分子基盤についての理解は進んでいない。私たちはこれまで、ソラマメヒゲナガアブラムシMegoura crassicaudaの翅多型に注目し、その翅型運命決定メカニズムと翅型分化プロセスの解明を目指してきた。
 本種では、密度刺激を受けた母虫の卵巣内で胚の翅型運命が決定する。密度切り替え実験により、胚の感受期がクチクラ形成期前後であること、また、10分という短い密度刺激でも有翅型産出が誘導されること、密度処理時間に応じて有翅型の産出時間が長くなることを示された。では、胚に密度を伝えるシグナル物質とは一体何だろうか?我々はその候補として、幼若ホルモン(JH)とセロトニンを挙げ、解析を進めた。JHは密度処理間で体内濃度に差がなく、JH分泌阻害剤投与によっても有翅型が産出されなかったため、密度シグナル物質として機能している可能性は低いと考えられる。また、セロトニンは高密度処理下で上昇する傾向にあり、密度感受から翅型決定でのいずれかのプロセスに関わっていると考えられる。
 セミナーではこれらに加え、翅型分化の発生プロセスについても紹介し、アブラムシの翅多型制御メカニズムの全体像と、表現型多型の進化について考察したい。

2.石川 由希 氏(北海道大学大学院 環境科学院)
「シロアリにおける兵隊の防衛行動と神経基盤」
 社会性昆虫は、同じ遺伝的背景を持ちながら異なる行動・形態を示すカーストに分化し、分業してコロニーのパフォーマンスを上昇させる。シロアリは、膜翅目昆虫とは独立に高度な社会性を獲得した不完全変態昆虫であり、なかでも兵隊は防衛に特殊化し、コロニーにとって欠かすことができない存在である。ワーカーや生殖虫に比べ、兵隊の攻撃性は非常に高い。この特異な攻撃性はどのような基盤で成立し、どのように進化してきたのだろうか?
 私はこれまで、オオシロアリHodotermopsis sjostedtiを用いて、兵隊の防衛行動の基盤となる神経メカニズムについて調べてきた。その結果、オオシロアリの兵隊では振動のセンサーである機械受容感覚毛や、咬みつき行動を支配する大顎筋、大顎運動ニューロンが発達していることがわかった。また、攻撃性と関連が深いオクトパミン系について調べると、兵隊の脳や食道下神経節内ではオクトパミン前駆体(チラミン)の濃度が高く、オクトパミン性ニューロンの一部が肥大化していた。兵隊分化に伴うこれらの神経改変は、兵隊特異的な防衛行動の基盤となるメカニズムだと考えられる。本セミナーではこれらの結果に加え、カースト間での攻撃性の定量的比較から、シロアリにおいて兵隊がどのように獲得されてきたのかについて考察したい。


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2009年11月2日(月)15:30〜
産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-1棟 2F会議室(旧所議室)
Prof. Mike Siva-Jothy (University of Sheffield, UK)
"Trauma, rhythms, immunity and fitness in bed bugs"

Traumatic insemination is unusual in gonochorists, yet the bedbugs and their close relatives cannot reproduce without doing it. I will present a natural history of bedbugs and then present experimental data examining the costs of mating in this group. Whilst male adaptations to sexual conflict are relatively well documented, female counter adaptations are not. I will present recent experimental evidence that shows the female response to traumatic insemination involves subtle integration of a number of physiological systems, as well as not-so-subtle remodelling of genital traits. I will argue that despite its bizzare natural-history the bedbug sheds light on immune management and reproductive trait evolution in general.


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2009年4月14日(火)15:00~
産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 6-1棟 2F会議室(旧所議室)

講演1.久保田 耕平 博士(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林動物学研究室)
「昆虫における隠蔽種の発見-コルリクワガタ種群の例-」

 日本産ルリクワガタ属はブナを中心とする冷温帯広葉樹林に強く依存している。従来からこの属は混同されていたものが分離されるという形で種数を増やしており,演者らはさらなる隠蔽種が存在する可能性を含めて,日本産ルリクワガタ属の進化研究を進めてきた。
 コルリクワガタPlatycerus acuticollisは地理的変異に富んだ「種」とされ,外見の差異に基づいて4亜種に分類されていた。演者らの詳細な形態学的解析,特に雄交尾器内袋の形態解析の結果,この群の中に明瞭に識別できる4種を認め,Kubota et al. (2008)において分類学的改訂を行った。そして,これらの分類群からなるコルリクワガタ種群the acuticollis species groupを提唱した。演者らが識別した4種はほぼ側所的に分布するが,従来の亜種分類の区分とは一致しない。種間では一定レベル以上の生殖隔離がはたらいていると推定されたので生物学的種概念にもとづいた場合でも別種として扱うのが妥当だと考えられた。
 現在日本産ルリクワガタ属全体の遺伝子解析を進行中だが,核遺伝子とミトコンドリア遺伝子にもとづく解析結果に大きな不一致が認められ,少なくともミトコンドリア遺伝子では複数回の浸透交雑を仮定しなければ説明がむずかしい。形態解析,過去の冷温帯林の分布変遷を併せて,この属の進化を考察していきたいと考えている。
 近年昆虫では,演者らの他の分類群の研究を含め,交尾器形態や遺伝子,生態的分化などの情報にもとづく隠蔽種の発見が相次いでいる。多様な変異を示す種,腑に落ちない現象が認められる種には,一度隠蔽種の存在を疑ってみるのがよいかもしれない。このことは分類学や生態学といった基礎科学の面でも,害虫防除や保全などの応用上も重要だろう。

