須藤定久は地圏資源環境研究部門に所属しています。
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西日本の砂需給について
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4.瀬戸内海の海砂利採取禁止とその影響
瀬戸内海での海砂利の採取は,環境破壊が著しいとして,採取禁止の方向が各県で打ち出されている.既に広島県は平成9年度(1997年)より採取を全面禁止している.平成8年度には約251万立方mが採取されていたので,おそらく50万立方m程の移出県であったものが,200万立方m程の移入県となったものと推定される.
今後,岡山・香川・愛媛などの各県が続々と採取禁止に向かうようだ.これら各県が採取禁止となると,これらの県は海砂以外に砂の有力な供給源を持たないことから,移出県から移入県となる.中・四国から近畿方面へ出荷されていた約800万立方mが殆どなくなり,中・四国は約600万立方mの移入域となる.
九州地区の採取量が現状のままで,新たな供給がないとすると,九州周辺海域で採取された砂の余剰分727万立方mのみが東の中国・四国・近畿地方へと運ばれることになる.まず,中国・四国地方の瀬戸内各県の需要(約520万立方m)が優先的に満たされると仮定しよう.すると近畿地方へ届く砂は207万立方m,と激減することになる.大阪を中心とする近畿地方が最も深刻な砂不足を来すことになるだろう.
5.代替資源はあるのか?
このように深刻な砂不足が懸念されるが,海砂に代わる代替資源はあるのだろうか?大至急,遅すぎる代替資源の確保をはからなくてはならないのではないだろうか.
代替資源となり得るものとしては(1)輸入砂,(2)砕砂,(3)洗砂などが考えられる.それぞれの現状,問題点などを考えてみよう.
(1)輸入砂は頼りになるか?
西日本で砂の値段が急上昇すれば,中国や韓国・台湾など近隣諸国からの砂の輸入も急増するであろう.今年度に入り,関西空港第2期工事の開始の影響もあって,中国からの輸入量が大きく増加しているようである.
しかし地質学的に見て,近隣各国の砂資源には,西日本に良質な砂を豊富に安定供給できる余裕はない.特に,北京オリンピックの開催が決まった中国では砂の中国国内需要の増加が見込まれ,日本への輸出量は減少傾向となることも予想される.
極東ロシアには豊富な資源存在の可能性はあるが,輸入するには多額の事前投資も必要であり,どの程度期待できるか未知数であろう.
近年の砂輸入量の増加に伴い,アルカリ骨材反応を起こすものや脱塩が不十分なものなどの不良品が輸入され,様々な問題を引き起こす可能性もあり,十分な注意が必要である.
(2)砕砂は増産可能か?
硬質の岩石を破砕して作られる代用の砂である.近年着実に生産が増加しており,全国で年間3,500万t程の生産がある.西日本でも1,572万t(近畿336万t,中国426万t,四国383万t,九州427万t))の生産がある.
しかしこれにも多額の設備投資や製造コストが必要であること,多量に発生する粉体の処理が難しいことなどの難点があり,徐々に増加すると思われるが急激な増産は難しい.砕砂に適した砕石資源の把握も殆ど行われていないのが実状である.
(3)洗砂はどの程度開発できるか?
瀬戸内海の海砂は周辺に分布する花崗岩の風化部が,海水により洗浄・篩い分けられたものである.中国地方には花崗岩が広く分布し(【第4図】),その風化部も各地で確認されている.これらの風化花崗岩を洗浄・篩い分けすることにより,海砂に似た砂の製造が可能である.
島根県では以前から行われているようであるが,生産統計データや効率的な生産に関するデータは無い.設備投資や製造コストが砕砂に比べて安価であることから期待されるが,砕砂よりもさらに多量の粉体が発生し,その処理が難しいことが難点であり,徐々に増加すると思われるが急激な増産は難しい.
西日本の花崗岩の分布
【第4図】西日本の花崗岩の分布
瀬戸内海の南側を東西に走る中央構造線の北側は,地質学上「西南日本内帯」と呼ばれる.この区域には広く花崗岩が分布する.
6.急がれる代替資源の育成
2,3の代替資源について概説したが,これさえ確保すれば問題解決という切り札はないようだ.それぞれの地域において,今後どの資源を中心に安定供給を行っていくのか,計画を立て,着実な施策を行っていく必要があるだろう.
例えば,風化花崗岩地域であれば洗砂を,砕石産地であれば砕砂を中心に据え,多量の粉体の処理も街づくりや農地整備などと連携して進めるなどの努力が必要であろう.
コンクリートの恩恵を受け続けるためには避けて通ることのできない問題である.地域をあげての取り組みが進み,安全で快適な地域の生活基盤が整備されていくことを期待したい.
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