深津 武馬
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 首席研究員
(兼)生物共生進化機構研究グループ長

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研究課題 「共生細菌による宿主昆虫の体色変化:隠蔽色に関わる共生の分子基盤の解明」
多くの昆虫類は体内にさまざまな共生細菌を保有している。共生細菌のあるものは宿主の生存に必須であり,他のものは宿主に新規生物機能を賦与する活性をもつ。我々は最近,エンドウヒゲナガアブラムシにおいてRickettsiella 属の新規な共生細菌を発見し、その感染によって赤色型のアブラムシの体色が緑色に変化することを見いだした。アブラムシの集団中による赤と緑の体色多型は古くから生態学的に研究されており、主要な捕食者であるテントウムシが赤色のアブラムシを選択的に捕食する一方で,主要な寄生者のエルビアブラバチが緑色のアブラムシに選択的に産卵するという捕食—被食関係が、この体色多型の維持に重要であると考えられてきた。ところが本発見は、アブラムシの体色が自身の遺伝子型のみならず、共生細菌によっても規定されていることを示したものであり,生態学的にも生理学的にも進化生物学的にも重要である。本研究ではこの現象の基盤となるメカニズムについて共生細菌側と宿主側の網羅的ゲノム解析から解明をめざす。
[研究1]体色変化に関わる共生細菌の全ゲノム配列決定及び発現遺伝子の網羅的解析
[研究2]体色変化の前後での宿主側発現遺伝子の網羅的解析
[研究3]共生による体色変化に関わる遺伝子ネットワークの進化プロセスの推定
 我々の発見した独自の現象に対して,実験生物学,生理生態学およびゲノム科学よりのアプローチを駆使することにより,他課題との連携をとりつつ、共生,擬態や隠蔽色といった新奇複合形質生成プログラムの特殊性と一般性について従来にない深さと広さの理解をめざす。