講演2.棚橋 薫彦 氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林動物学研究室)
「クワガタムシにおける昆虫と微生物の関係」

 木材に穿孔する昆虫と微生物の関係は古くから注目されてきた。木材は天然に存在するバイオマスの多くを占めるが,窒素やリンなどの栄養に乏しく,難分解性のポリマーを多く含むことから,昆虫が単独で利用することが困難な餌資源である。木材を利用する昆虫のほとんどは微生物と密接な関係を持つことが知られており,そのような昆虫は(1)木材に生育した微生物を摂食するもの,(2)木材を摂食してそれを腸内微生物が分解するもの,(3)微生物の酵素を経口摂取してそれを腸内で作用させるもの,に大きく分けられる。(1)は養菌キクイムシによるアンブロシア菌の栽培,(2)はシロアリの腸内の原生動物やバクテリアが典型的な例であり,(3)のケースはカミキリムシで知られている。
 クワガタムシ科の幼虫は木材腐朽菌(いわゆるキノコ類)によって腐朽した材に穿孔する。クワガタムシは木材と菌糸を同時に摂取するが,究極的な栄養源がどちらであるかは不明であった。演者は腐朽菌菌糸を懸濁した寒天飼料を用いて,無菌的にクワガタムシ(コクワガタ)幼虫を飼育することに成功した。この結果は,クワガタムシ幼虫は腐朽材中の菌糸を栄養源として利用可能であり,その利用に腸内微生物は必須でないことを示唆する。これは(1)の関係にあてはまる。
 しかし,腸内微生物は本当に不必要なのだろうか?ある種のクワガタムシの雌親は産卵孔に“木屑”を詰め,孵化した幼虫は先ずそれを摂食する。この木屑には幼虫にとって重要な腸内微生物が含まれるかもしれない。そこで演者は,孵化直後に木屑を与えた幼虫と与えない幼虫をいくつかの腐朽段階の材に投入し,無菌的に飼育してその後の成長を比較した。未腐朽材ではどちらの幼虫も成長せず,両者の成長量に差はみられなかったが,よく腐朽した材では木屑を与えた幼虫のみが大きく成長した。これらの結果から,クワガタムシ幼虫は単独で菌糸を利用する能力を持つが,腐朽材においては材に含まれる様々な難分解性物質が菌糸の利用を妨げるため,これらを補助的に分解するための腸内微生物が必要であると考えられた。すなわち,クワガタムシと微生物の関係は(1)と(2)の双方が重要であったと言える。
 では,クワガタムシ幼虫の腸内微生物の正体とその働きは何だろうか?またその微生物はどこからやってくるのだろうか?本セミナーでは,演者のこれまでの研究成果に加え,クワガタムシ科における菌嚢(マイカンギア)の発見とそれから分離された酵母について最新の知見を発表したい。


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2009年2月6日(金)16:00〜
産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 S6-9棟 2F会議室(228-1)
森山 実 氏(大阪市立大学大学院 理学研究科 情報生物学研究室)
「クマゼミの胚および1齢幼虫の生理生態学的研究:気候変化に注目して」

近年、大阪など西日本の都市部を中心にクマゼミの個体数が増加した。この原因として、地球規模の気候変動や都市化による気温上昇との関連が指摘されているが、その因果関係は実証されていない。そこで本研究では、大阪に生息するセミの胚および1齢幼虫の生理学的性質に着目し、クマゼミ増加の原因を探った。その結果、クマゼミはアブラゼミなどの他のセミに比べて、より温暖で乾燥した気候に適応した性質をもつことが明らかになった。今回の発表では特に、気温上昇による孵化時期の早期化の影響や、都市部での土壌の硬化の影響について報告する。


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2008年10月3日(金)15:00~
産業技術総合研究所 つくばセンター中央第6事業所 6-1棟 2F会議室(旧所議室)
本郷 裕一 博士(理化学研究所基幹研究所/生研センター)
「シロアリ腸内共生系研究の最前線〜ゲノムから解き明かす培養不能微生物群の実体〜」

 シロアリはゴキブリに近縁な社会性昆虫で、2,600種以上が記載されている。そのほとんどが枯死植物のみを餌としており、地球の炭素循環において重要な役割を果たしている。木造建築物の大害虫でもあるが、最近では木質バイオマスからの新規バイオ燃料創成という観点から、世界的な注目を集めている。
 しかしながら、シロアリの木質消化機構は実はよくわかっていない。シロアリ自身もセルラーゼを分泌しており木片を一部消化できるが、中心的な役割を担うのは原生生物、真正細菌、古細菌とからなる腸内共生微生物群である。これらは群集全体として、セルロース分解、窒素固定、還元的酢酸生成、メタン発酵などを行う事が知られている(1)。ところが、その微生物種の大部分が現在に至るまで培養に成功していないため、その系統分類、群集構造、生理、生態はほとんど未知のままであった。
 我々の研究グループでは、培養を介さない手法を用いて、シロアリ腸内共生系の解明をすすめてきた。rRNA遺伝子配列に基づく多様性解析によると、1種類のシロアリに1~数十種類の原生生物と、数百~数千種の細菌が共生し、そのほとんどがシロアリ腸にのみ見られる系統群で、群集構造は宿主シロアリ種内で高度に保存されていた(2)。シロアリ特異的な真正細菌系統群は22もの多様な門に分類され、Termite Group 1(TG1), 2, 3という全く新規な未培養細菌門まで発見された(3)。
 得られた16S rRNA遺伝子配列を基に蛍光ハイブリダイゼーション解析を行ったところ、これら多様な細菌の多くは腸内原生生物の細胞内・外に、原生生物種に特異的に共生していることが明らかとなった。例えば、TG1門に属する細菌は、多様な原生生物の細胞内にのみ、原生生物種特異的に見出される(4)。しかし、腸内原生生物・共生細菌のいずれも培養に成功していないため、これらの詳細な機能は全く不明であった。
 我々は、これら腸内共生微生物の機能解明のため、原生生物群集についてはメタトランスクリプトーム解析を行い(5)、細菌群集については、等温全ゲノム増幅法を用いた、少数細胞からの個々の細菌種のゲノム完全長取得を目指した(6)。今回は、後者の詳細な解説を中心に、最新のシロアリ腸内共生系研究の成果を紹介していく。

