研究領域代表

長谷部 光泰
基礎生物学研究所 生物進化研究部門 教授
[領域概要] [計画研究]

 ダーウィンはさまざまな動植物を比較解析することによって自然選択理論を考案しました。木村資生はさまざまな生物の相同アミノ酸配列を比較した結果が時間に比例するという実験結果を重要なきっかけとして、分子進化の中立理論を考案しました。このことから、生物進化の基本原理は実験材料によらず共通であり、複数の材料を研究し、それを統合することによってこそ新しい理論を構築できるということが伺えます
 自然選択理論、中立理論を始めとする既存の進化理論がいまだ取り込むことに成功していない現象が、食草転換、新奇適応形態、擬態、共生など、複数の形質進化が積み重なることによってはじめて適応的になり、未完成な段階では適応的でなく、かえって生存に不利になってしまうような形質(複合適応形質)の進化です(Barton et al. 2007. Evolution. Cold Spring Harbor Lab.)。例えば、昆虫の食草転換は幼虫が新しい食草を食べられるようになる進化と親が新しい食草に産卵するような進化がともに起こらなければ進化しません。また、新奇適応形態(例えばカメの甲羅、食虫植物の捕虫葉)、擬態、共生(寄主と宿主の間での複数の変化)も、いくつかの進化が重なって初めて適応的となり、その途中段階では適応的でなく、かえって不利になってしまう可能性があります。
 本領域では、複合適応形質を制御する遺伝子を同定し、その進化メカニズムとプロセスを推定することにより、進化の新しい共通理論を導きだすことを目指します。そのために、1分子並列処理シーケンサーなどを活用した新実験研究手法の開発を異なった研究材料を用いる研究者が共同して行い、モデル生物だけでなく、多様な非モデル生物のゲノムワイドな遺伝子ネットワーク解析を可能とし、進化生物学の技術革命を引き起こしたいと考えています。