1. M. Ohkuma, Trends Microbiol. 16, 345 (2008).
2. Y. Hongoh et al., Appl. Environ. Microbiol. 71, 6590 (2005).
3. Y. Hongoh et al., Appl. Environ. Microbiol. 72, 6780 (2006).
4. M. Ohkuma et al., FEMS Microbiol. Ecol. 60, 467 (2007).
5. N. Todaka et al., FEMS Microbiol. Ecol. 59, 592 (2007).
6. Y. Hongoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 105, 5555 (2008).


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2008年4月24日(木)15:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6事業所 6−9棟 228−1室
二橋 亮 博士(農業生物資源研究所・東京大学)
「昆虫の紋様形成に関与する分子機構の解明に解明にむけてートンボとチョウを例にー」

チョウの翅に代表されるように、昆虫には非常に多種多様な紋様が見られる。体表の紋様は、種の認識だけでなく、天敵から身を守るのに役立ったり、体温調節に役立ったりと、さまざまな機能が考えられている。しかし、紋様形成に関わる分子メカニズムの研究は、まだ断片的な知見が得られているにすぎない。本セミナーでは、紋様の多様性を産み出すメカニズムの一つとして、トンボ類に見られる形質置換の例を紹介し、さらにアゲハ幼虫を用いた紋様形成に関わる遺伝子レベルの調節を紹介する。

1.トンボ類の近縁種間における形質置換の考察
トンボ目昆虫は、近縁種間でも形態や行動に多様性が見られるグループである。これは、種の認識が基本的に視覚に頼っているためと考えられるが、一方で、異種間での連結や交尾の観察例も多く存在し、種間雑種と思われる個体もときどき採集される。演者は核およびミトコンドリアDNAの解析から、トンボ類の雑種個体の判定、および親種の組合せを解明することに成功した。その過程で、非常に近縁な種間(カワトンボ属など)では、ミトコンドリアDNA が種差を反映しない例(したがってどちらの種が母親だったか特定できない)も見られた。これは雑種を介してミトコンドリアDNA が種を超えて広まった結果と考えられる。雑種ができるほど近縁な種が同所的に生息する場合、雑種形成を回避するメカニズムが発達することが予想されるが、カワトンボ属とアカネ属に着目したところ、カワトンボ属は2 種が共存する地域において翅色に顕著な形質置換が見られ、アカネ属では、近縁な(アキアカネ・ムツアカネ)と(ナツアカネ・マダラナニワトンボ)において成熟成虫の体色が赤と黒に変化する形質置換が並行して生じていることが示唆された。

2.アゲハ幼虫における紋様形成の分子機構の解明
アゲハの幼虫は4 齢までは全身の大部分を黒色部が占め、鳥のフンに擬態していると考えられている。しかし、5齢になると全身が緑色になって周囲の草木に紛れ込む。演者は、アゲハの2つの紋様、およびアゲハと他の鱗翅目昆虫の幼虫紋様を遺伝子レベルで比較することによって、紋様に関わる遺伝子の同定と、その発現が変化するメカニズムの解明を試みた。紋様形成に関わる候補遺伝子を得るため、cDNA サブトラクション法により、4 回目の脱皮(4 眠)時に発現の変化する遺伝子を探索した。その結果、終齢幼虫の緑色に関わると考えられるインセクトシアニン様遺伝子や、若齢幼虫のイボ状突起で特異的に発現するクチクラ遺伝子が複数得られた。また、黒色領域との関連が考えられる黒色紋様の領域決定に関わる分子機構を解明するため、アゲハにおいてメラニン合成に関わる複数の酵素遺伝子のクローニングを行い、whole-mount in situ hybridization による発現解析と、培養皮膚を用いたメラニン前駆体の取り込み実験を行った結果、齢特異的に酵素遺伝子が協調的に発現することが黒や赤の紋様形成に必要であることが示された。
次に、紋様の切り替えが脱皮を介して起こっていることに着目し、昆虫の脱皮・変態に関わる2つのホルモン、エクジソンと幼若ホルモン(JH)に着目した。アゲハ幼虫の体液中のJHタイターを測定したところ、4齢幼虫になって1日以内に急激に減少することが確認された。また、この時期にJH処理を行うと高い割合で若齢型の幼虫が得られることが確認された。さらに、黒色紋様と関連の見られたTHとDDCの発現パターンが、JH処理によって若齢型を保つことも示された。以上の結果から、JHの濃度依存的にアゲハの幼虫の紋様が変化するモデルが考えられた。
さらにアゲハを幼虫紋様の類似したシロオビアゲハおよび紋様が大きく異なるカイコと比較解析することで、アゲハ特有の形質に関わる遺伝子が得られるのではないかと予想した。幼虫皮膚のESTライブラリーを3種間で比較したところ、幼虫の青色と関連の見られるビリン結合蛋白質に加えて、黄色の着色と関連の見られる遺伝子、さらに紋様特異的なクチクラ蛋白質がアゲハで高発現していることが確認された。これらの遺伝子をカイコのゲノム情報と照らし合わせたところ、アゲハで遺伝子重複が生じ、進化の過程でアゲハ幼虫の形態変化に深く関わる遺伝子が得られたことが示唆された。

参考文献
Futahashi & Hayashi, 2004. Tombo 47: 31-36.
Futahashi & Fujiwara, 2005. Dev Genes Evol. 215: 519-529.
Futahashi & Fujiwara, 2006. Insect Biochem Mol Biol. 36: 63-70.
Futahashi & Fujiwara, 2007. Insect Biochem Mol Biol. 37: 855-864.
Futahashi & Fujiwara. 2008. Science 319: 1061.


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2007年11月22日(木)15:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6事業所 6−9棟 228−1室
Prof. John H. Werren (Univ. Rochester, USA)

1. “Wolbachia: reproductive parasites of arthropods”
Reproductive parasites are typically transmitted via the reproduction of their hosts, and alter host reproduction in ways advantageous to the parasite. Reproductive parasitism has evolved numerous times independently in different microbial taxa. However, the most widespread and diverse group below to the bacterial genus Wolbachia. Wolbachia are intracellular alpha proteobacteria that is common and widespread in arthropods and filarial nematodes. The horizontal spread of these bacteria within the arthropods (the most abundant animal group) can be considered one of the major “pandemics” in the history of life. These bacteria are routinely inherited vertically through the egg cytoplasm, and alter cellular and reproductive biology of their hosts. Effects include induction of parthenogenetic development, feminization, male-killing and sperm-egg incompatibility. These bacteria may be important in accelerating arthropod evolution. Here I describe recent developments in genomic, functional, ecological and evolutionary aspects of Wolbachia and their interactions with their hosts. Attention is paid to the global dynamics of these bacteria and their effects on ecology and evolution of their hosts, including studies of lateral gene transfer between Wolbachia and invertebrates.

2. “Genetics of speciation”
One of the fundamental questions in evolutionary biology concerns how populations diverge and evolve into new species. Our understanding of the genetic basis of divergence in morphology, behavior, and reproductive incompatibility is still rudimentary. Here I describe recent studies on this topic using the emerging genetic model system, Nasonia. Nasonia is an outstanding system for the genetic analysis of complex traits. Among the features making this an intrinsically excellent genetic system are (a) ease of laboratory rearing (b) a short (2 week) generation time, (c) closely related interfertile species, (d) recently available genome sequences, and (e) haplodiploid genetics. Males are haploid whereas females are diploid in these insects, providing the advantages of haploidy in a complex multicellular organism. Using the full genome sequence of Nasonia vitripennis (V) and partial genome sequencing of the two sibling species N. girauliti (G) and N. longicornis (L), we have begun to analyze the genetic basis of complex trait differences between the species. Male haploid facilitates the mapping of SNPs, identification of QTL and epistatic interactions, and rapid positional cloning of QTLs. Using these features we have examined QTL for a recently evolved differences in morphology, behavior and reproductive incompatibility. We have cloned genes involved in male specific difference in wing size between the three species; G males have large wings and fly, L males have intermediate wings, and V males have small vestigial wings and cannot fly. A QTL analysis revealed 4-5 genetic regions responsible for most of these differences. We have backcrossed 4 wing QTL from G into V and analyzed their interactions in this background. One QTL (ws1) causes a 50% increase in wing cell size in males only. We then took advantage of haploid males and flanking visible markers to generate lethals tightly linked to ws1, and used these to quickly clone the gene involved. The gene is doublesex, a master sex determination gene found from worms to humans. A model and data are presented on how dsx causes species, tissue and sex differences in cell growth is presented. Results on identification of QTL involved in nuclear-mitochondrial incompatibilities, and the role of endosymbiotic bacteria in reproductive incompatibility between species is also discussed. Nasonia has inherent advantages for studying complex genetic traits; it can now be more fully exploited due to the availability of the sequenced genomes.


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2007年11月8日(木)16:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6事業所 6−9棟 228−1室
Dr. Gerald Reeck (Department of Biochemistry, Kansas State University, USA)
“Molecular genetics of pea aphid salivary glands”
Aphid saliva is known to be important to the interaction of insect and host (and presumably nonhost) plants. To begin to identify the salivary gland secretome, we have constructed cDNA libraries starting with RNA from salivary glands dissected from the pea aphid, Acyrthosiphon pisum. We have sequenced obtained about 10,000 ESTs from these libraries. Among the contigs formed from these ESTs are a variety of putative hydrolases and oxidoreductases, as expected from previous investigators' biochemical studies on diluted aphid saliva. In addition a number EST-contigs encoding other proteins and enzymes of interest have been tentatively identified by blasting against databases. Finally, numerous of the salivary gland EST-contigs do not match any annotated genes or ESTs from other organisms. Much of our effort has focused on such an unidentified transcript, which we call c002 (and which encodes protein C002). We have demonstrated the presence of the transcript and the protein in salivary glands, the transfer of C002 protein to plants fed upon by aphids, and, using RNAi-based knockdown of its transcript in adult aphids, C002's essentiality for survival on host plants. The electrical penetration graph technique indicates that c002-knockdown insects either do not find sieve elements or immediately withdraw from them. Thus, salivary protein C002 appears to be a protein essential for the pea aphid to establish or maintain contact with phloem sap.


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2007年10月5日(金)16:30〜
会場:産業技術総合研究所 つくば中央 第6事業所 6−11棟 216室
細 将貴 氏(京大院・理・生物科学)
「捕食者による多様性の創出:カタツムリ食のヘビが促進する種分化と適応進化」
種分化のメカニズムを解き明かすことは進化生物学における最も重要な命題である。しかし,種分化の要因を特定するに至った例はすくない。それは,すでに分化が完了した2種間の生殖隔離機構は通常ひとつではなく,しかも分化の過程で各隔離機構の強弱が変化してしまっているため,種分化の最初の段階で働いた生殖隔離機構をひとつに特定することが極めて難しいためである。
しかしカタツムリには,巻きの逆転という極めて単純でユニークな種分化の様式が知られている。カタツムリの殻の巻き方向は種ごとに固定されており,多くの種は右巻きである。巻き方向は母親の遺伝型によって決定され,その基盤となる遺伝子は一遺伝子座上にあると考えられている。巻きが逆転した個体はノーマルな個体と交尾することができなくなるため,巻きの逆転が個体群中に固定されることは,他の個体群との交配前隔離の確立,すなわち種分化に直結すると考えられている。ところが,それと同時に,逆巻き個体は集団中の大多数と交尾ができなくなるため適応度を低下させてしまうはずである。そのため,逆巻き遺伝子は非常に厳しい条件のもとでしか頻度を高めることができないということが,理論的に予想されている。
私はこの問題に対し,右巻きのカタツムリ捕食に特化した捕食者(セダカヘビ類)の存在下では左巻きのカタツムリの種分化が起きやすいという仮説をたて,分布パターンの比較から検証を進めた。その結果,仮説は支持された。このことは,群集構造の地理的変異を比較法の軸として利用することが,種分化の要因を解明する上で重要な手がかりを提供することを示す。
本発表ではこのほかに,カタツムリ食のヘビとカタツムリの相互作用か ら展開される,いくつかの萌芽的なテーマについてお話しする予定です。


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2007年6月6日(水)16:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央 第6事業所 6−9棟 228−1室
藤原 晴彦 博士(東大院・新領域・先端生命科学)
「昆虫のテロメアの構造と進化」
ほとんどの真核細胞の染色体末端(テロメア)に存在する短い反復配列(テロメア反復配列)は、逆転写酵素の一種であるテロメラーゼによって合成される。ところが、一部の昆虫ではテロメラーゼ活性が消失(もしくは低下)しており、ショウジョウバエなどではテロメラーゼの代わりにnon-LTR型レトロトランスポゾン(別名LINE)がその機能を代替している。利己的遺伝子が宿主の機能を担うようになった極めて明瞭なケースである。テロメラーゼとLINEは分子系統的には近縁な関係にあり、また両者が核内で逆転写を進行させる点で機能的にも類似していることから、テロメラーゼはLINEから進化した(もしくは逆)ともいわれる。一方、我々は最近、複数の昆虫のテロメラーゼ遺伝子の同定に成功した。構造や発現から見ると昆虫のテロメラーゼは全般に脆弱であり、その機能を補う形で特異的なLINEが進化した可能性が考えられた。昆虫の特殊なテロメア形成機構を中心に、テロメアの構造と進化について考察する。


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2007年4月17日(火)16:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央 第6事業所 6−9棟 228−1室
工藤 慎一 博士(鳴門教育大・学校教育・自然系)
「栄養卵の進化生態学」
包括適応度を基に親子関係のダイナミクスを分析した「親子間の利害対立(Trivers, 1972)」は,我々の生物観に潜む素朴な常識を覆す理論であり,以後の様々な行動生態学理論の基盤となってきたことは周知の通りである。親の投資の進化を考える際,まず親側の最適戦略として捉えることが多いが,親の投資を巡って兄弟姉妹間に競争が生じる状況では,子供サイドからの視点が不可欠となる。子供の利己的行動,つまり親の投資を搾取して兄弟姉妹の適応度を下げる行動の進化の過程は,親子間の利害の対立が際だつ状況である。利己的な子供は,親の望む以上に兄弟姉妹の適応度を下げると予想されるが,この極端には兄弟姉妹間のカニバリズムがあげられよう。栄養卵は,そのような状況下で進化したものかも知れない(Crespi, 1992)。この栄養卵とは,発生能力を持たず餌として機能する卵を指し,アリ等の真社会性昆虫に良く知られている。しかし,これらの真社会性昆虫ではすでに繁殖を巡る分業が確立しており,コロニー構成員間に複雑な利害の対立の存在が予想される。この系を用いて栄養卵の起原と進化に関する様々な仮説,1)Parental investmentの延長:Ice Box仮説(Polis,1984),1-b)不平等なparental investment仮説(Kudo, 2001),2)親子間のConflict解消仮説(Crespi, 1992)を検討するのは難しい。その点,親が子供の世話を行うのみに留まる亜社会性昆虫は,この問題を検討する系として適していると言えよう。
 半翅目ツチカメムシ科には,外敵からの防衛さらには孵化幼虫への随時給餌を伴う複雑なparental careを行う種が存在する。Nakahira(1994)は,この亜社会性種の一つ,ミツボシツチカメムシにおいて,雌親が栄養卵を生産することを発見した。
 このセミナーでは,カメムシ類で初めて発見された栄養卵生産と消費の実態,栄養卵・受精卵のアロケーションと雌親の表現型の関係,栄養卵生産・消費における適応度損益,適応度損益を変化させる要因の特定とその要因変動に対応する栄養卵投資の可塑性などの研究成果を紹介し,最近,日本では少々陰りの見える(?)進化生態学が本来持っているロジックの魅力を皆さんに伝えたい。


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2006年9月25日(月)16:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6事業所 6−1棟2F 第7会議室
Dr. Jone Tane Christeller (Horticulture & Food Research Institute of New Zealand)
“Gene Technologies in Insect Pest Control: Research at the HortResearch Institute of New Zealand”
Recombinant DNA technologies contribute significantly to international pest control strategies almost entirely through their application to transgenic plants expressing Bacillus thuringiensis endotoxins. The development and uptake of other approaches is slow but urgently needed. Two areas under investigation by HortResearch are the development of a novel transgene insecticide using expression of the biotin-binding proteins, avidin and streptavidin and the analysis of a lepidopteran larval midgut library as a method of target gene discovery. Biotin-binding proteins show several advantages over Bt toxins but raise important safety issues. EST-based insights into lepidopteran larval digestion will be presented.


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2006年8月28日(月)15:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6事業所 6−1棟2F 第7会議室
Dr. Jan Engelstaedter (Department of Biology, University College, London, UK)
“Evolution in populations infected with male-killing bacteria”
Male-killing bacteria are maternally inherited endosymbionts of many insect species that selectively kill male offspring of their hosts. Using both analytical techniques and computer simulations, we studied the impact of these bacteria on the population genetics of their hosts. In particular, we derived and corroborated formulae for the fixation probability of mutant alleles, rate of allele substitution, mean times to fixation and/or extinction, and expected homozygosity, for varying male-killer prevalence. Our results demonstrate that infections with male-killing bacteria impede the spread of beneficial alleles and facilitate the spread of deleterious alleles. The reason for this lies in the strongly reduced fitness of infected females combined with no or very limited gene flow from infected females to uninfected individuals. These two properties of male-killer infected populations reduce the population size relevant for the initial emergence and spread of mutations. In contrast, use of Wrightfs equation relating sex ratio to effective population size produces misleading predictions. We discuss the relevance of our results to the expected level of genetic variation maintained in male-killer infected populations, the relationship to the similar effect of background selection, and theimpact of other sex-ratio distorting endosymbionts.

Dr. Arndt Telschow (Kyoto University, JSPS Fellow)
"Wolbachia-induced unidirectional CI and speciation: mainland-island model"
The bacteria of the genus Wolbachia are among the most common endosymbionts in the world. In many insect species these bacteria induce a sperm-egg incompatibility between the gametes of infected males and uninfected females, commonly called unidirectional cytoplasmic incompatibility (CI). It is generally believed that unidirectional CI cannot promote speciation in hosts because infection differences between populations will be unstable and gene flow will eliminate genetic differences between diverging populations. In the present study we investigate this question theoretically in a mainland-island model. Our analysis shows that (a) the infection polymorphism between populations is stable below a critical migration rate, (b) the uninfected “island” can maintain divergence at a selected locus (e.g. can adapt locally), and (c) unidirectional CI selects for premating isolation in uninfected island populations if they receive migration from a Wolbachia-infected mainland. Interestingly, premating isolation is most likely to evolve if levels of incompatibility are intermediate, if the infection causes fecundity reductions or Wolbachia transmission is incomplete. This is because under these circumstances an infection pattern with an infected mainland and an uninfected island can persist in the face of comparably high migration. These findings generally suggest that under some conditions unidirectional CI can be a factor in speciation of Wolbachia hosts.


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2006年7月24日(金)15:00〜
農業生物資源研究所 大わし地区 管理棟2階 輪講室(第8回昆虫自主セミナーと共催)
Dr. Glen Powell (Division of Biology, Imperial College London, UK)
“Aphid stylet activities during interactions with plants and viruses”
Aphids damage plants by injecting saliva, removing photosynthates, and transmitting plant viruses. Incorporating insect and plant in an electrical circuit allows monitoring of stylet activities during these economically-important processes. The stylets generally follow an extracellular pathway, but regularly puncture cells with important consequences for host selection, virus transmission and interactions with plant defence mechanisms1. The talk will highlight recent insights into the two most damaging phases of the aphid-plant interaction:
1. Epidermal events. When aphids first encounter a potential host plant, they initiate brief stylet penetrations (‘probes’) that are limited to the epidermis. Although this behaviour does not damage plants directly, it results in the transmission of a wide range of plant viruses. Recent studies have revealed the specific intracellular stylet activities associated with virus acquisition and inoculation, and indicate that aphids deliver virus particles into epidermal cells during very brief (<2 s) periods of salivation2.
2. Phloem events. Phloem sieve elements are the site of nutrient uptake by aphids. In order to feed successfully, aphids need to overcome phloem defence mechanisms. Recent studies with β-aminobutyric acid (BABA) 3 suggest that application of this non-protein amino acid to plants enhances phloem defences against aphids.
References
1. Powell, G., C.R. Tosh & J. Hardie. 2006. Host-plant selection by aphids: behavioral, evolutionary and applied perspectives. Annual Review of Entomology 51: 309-330.
2. Powell, G., 2005. Intracellular salivation is the aphid activity associated with inoculation of non-persistently transmitted viruses. Journal of General Virology 86: 469-472.
3. Hodge, S., G.A. Thompson & G. Powell, 2005. Application of DL-β-aminobutyric acid (BABA) as a root drench to legumes inhibits the growth and reproduction of the pea aphid Acyrthosiphon pisum (Hemiptera: Aphididae). Bulletin of Entomological Research 95: 449-455.


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2005年5月18日(水)15:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6事業所 6−9棟2F 228-1, 2室
Dr. Claude Rispe (INRA Rennes, France)
"The evolution of codon bias: selective and mutational pressures. Examples in prokaryotes (e.g. insect endosymbionts) and Metazoan (e.g. insects)"
The heterogeneity of codon usage among and within genomes provides a battleground for theories of molecular evolution: neutralism, selectionism, near-neutralism… It is indeed the result of a complex balance of forces (selection, drift, etc.) in each species. I will rapidly browse the main statistical tools and parameters that have been used to evaluate codon bias (the degree of bias from a random usage). I will show several factors that create biases (optimization of translation, horizontal transfer, or regional biases such as isochores in mammals or strand biases. Examples will be taken from both prokaryotes and eukaryotes (with a first large-scale study of aphid genes). The connection between codon bias and other parameters of genes (evolutionary rates and constraints) will be finally discussed.

Dr. Denis Tagu (INRA Rennes, France)
"A transcriptomic approach to study the photoinduced switch from parthenogenesis to sexual development in the pea aphid"
Aphids are plant sap sucking insects and important crop pests. Aphids develop a high capacity of multiplication and colonisation of host plants by a mechanism involving clonal reproduction: many aphid genotypes present a life cycle consisting of numerous parthenogenetic generations followed by a single sexual generation within the annual life cycle. Sexual morphs (male and female) are induced in autumn by short photoperiods. After mating, sexual females lay diapausing eggs that will hatch the following spring and initiate new asexual lineages that will continue reproducing parthenogenetically during the long photoperiod seasons. Aphidユs life-cycles illustrate the high phenotypic plasticity of the aphid genome: one given genotype is able to produce very different morphs, from asexual to sexual phenotypes. This "reproductive polyphenism" is mainly triggered by variation in photoperiodism.
Our aim is to identify cellular functions involved in the reproductive polyphenism. A transcriptomic approach was initiated consisting on 1) the generation of a collection of expressed genes (ESTs) and 2) the comparative hybridization performed on microarrays containing the ESTs. In the frame of the International Aphid Genomics Consortium, a collection of ESTs (more than 40,000) have been performed from several cDNA libraries. The description and annotation of these ESTs will be discussed.
A unigene set has been spotted into glass microarrays to compare the transcript profiles of a given genotype reared under long (parthenogenetic development) or short (sexual development) photoperiod. The statistical analyses allowed the identification of a group of genes regulated by photoperiodic changes and these data will be discussed.

Dr. Jean-Christophe Simon (UMR INRA/AgroCampus de Rennes, France)
"Birth, life and death of asexual lineages of aphids"
Aphids typically reproduce by cyclical parthenogenesis- that is they have many parthenogenetic (asexual, clonal) generations through the "good" months of the year, followed by sexual reproduction that produces over-wintering cold resistant eggs. However, they also show numerous and irreversible transitions from cyclical to obligate parthenogenesis within the same species, leading to an array of permanently asexual lineages. Recently, major progress has been achieved on tempo and mode of origins of these asexual lineages of aphids as well as on their evolutionary success. These advances have been possible by coupling molecular, ecological and biological approaches for a comprehensive view of aphid evolution without sex.
Asexual lineages in aphids have multiple origins - even within the species level - and may originate through several mechanisms such as contagious parthenogenesis, spontaneous loss of sex and hybridisation. Once originated asexual aphids may have a great ecological success both geographically and temporally that suggests a good potential for adaptive evolution in absence of recombination. Adaptive evolution may involve important traits such as insecticide resistance or plant utilisation. However asexual lineages of aphids seem to be of moderate longevity, hence do not contribute to the special cast of "ancient asexuals". If they survive short term costs of asexuality (e.g. cold winters, biotic interactions, mutation accumulation), they will be inevitably doomed in the longer term because they do not resist Muller's ratchet and generate sufficient genotypic diversity to evolve.


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2004年6月30日(水)16:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6 6−11棟2F 215, 216室
菅野 紘男 博士(九州沖縄農業研究センター)
「セジロウンカの加害によってイネ体内に誘導される対病原微生物免疫機構について」
演者らはセジロウンカ(以下ウンカ)の加害を受けたイネにおいていもち病(糸状菌)や白葉枯病(細菌)に対する抵抗性が誘導されるという現象を発見した(Kanno and Fujita 2003)。本現象に関する詳細な解析を試みた結果、抵抗性誘導はウンカの雌雄共通にみられる吸汁行動によって発現するsystemicなものであること、一度誘導された抵抗性は比較的長期(15日以上)にわたって持続すること、現象発現にはウンカの口針挿入という物理的刺激ではなく吸汁行動に伴う化学的な要因が深く関与していること等が明らかにされた。さらに、メカニズムに関する生化学的、分子生物学的解析によって、ウンカの唾液腺に由来する物質(エリシター)が引き金となって、イネ体内にジャスモン酸経路やサリチル酸経路などの生体防御反応に関連するシグナル伝達系が活性化すること、その結果、複数のPR-タンパク質(抵抗性関連遺伝子)やファイトアレキシン(抗菌物質)が生成され、誘導抵抗性発現に結びつくこと等が明らかにされつつある。本セミナーでは、これまでの研究の概要を紹介するとともに、現状における課題や今後の研究方向についてお話しする。


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2003年9月26日(金)15:00〜
産業技術総合研究所 つくば中央第6−11 2F会議室
Dr. David L. Stern (Dept. Ecol. Evol. Biol., Princeton Univ., USA)
1)The morphological consequences of gene regulation microevolution in Drosophila
One of the most poorly understood components of evolution is how genetic variation is translated into phenotypic variation (Stern, 2000). We study this problem by working “backwards” from phenotypic differences between species to the genetic changes that are responsible for these differences. We are particularly interested in dissecting the developmental pathways through which these genetic changes influence the phenotype.
We have identified several genes that evolved to generate morphological change and these are some of the few morphological species differences that have been mapped to single genes. We perform all of this work in the genetic model system Drosophila melanogaster and its close relatives, which provides an ideal opportunity to identify the individual molecular events leading to morphological evolution.
Several years ago we determined that a major morphological difference between two species of Drosophila, the presence or absence of most of the hairs on the dorsum of the first-instar larva, was caused by evolution of a single gene, ovo-shavenbaby (Sucena & Stern, 2000, PNAS). We recently determined that three other cases of the evolution of the naked-larva phenotype in the Drosophila genus all involve evolution of the ovo-shavenbaby gene (Sucena et al., in press, Nature). That is, morphological convergence sometimes involves evolution of the same gene, even when the species are separated by 60 million years of evolution. This work throws the whole concept of homology into suspicion. If identical phenotypes can evolve by parallel evolution of the same gene, how can we be sure that similar structures are really homologous (derived from a common ancestor)? It seems that classical concepts of homology are too restrictive and our contemporary understanding of gene action renders the concept of homology tricky at best.
Refs.
Sucena et al. (2003) Nature in press.
Stern (2003) The Hox gene Ultrabithorax modulates the shape and size of the third leg of Drosophila by influencing diverse mechanisms. Dev. Biol. 256: 355-366.
Sucena and Stern (2000) Divergence of larval morphology between Drosophila sechellia and its sibling species caused by cis-regulatory evolution of ovo/shaven-baby. PNAS 97: 4530-4534.
Stern (1998) A role of Ultrabithorax in morphological differences between Drosophila species. Nature 396: 463-466.

2)Developmental origin and evolution of bacteriocytes in the aphid-Buchnera symbiosis
Symbiotic relationships between bacteria and insect hosts are common. Although the bacterial endosymbionts have been subjected to intense investigation, little is known of the host cells in which they reside – the bacteriocytes. We have studied the development and evolution of aphid bacteriocytes, the host cells that contain endosymbiotic bacteria, Buchnera aphidicola.
We show that bacteriocytes of Acyrthosiphon pisum express several genes (or their paralogues): Distal-less, Ultrabithorax/abdominal-A and Engrailed. Using these markers, we find that a subpopulation of the bacteriocytes is specified prior to the transmission of maternal bacteria to the embryo. In addition, we discovered that a second population of cells is recruited to the bacteriocyte fate later in development. We experimentally demonstrated that bacteriocyte induction and proliferation occurs independently of B. aphidicola. Major features of bacteriocyte development, including the two-step recruitment of bacteriocytes, have been conserved in aphids for 80-150 MY. Furthermore, we have investigated two cases of evolutionary loss of bacterial symbionts: in one case, where novel extracellular (eukaryotic) symbionts replaced the bacteria, the bacteriocyte is maintained; in another case, where symbionts are absent, the bacteriocytes are initiated but not maintained.
The bacteriocyte represents an evolutionarily novel cell fate, which is developmentally determined independently of the bacteria. A surprising number of transcription factors (three out of five) show novel expression patterns in bacteriocytes, suggesting that the bacteriocyte may have evolved by co-opting expression of many additional transcription factors. The evolutionary transition to a symbiosis in which bacteria and an aphid cell form a functional unit, similar to the origin of plastids, has apparently involved extensive molecular adaptations on the part of the host cell.
Refs.
Braendle et al. (2003) Developmental origin and evolution of bacteriocytes in the aphid-Buchnera symbiosis. PLoS Biology in press.
Miura et al. (2003) A comparison of parthenogenetic and sexual embryogenesis of the pea aphid Acyrthosiphon pisum (Hemiptera: Aphidoidea). J. Exp. Zool. 295B: 59-81.